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[読む古典漫才] 鍋奉行 Ver.2(当て書き:おせつときょうた)

#オチの直前まで無料

#オチを予想してお楽しみください (2文字)

しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる
●漫才における「相槌」はそのときの雰囲気で自然に入れるものなので通常漫才台本には書きませんが,本格的な掛け合いのしゃべくり漫才をイメージできるようあえて細かい「相槌」を書き込んでいます。それが「読む漫才」です。

おせつ:子供の頃になりたかった職業ってありますか?
きょうた:僕は鍋奉行ですね
お:職業じゃないでしょ。鍋奉行は
き:鍋奉行って「お奉行様」か「師匠」のことだと思ってましたからね。子供の頃は
お:「師匠」も職業じゃないのよ
き:「師匠」ってボランティア活動でしたっけ?
お:「ボランティア活動」という言い方なんか嫌ですけどね
き:そういう意味では,「師匠」も「鍋奉行」も同じようなもんですよね
お:あなた師匠のことどう思ってんの?
き:鍋を作って振る舞ってくれる人ですよね?
お:鍋奉行ねそれは。「師匠」と「鍋奉行」一緒だと思ってるといつか痛い目見ますよ
き:師匠は簡単になれるけど,鍋奉行になるのは難しいじゃないですか
お:逆ね。「師匠簡単になれる」なんて絶対言うたらあかんことやから
き:鍋奉行になるのは簡単なんですか?
お:それは簡単よ。「私今日鍋奉行します〜」言うたらなれますからね
き:「結構です〜」言われますよ。僕が「鍋奉行します〜」言うたら
お:それはあなたの人間性の問題じゃないですか?
き:人間性関係あります?
お:人格に問題のある人に鍋よそってもらいたくないですよねぇ
き:僕そんなに人格に問題ある?
お:鍋奉行断られるってことはたぶんあるのよ。重大な欠陥が
き:みんなで鍋囲んでね,「あ〜それまだまだ。こっち先やから。あっその肉もうええんちゃう?よそってあげよか?」みたいなのやりたいじゃないですか
お:これをサラッとやるにはね,人間性大事ですから。あなたはせいぜい灰汁代官止まりでしょうね
き:誰が灰汁代官やほんま〜「鍋に浮かんでる灰汁全部すくい取ったろかい!」ってこのやろー
お:こういう人には鍋奉行やらせたくないですよね

き:なんでやねん。「すべった人には鍋奉行やらせない」みたいなルールないでしょ
お:まずは人格を改めていただかないと
き:人格はおいおい改めますから。僕のような者でも今すぐ鍋奉行になれる方法を教えてくださいよ
お:そういうところよ。あなたの悪いところは
き:人格なんて変わらへんねん。簡単には
お:トリッキーな方法でもいいですか?
き:なんでもいいんですよ。鍋奉行なれるんやったら
お:そしたらね,鍋奉行になるのに一番大事なことって何か分かります?
き:人間性
お:そうやった。ほんなら,二番に大事なことは?
き:鍋奉行なるのに二番目に大事なこと?
お:これが分かればね,鍋奉行なれますから
き:料理の腕前
お:違いますね
き:違う。なんやろ
お:鍋奉行にとって二番目に大事なことは
き:はい
お:"でし"の取り方です
き:それは料理の腕前に含まれるでしょ
お:"でし"の取り方が?
き:ダシのことでしょ?
お:"でし"ですよ
き:なまってますよねぇ
お:何が?
き:鍋のダシを取ることを,「"でし"を取る」言うてない?
お:言うてないよ。"でし"ですよ
き:いっぺん「ダシ」って言うてみて?
お:ダシ?
き:言えるやん
お:だから「なまってない」言うてるやろ
き:あなたが言うてるのは?
お:鍋奉行にとって大事なのは,弟子の取り方ですよ
き:お弟子さんを取るってこと?
お:あなたがもし弟子を取るとしたら
き:お弟子さんを取るとしたら?
お:「何ガラ」で弟子を取りますか?
き:「何ガラ」で?僕が弟子を取る場合?
お:はい
き:それはまぁ,人柄ですよねぇ
お:鶏ガラでしょ〜普通は〜
き:ダシやんそれ
お:「弟子や」言うてるでしょ
き:なまってるんですよあなた
お:なまってないよ
き:さっきからダシのことを"でし"言うてるでしょ
お:言うてないて。弟子のことを"でし"言うてるだけやから
き:ほんなら何?あなたは鶏ガラで弟子を取るんですか?
お:僕は鶏ガラで弟子を取りますよ
き:「鶏ガラで弟子を取る」ってどういうこと?
お:弟子を取る時には,ビシッと鶏柄のシャツを着てね
き:「鶏ガラ」ってそっち!?
お:「そっち」って何?
き:鶏の柄がプリントされたシャツってこと?
お:「鶏ガラ」なんて他にあります?
き:鶏ガラスープでしょ。普通「鶏ガラ」言うたら
お:(笑)鶏ガラスープじゃ,ダシは取れても弟子は取れないでしょ
き:鶏柄のシャツ着てても弟子取れませんからね
お:鶏柄のシャツ着てたら目立つから,それを見て「弟子にしてください」という人が来るんですよ
き:来るか!そんな人
お:私の弟子15人いますから
き:15人も!?なんの弟子なんですかそれ
お:「どうすればそんなふうに鶏柄のシャツを着こなせるのか教えてください」という人が来るんですよ
き:そんな人います?
お:今流行ってますからね。鶏柄のシャツ
き:流行ってないわ!
お:トリッキーっていうニワトリのキャラクター流行ってますよねぇ
き:流行ってんの?鳥貴族のキャラクターの名前とかぶってるけど大丈夫?
お:トリッキーのTシャツ着て街を歩けばね,バンバン人集まってきますから
き:「トリッキーな方法」ってこれのこと?
お:あなたでも鍋奉行なれますよ
き:鍋奉行なれてないのよ。変な弟子集まってきてるだけで
お:弟子というのは師匠の言うこと聞きますからね
き:え?
お:弟子と一緒に鍋をして,「今日は私が〜鍋奉行をやってみようかな」とかなんとか言えば,確実に鍋奉行になれますから
き:なれるけど
お:弟子と一緒にワイワイ鍋囲んだらいいじゃないですか
き:嫌やわ〜そんなん
お:何が嫌なんですか
き:師匠の権力使って鍋奉行なるのも嫌やし,鶏柄のTシャツ着るのも嫌やわ
お:着たらええやん。それくらい
き:鶏柄のシャツ着こなせてる自分も嫌やし
お:似合いそうやからね〜あなた
き:「鶏柄のシャツの着こなし方教えてください」言うて弟子になるような人と鍋囲むのも嫌やわ〜
お:「トリッキーな方法でもいい」言うたやないか
き:そういう「トリッキー」やと思ってなかったんでね
お:ついでに憧れの「師匠」にもなれますからね
き:そんな「師匠」絶対嫌やわ
お:そういうわがままなところがあなたの・・・
き:もっと普通の方法ないんですか?
お:普通の方法?
き:鍋奉行になる普通の方法ですよ
お:ありますよ
き:あるの?どうすればいいんですか?
お:◯◯で鍋をすればいい

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