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登大遊さんを日本のオードリー・タンにできるかどうかを夢想する

このインタビュー記事で登さんのことを知りました。

筑波大学でスーパークリエイタ

2020年4月21日、NTT東日本と独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、新型コロナウイルスの流行によって在宅勤務を強いられている人々を支援するため、無償かつユーザー登録不要で利用できるシンクライアント型VPN『シン・テレワークシステム』の提供を開始した。

このシステムを2週間ほどでリリースした人物だということです。

勉強不足で知らなかったのですが、サイバーの世界では有名な方なんですって。

登 大遊(のぼり・だいゆう)さん
1984年兵庫県生まれ。2003年に筑波大学に入学。同年、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「未踏ソフトウェア創造事業 未踏ユース部門」に採択、開発した『SoftEther』で天才プログラマー/スーパークリエータ認定を受ける。17年、筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了。博士 (工学)。現在、IPAサイバー技術研究室長のほか、ソフトイーサ株式会社代表取締役、筑波大学産学連携准教授、NTT東日本特殊局員など、さまざまな顔を持つ

筑波大学でスーパークリエータなんだなあと、少し嬉しく(母校なので)なりましたが、よく見ると私が卒業した年のお生まれ。遠い、遠いぞ。

それにしても筑波大学でスーパークリエータって結構たくさんいるんですね。

今年も選ばれてますし。

中でも有名なのは、この方でしょうか。

この方は、アートというかメディア芸術の方なのですが、登さんは、プログラムの方ですね。

シン・テレワークシステムとは

開発したシン・テレワークシステムとは、こういうものです。

在宅勤務が増えるのはいいんですが、家の回線で大丈夫かという、データアクセスにおけるセキュリティが心配される中で、その解決になる仕組みを開発したということですね。

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「シン・テレワークシステム」は、簡単で安全なリモートアクセスシステムです。
インターネットに接続されているパソコンであれば、離れたところにあるパソコンに対してどこからでも接続ができ、全ての通信がSSLにより強力に暗号化されますので安心してご利用頂けます。

まだ8万件程度ですが、こういう実用性の高いシステムを短時間で開発するというのは、すごいことです。

当初は 2020 年 10 月 31 日まで実証実験を継続する予定でしたが、国の「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の提言を受け、当面の間、延長をしたいと考えています。

NTT東日本が発表してますが、契約は不要なんだそうです。

NTT東日本の「フレッツ回線」に限らず、各種インターネット回線でも利用可能です。NTT東日本との契約やユーザー登録は、一切不要です。

これを2週間で開発できたのは、基礎技術があったから。

たった65万円の予算で5万から10万セッションを同時処理できるシステムを構築、無償公開に漕ぎ着けた。

格安での開発です。

何故開発できたのか

それができたのも、登さんだからという気がするのは、そのポジションをフルに有効活用した結果だと思うからです。

「シン・テレワークシステムを2週間あまりでリリースできた理由は二つあります。一つ目は、私が大学1年の時に開発した『SoftEther』のソースコードや、以前から仲間内で管理・利用していた、NTT東日本のダークファイバーを用いた東京エリアの筑波大学OPENプロジェクトの高速閉域網を、シン・テレワークシステムのバックボーンとして活用できたことです。二つ目は、安価で入手しやすい民生用のPCやネットワーク機器を利用したからです。
そうでなければこれだけの短い期間でリリースすることはできませんでした。一見無関係なものを遊びでいくつか作っておけば、後になってそれらが組み合わさって役立つこともあるということです」

さらっと言ってますが、そのポジションにいなければ知らないようなソースコードだし、ネットワークだし、その組み合わせです。

しかも、そこにあるものは多くの組織にまたがる仕組みでもあり、だからこそ、その複数の組織に参加していて、そこにあるのも知っていて、さらに、提供するための交渉ができる人がいないと、できなかったはずです。

そうした、ややこしいものを有効活用して、社会に提供しようと思う事はできても、実現するには、多くの制約と壁が存在するはず。

登さんのインタビューで感心したのは、その壁の乗り越え方なのです。

「皆さん諦めが早いと思います。3~4年努力しても成果が出ないのであれば、10年頑張ってみればいい。一度や二度跳ね返されたからといって、諦めてしまっては本質的な課題解決はできません。やるべきだと思ったことは諦めずしつこく続けること。そしてもしルールが間違っているのなら正すよう努力すべきです」

特別なポジションにいるから許されているのではなく、諦めずに交渉する力が登さんにあったからできたという事です。

壁を越えるために必要なのは

こういう新しいことを進めた人に向けられがちなのは、どうせ特別なんでしょ?スーパークリエーターだからでしょ、というようなやっかみの言葉や視線です。でも、それは何の意味も持ちません。

特別だとすれば、フラットに遠くを見通し、それでいて現実を知っている彼のマインドでしょう。

「私の経験では組織に自分がやりたいこと、組織を挙げて取り組むべきことを主張して、無下に却下された経験は一度もありません。大きな組織にいるような経験豊富な幹部というものは、あまり分かっていないように見えても、実のところは本質的な問題はよく理解しているものです」

上の人はわかっていない、というのは簡単だし、往々にして、わかっていない。でも、わかった時に、彼らの理解力は凄まじく早いし、その行動力は若手を凌ぐものがある。だから、理解してもらう努力を怠ってはいけない。

付け焼き刃は見抜かれる。もし大きな組織で前例のないことをやりたいなら、立場の異なる人を説得し得るだけの情報とロジック、ストーリーを揃えて臨むべきだと、登さんは続ける。

詳しくはインタビューを読んでいただきたいのですが、この辺りの理解力と社会との対応力が優れている人だなと思いました。

文句を言うだけでは社会は変わらない。現実を見据えて、優秀な人を見つけて働きかけることの大事さを知っている人なんですね。既存の組織を否定するだけでは、何もできないことも知っているのでしょう。

日本の今後を指摘する言葉とは

さらに、この後がうなずきポイントでした。

「多くの人はイノベーションを起こすのはGAFAやベンチャー企業の専売特許だと刷り込まれていますが、日本の場合、イノベーションを起こせるポテンシャルを秘めた場は別にあると思います。それが大企業です」

これは、以前から私も考えていたことなのですが、日本の大企業の中の人材の優秀さは、やはり特筆すべきものがあると思うのです。社内転職と言ってもいいような、新しい部署への異動がある大企業で、全く異分野に放り込まれても1年くらいで適応して、何らかの結果を残す人たちは、やはり地頭がいいというか基礎力があって、なおかつ組織を動かす力があるわけで、そこにポテンシャルがあると思われます。

失われた30年と言われながらも、沈み切らずに動いている大企業には、財力も人材もまだまだ残っているわけで。そこに手をかけて、新しいことを起こせば、その応用は多岐に渡るのではないでしょうか。

根本的な解決のためには、プログラミング言語やシステムソフトウエアのレベルまで踏み込んで、低レイヤーでの新しい手法をいくつか発明する必要があります。このような大企業の問題を解決しようとするエンジニアリングの活動が進めば、そこから日本発のソフトウエア技術のイノベーションが起き、それらがやがて世界中で使われるようになるのではないかと私は期待しているのです

そのためには、若手の奮起が必要です。

「選りすぐりの天才たちが集い、苛烈な競争を繰り広げているGAFAなどの企業にいなければ破壊的イノベーションは起こせないというのは、思い込みに過ぎない」と登さんは断言する。

そして、こうした人材を活用する経営者や為政者が必要です。

日本に足りないのは、イノベーションを起こす人材ではなく、それを促進したり、引きあげたりする人材だという事は言うまでもありません。

例えば、台湾のオードリー・タン氏のようなポジションに登さんをおいたらどうなるのか、今、日本は、そう言う想像をすることができる国なのかどうか。そこが彼我の違いなのでしょう。

リバースメンターシップとは、内閣の大臣たちが35歳以下のソーシャルイノベーターを、リバースメンターに任命する制度です。リバースメンターが大臣に新しい方向へと導く一方で、大臣たちは若い人たちに政府がどういう仕事をするのかを教えます。

国とは言わないまでも、都では、元Yahooの宮坂さんが動いています。

登さんのような人材に、日本政府のデジタル化を任せるような流れが来るといいなあと思います。

サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。