[読む古典漫才] ダウンロード(当て書き:おせつときょうた)
#オチを予想してお楽しみください (4文字)
しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる
●漫才における「相槌」はそのときの雰囲気で自然に入れるものなので通常漫才台本には書きませんが,本格的な掛け合いのしゃべくり漫才をイメージできるようあえて細かい「相槌」を書き込んでいます。それが「読む漫才」です。
きょうた:「終わらないダウンロード」ってあるらしいですね
おせつ:終わらないダウンロード?
き:パソコン用のものすごい将棋ソフトがあるんですけどね
お:それをダウンロードしてんのね
き:終わる気配がないんですよ
お:異常に遅いことありますけどね
き:どうすればいいんですか?
お:待つしかないでしょ
き:いつまで?
お:終わるまでですよ
き:ずっと待ってるんですよ
お:どれくらい?
き:3年
お:3年!?いつまで待ってんねん!
き:みんなに言われてるんですよ
お:なんて?
き:「終わるまで待て」と
お:僕も言うてもうたけど。それでほんまに待ってんの?
き:待つしかないんでしょ?
お:「待ち方」もありますからね
き:「待ち方」って何?
お:ちゃんと見てます?
き:何を?
お:パソコンの画面をですよ
き:ダウンロード中のってこと?
お:画面見ないで他のことしてません?
き:してますよそりゃあ。3年ですからね。いろんなことをしてきましたよ
お:人に見られてないとやる気って出ないでしょ
き:何が?
お:パソコンがですよ
き:パソコンの「やる気」って何?
お:あなただって今ここにお客さんが一人もいなかったら,やる気出ないでしょ?
き:なんの話をしてるんですか
お:だから,「今ここにお客さんが一人もいなかったらツッコミのテンション下がるでしょ」って言ってるんですよ
き:誰も見てないところでハイテンションでつっこむのおかしいでしょ
お:パソコンだって誰も見てないところでハイテンションでダウンロードするのおかしいだろ〜
き:「ハイテンションでダウンロード」ってなんやねん
お:誰だってね,人が見ていれば張り切って働くし,見てないと手抜くんですよ
き:それが人情ですけどね
お:パソコンなんて人情の塊ですからね
き:おせつさんのパソコンどうなってんの?
お:ちゃんと見ててあげれば,テンション上がってものすごい速さでダウンロードしてくれますから
き:見てる時もあるけど,速さは変わらないでしょ
お:もしかして,一人で見てる?
き:何が?
お:パソコンの画面をですよ
き:そんなん一人や。なんで家族全員でダウンロード見なあかんねん
お:今ここにお客さんが一人しかいなかったら,テンション上がらないでしょ?
き:だから漫才の話関係ないんですよ
お:テンション上がります?お客さん一人だけでも
き:その一人の方には申し訳ないけど,テンションは上がらないですよ
お:でももしそのたった一人のお客さんが,あなたの意中の人だったら?
き:え?僕の意中の人が?
お:たった一人で我々の漫才見てたとしたら?
き:それはねぇ
お:テンションは?
き:上がりますよ
お:そういうことやねん
き:どういうことやねん
お:パソコンからするとあなたは意中の人ではないから,ダウンロードのテンションが上がらないってことですよ
き:どういうこと?
お:ふられたんでしょね。パソコンに
き:ふられてないわ!なんで僕パソコンに告白して,しかもふられてんねん
お:パソコンからするとね,お客さんがあなた一人だとテンション上がらないんですよ
き:ほんなら家族みんなでダウンロード見ますよ
お:自分がふった相手とその家族しかいないとこでやる漫才なんてめちゃくちゃ気まずいやないか
き:ほんならもう親戚一同集めてみんなで見ますよ。ダウンロードを
お:おもしろいことになりそうやな
き:なんであなたも来ようとしてるんですか
お:相方なんやから誘ってくれてもええやないか
き:「ダウンロードをみんなで見る会」なんておもしろい要素0ですからね
お:そんな「笑い」に厳しい目で見たらあかんて。ライブは楽しまな
き:「笑い」の話なんてしてないんですよ
お:パソコンだって一生懸命ダウンロードしてるんやから。ボケを
き:何をダウンロードしてんねん!将棋のソフトがボケダウンロードしたら絶対あかんやろ
お:要所要所で笑ってあげないと,パソコンのテンション下がりますからね
き:なんでダウンロード見ながら笑わなあかんねん
お:要所要所で笑いが起こらないとだんだん不安になってきますからね
き:これはほんまにそうなんですけどね
お:「ここでくるやろ」思ってたとこで笑い0やと,めちゃくちゃテンション下がるんですよ
き:だからそれ漫才の話でしょ?
お:ツッコミが悪いんですけどね
き:僕?
お:ボケがすべってもツッコミがカバーしてくれれば笑いは起きますから
き:カバーしてるやないか。結構
お:だからパソコンがダウンロード中にすべったときもね,あなたが隣に立ってつっこんであげればいいんですよ
き:なんでそんなことせなあかんねん
お:そしたらパソコンのボケのおもしろさがお客さんにも伝わるじゃないですか
き:パソコンってほんまにボケてます?
お:ボケてるやん。3年もダウンロード終わらないんやから
き:ボケのスパンどうなってんねん!
お:そういうふうにつっこんであげればいいんですよ
き:親戚一同の前でダウンロード中のパソコンにつっこむっておかしいやろ
お:それがツッコミの仕事やないか〜
き:そんな仕事ちゃうわ!
お:なんにでもつっこんでいけば腕上がりますからね
き:そんなん自分からすべりにいってるようなもんやないか
お:あなたいつも自分からすべりにいってるじゃないですか
き:いってないわ!結果的にすべってるだけや
お:すべり王子の名をほしいままにしてますからね
き:誰がすべり王子やほんま〜「すべり笑いで天下取ったろかい!」ってこのやろー
お:これですよこれ
き:これは回数こなせば徐々に「笑い」になるやつや
お:パソコンとのダウンロード漫才も,回数こなせば「笑い」になるから
き:「ダウンロード漫才」って名付けるな。嫌やねん。相方パソコンって
お:ダウンロード中に要所要所で笑ってあげたら,パソコンも機嫌よくダウンロードしてくれますしね
き:あんなん要所要所とかないねん。一定の速さでダウンロードされてんねん
お:パーセンテージ表示されてるやないか
き:何%ダウンロードされたかでしょ?
お:あれ見てればね,ネタがどれくらい進んだか分かりますからね
き:あれってネタ時間の表示!?
お:あれ見ながら,要所要所で笑ってあげたらいいんですよ
き:10%とか?20%とか?要所要所で笑えばいいってこと?
お:一定の間隔で笑ったらあかんやろ
き:なんで?
お:最初から最後まで一定の間隔笑うお客さんがいたらどう思う?
き:それは正直迷惑ですよ
お:そやろ?
き:だからそれは漫才の話でしょ?
お:最初10%のところで笑ったとすれば
き:ダウンロードの10%ね
お:次は25%くらいで笑って,それから意表をついて29%で笑ってみたりねき:なんでそんなパソコンに気遣わなあかんねん
お:ダウンロードを成功させるためや
き:ダウンロードってそんな大変なことちゃうやろ
お:大変なことやないか。簡単に「笑い」取れたら誰も苦労しないんですよ
き:だからなんの話をしてるんですか
お:漫才の話ですよ
き:ダウンロードの話や
お:ダウンロードも漫才も一緒やないか
き:何が一緒なんですか
お:◯◯◯◯終わりや
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】