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漫才論| ¹⁰⁵「漫才論争」は楽しんだほうがいい。せっかくの「漫才」なんだから

今年のM-1は,ファイナリストの漫才を高く評価した「漫才ファン」とそれを受け入れた「審査員」の選考が,それ以外の「漫才がまあまあ好きな大多数の人」から審査される大会になるのではないかという話をこちらの記事で書きました

もちろん,漫才ファンが全員,今年のファイナリストの漫才を高く評価しているわけではありません。「M-1ではもっと正統派漫才がみたい」と思っている方も結構います。「あれは漫才じゃない」と思っている方もいるかもしれません。それに対し,「正統派漫才」について語る人をバカにする人もいます

今年のファイナリストの人選は,「こういう『漫才論争』をさせて盛り上げるという狙いもあるのではないか」と勘繰ってしまったりもしますが,私は,「漫才論争」は大いにやればいいと思っています。ただ,漫才には「答え」も「正解」もはないので,論破する「論争」ではなく,楽しむ「論争」にしてほしいです

起こりそうな"ランジャタイ論争"

一番分かりやすいと思うので,決勝に進出したランジャタイの漫才を例に挙げますが,これはものすごく「好み」が分かれる漫才だと思います

ハマる人はものすごくハマります。現時点でランジャタイにハマっている人の多くは「コアな漫才ファン」で,準決勝ではそのような観客の前でかなりウケたために決勝に進出したものと思われます

一方,ハマらない人だと,「おもしろくない」もしくは「意味不明」と感じる場合さえあるかもしれません。仮に,決勝戦をみた多くの人がランジャタイにハマらなかった場合,ランジャタイの漫才をバカにする人が必ず現われます。それに対しコアな漫才ファンの中からは,「ランジャタイの漫才が分からない人」をバカにする人が現われ,「論争」になります。これは,「論争」というより,「喧嘩」とか「誹謗中傷」の類いかもしれませんが・・・

なぜ人をバカにするのか

ランジャタイにハマらなかった人の中には,「おもしろくない」「くだらない」「あんなの漫才じゃない」などと言う人がいると思います。「おもしろくない」と感じること自体は何も悪いことではありません。自分が「おもしろくない」と感じたのは事実です。しかし同時に,「おもしろい」と感じる人がいるのも事実です。ですから,「私はおもしろいと思わなかった」と言うのであれば問題ありませんが,「ランジャタイはおもしろくない」とか「くだらない」という言い方をするのはよくありません。自分の「おもしろくない」という感覚が合っているのか不安で,相手にも自分の感覚を押し付けたくなるのかもしれませんが,これは基本「好み」の問題なので,そもそも「正解」も「不正解」もありません。自分の感覚を人に押し付けるのは無意味なことです。納豆が嫌いな人が,「あんなくさいものを食べるなんておかしいですよねぇ」と言って回るようなものです。「私は納豆が苦手です」,そう言うだけで十分です

一方,「ランジャタイの漫才が分からない人」をバカにするコアな漫才ファンの場合は,「自分のほうが漫才を知っている」という自負ゆえに,「素人は黙ってろ」という感覚があるのかもしれません。しかし,漫才師というのは基本,コアなファンを獲得するために漫才をしているわけではなく,「自分たちが"おもしろい"と思うものをどうすれば一人でも多くの人に伝えられるか」という部分で日々戦っています。自分たちの漫才が「分からない人」がいれば,どうすれば分かってもらえるのかを真剣に考えたりもします(ランジャタイの場合はこの点で"突き抜けている"可能性もありますが・・・)つまり,「"素人"がどう感じるか」は漫才師にとって非常に重要なことです。本当の漫才ファンであればそのことも分かっているので,「素人は黙ってろ」という感覚で人をバカにしたりはしません

「漫才論争」はかなり勉強になる

「論争」を楽しむことを阻害する最大の要因は,「人をバカにする」ということだと思います。これは「論争」にかぎった話ではありませんが,「人をバカにする」という行為は,自分のためにも,人のためにも,誰のためにもなりません。「人をバカにする」のは単なる自己満足であり,自尊心を満たそうとしているだけです。そんなことをしても結局本当の意味では満たされないので,今日もまた誰かのことをバカにするのだと思います

互いに相手の意見を尊重し,「漫才」に対してどう感じているのか,多種多様な意見に耳を傾けてみると,本当に勉強になります。自分では感じられない感覚を知ることができるからです。それによって気づくことがたくさんあり,それは自分の財産になります。そんな「論争」は,結構楽しいです

人のことはバカにしないほうがいいですし,「漫才論争」は楽しんだほうがいいです。せっかくの「漫才」なんですから

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