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FILM REDから何を学ぶべきか

こんにちは、ヒラタです。先日、友人と話題の映画「ONE PIECE FILM RED」を見てきました。感想を書き殴ります(ネタバレ有)

はじめに


まず、この映画の特徴としては以下があります。

●  赤髪(シャンクス)が出る
●  挿入歌MVを通して展開を予想できる

シャンクスは原作第1話から登場し続けているルフィの憧れの海賊ですが、依然謎多き人物です。このキャラが出てくるだけでONE PIECEファンとしては期待が非常に高まるわけです。

※本映画ではシャンクスに関する新情報は何一つ開示されません

次に、挿入歌MV。本映画では大物アーティスト計7人が個別に作った楽曲をAdoさんがカバーし、それを映画オリジナルキャラのウタの歌唱シーンで流すという先鋭的な手法が取られています。

どの曲もとても良い…

全曲youtube上でMVが公開されており、その映像からウタの人物像や劇中の世界観や展開等が予想できるようになっています。

各MVからの考察

1.新時代/私は最強

曲の入りが良い

予告で使われているウタの第一印象となる曲です。
歌詞・MV共に強い意味性を帯びていないので、序盤のウタの初登場や比較的平和な場面で流すと予想できます。

2.逆光

ラスサビのシャウトが至高

めちゃ怒ってる歌詞で、悪を倒さんと聴く人を奮起させる唄です。
ルフィとウタが共闘するみたいな胸アツ展開で流れると予想できます。一番好きです。

3.ウタカタララバイ/Tot Musica

これ誰が歌えるん

共に不気味な雰囲気でウタが暴走(?)するような映像が入りますが、どこか無理矢理歌わされているような苦しそうな表情にも見えます。また、歌詞の節々にもウタが胸に秘めた思いが仄めかされています。

欺きや洗脳 お呼びじゃない
ただ信じて願い歌うわたしから耳を離さないで
Hear my true voice 

この思わせぶりな歌詞からは、中盤で敵サイドかと思われたウタの裏には真の黒幕がいた…的な展開が予想できます。

4.世界のつづき/風のゆくえ

隠れた名曲

バラード調です。ウタ&ルフィのシャンクスとの過去回想で流れてそうな雰囲気があります。

以上の予想をまとめると、映画の大筋の流れはこんな感じになるのではと期待されます。


というような展開は全くありません。現実はこうです。


ウタの能力も「歌唱を通して相手の精神に働きかける」とかではありません。こうです。

転生チート主人公無双?


この時点で、ウタのキャラやワンピの世界観が崩壊しています。どうしてこのような結果になってしまったのでしょうか。

FILM REDはなぜ失敗したのか


我々はこの作品を単に酷評するのではなく、何かを学び取らねばなりません。本映画の失敗を招いた原因は何でしょうか。

1.ウタの能力の理不尽さ


ルフィがゴムゴムの実を食べたゴム人間であるのと同様、ウタはウタウタの実の能力者とされています。しかし、劇中でウタが行った所業は悪魔の実だけで説明できない規模のものです。

電電虫を通して自分の歌を世界中に流す
→世界の過半数の人間の身体の自由を奪う
→皆、ウタが見せる幻の世界に入って無力化
→ウタ本人が自殺することで強制的な集団自殺を目論む


この能力は奪った肉体を自在に操作できるだけでなく、幻の世界も能力者本人が自在に制御できるので文字通り「私は最強」になれます。

明らかに能力の強さとウタ自身が抱える制約が釣り合っていません。


2.莫大な数の登場キャラ


ウタの能力を通して、脚本家は現実と幻術世界のどちらが真に幸福かという無限月読的問いかけ(快楽計算の話)をしたかったのだと思います。

しかし、あまりにも理不尽な能力設定をしたために根本的な問題が生じてしまいました。

「絶対にルフィ達が勝てない」


幻術世界の中では、ウタにはどんな攻撃も効きませんし、ウタは無制限に武器を生成することができます。

そこで製作陣が考えた手がこれです。

とりあえず便利能力のキャラを連れてこよう


この映画には明らかに劇中の舞台には不似合いな人物が複数登場します。
そう、彼らは全て対ウタ戦でルフィ陣営が負けないようバランスを取るためだけに採用された悲しきキャラ達だったのです…


3.既存のワンピ世界観の崩壊


原作から便利キャラを多数引っ張り出してきても打倒ウタには届きません。そもそも全員幻術世界に入った時点で詰む設定なので。

なんとかルフィ陣営が勝てるようにと、製作陣は既存のワンピ世界観に捉われない新たな概念を作り出します。1つ目はこれ。

魔王を倒すとウタワールドから脱出できるよ!
まどマギなの?


2つ目は「見聞色=テレパシー」

離れてても見聞色を介して会話できるぞ!
だからまどマギなの?


とどめにこれ
ルフィ「海賊王になるのは新時代を作るためだ」

物語の根幹歪めんな

おわりに


以上の問題は、いずれも脚本のクオリティよりウタというキャラクターで客を呼ぶのを優先したために生じたとも解釈できます。
そういう意味では、これは昨今のアニメ劇場版が共通に抱える問題かもしれません。


魅力的なキャラは魅力的なストーリーよりも発案が楽であるのに関わらず、前者を予告で売りにした方が後者を重視して作った作品よりも売れてしまう…というのは映画に限らず良くある話です。


しかし、あらゆる名作は経済価値に換算できない価値を人々に与えます。そういった類の価値は、クリエイター側が利益重視・宣伝重視で作品を扱うようになったら消えてしまうものです。



加速する資本主義経済の前では、かつて不朽の名作と謳われたONE PIECEでさえもビジネスライクに映画を作らざるを得ないのでしょうか。

我々は今一度、現代社会のあり方について考え直す必要があるのかもしれません。






FILM REDの赤は共産の赤。
同志諸君、革命を起こそう。


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