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「しゃべくり漫才台本(ネタ)の書き方」と「オチのつけ方」を,「小噺」を教材として詳しく解説します。

一番理想的なしゃべくり漫才の作り方は,「相方と会話しながら作る」という方法だと思います。なぜなら,しゃべくり漫才のベースは「会話」だからです。しかしこの方法は,「会話をしながら漫才を作れる相方」がいないと成立しないので,誰でも使える方法ではありません。

この方法が使えない場合,作り方のコツが分からないので「しゃべくり漫才」はやめて,設定から作れる「漫才コント」にしよう,と思う方も多いようです。漫才コントは,コンビニ,ファミレス,刑事,先生などの「設定」という「型」があるので作りやすいからです。でも,「作りやすい」ということは,オリジナリティ溢れるネタを作るのは相当難しいということを意味します。そして,「将来的に漫才コントは『やりつくしてしまう日』が来るかもしれない」と,わたしは思っています。

一方,「しゃべくり漫才」のベースは会話なので,「漫才コント」のような限界はそれほどありません。ただ,「しゃべくり漫才の書き方」を教えるのがなかなか難しいという問題があります。これも,ベースが会話だからではないかと思います。

今回,漫才ではなく「小噺」を教材として使うことによって,「しゃべくり漫才の書き方」を文章化できるのではないかと思い,書いてみました。「小噺」はとても短いので,「ネタの作り方の全体の構造が分かりやすい」という利点があり,同時に,「小噺」には基本オチがついているので,「オチのつけ方」についての説明もできるからです。

第1章では前段階の基礎として「普通の会話を漫才にする方法」について説明し,第2章で「小噺の書き方」について解説します。その後,第3章では「漫才台本を洗練する方法」について書いています。

目 次

 第1章 漫才の書き方 「基本」

「普通の会話」を漫才らしくする方法
「普通の会話」にボケを追加してみる
漫才台本はあくまで「台本」であることを示す実験

第2章 漫才の書き方 「4つの方法」

駄洒落のオチから作る
発想から作る
テーマから作る
駄洒落以外のオチから作る

第3章 漫才の書き方 「洗練推敲」

書けば書くほど洗練される
推敲する余地はいつもある
漫才台本に「完成」はない

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お読みいただいたうえで,ご質問や追記してほしい点などありましたら,このnoteのコメント欄やメールやTwitterなどからご連絡いただければと思います。できる限り追記いたします。追記した際はこのnoteのコメントでお知らせいたします。よろしくお願いします。

第1章 漫才の書き方 「基本」

「普通の会話」を漫才らしくする方法

まず,ごく普通の会話を「漫才らしくする方法」について書きます。

例えば,次のような普通の会話があったとします。

A:あのさぁ,Bの好きな食べ物って何?
B:僕の好きな食べ物?
A:そうそう。一番好きな食べ物
B:「一番」って言われてもさぁ…,いろいろあるよ。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか…
A:それはそうだけど…,その中で一番好きな食べ物だよ
B:「一番」って言われてもさぁ…。「一番」って決められなくない?
A:そうなんだけど…,強いて言えばだよ。強いて言えば
B:強いて言えば?まぁ…強いて言えば…,焼肉かなぁ…
A:あ〜そうだよね。やっぱり肉だよね

まず,普通の会話に必ず含まれるなくても成立する相槌やセリフを取り除き,敬語を使います。すると,こんなかんじになります。

A:好きな食べ物ってあります?
B:もちろんあります
A:一番好きな食べ物は?
B:「一番」というのは難しいね。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろあるじゃないですか
A:強いて言えば?
B:強いて言えば…,焼肉
A:やっぱり肉ですよね

これはAもBもボケていないので特に笑う箇所はありませんが,だいぶ漫才らしいやりとりになっていると思います。最初は,普通の会話を書き出し,「なくても成立する相槌やセリフを取り除き,敬語を使う」という書き方の練習をすれば,「普通の会話を漫才台本らしくするスキル」を身につけられると思います。

漫才添削をしていて最初に指摘するのが大抵これです。漫才を書き始めたばかりの方が書く台本にはほとんど,「あの〜」とか「そうだよねぇ」などの会話では普通に含まれる言葉が入っていて,そのような言葉や「なくても成立するセリフ」をできるだけ取り除くことをやってもらいます。まずはこれをやってみてください。

「普通の会話」にボケを追加してみる

次に,少し漫才らしくなった「普通の会話」にボケを加えてみます。

A:好きな食べ物ってあります?
B:もちろんありますよ
A:一番好きな食べ物は?
B:「一番」はないね。「二番」ならあるけど
A:どいう状況なんだよそれ。「一番がない」って
B:「同率二位」とかあるだろ。両方とも「二位」みたいな
A:「一位」あるだろ,だとしたら。「一位」あっての「同率二位」だよ。もしくは「同率一位」かもしれないけど
B:数学の話?
A:違うわ。「一位がない」ってことはあり得ないんだよ
B:「一番」って決められないでしょ。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろありますからね
A:それはそうだよ。でも,強いて言えばだよ
B:強いて言えば…,煮豆かな
A:「煮豆」ってなんだよ
B:煮豆とは,「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」だろ
A:分かってるわ。ウィキペディアか!

「普通の会話」が長くなりすぎると,漫才としては聞いていて「きつい」と感じるので,要所要所にボケを入れます。今回は,冒頭の「一番好きな食べ物は?」の後と,最後の「煮豆」のところにボケを入れてみました。一つボケを入れれば,その後ツッコミが入り,その流れのまま次のボケにつなげられれば,「普通の会話」が漫才になります。このように,普通の会話を漫才らしくできるようになれば,漫才の書き方の「基本」は終わりです。

※ボケやツッコミが思いつかない場合は,[漫才台本の書き方]ボケやツッコミって,どのようにして思いつくものなの?をご覧ください。

漫才台本はあくまで「台本」であることを示す実験

ここで少し実験です。先ほどとほぼ同じ台本を,サンドウィッチマンのお二人で当て書きするとどうなるでしょうか?

伊達:好きな食べ物ってあります?
富澤:もちろんありますよ
伊:一番好きな食べ物は?
富:「一番」はないね。「二番」ならあるけど
伊:どいう状況なんだよそれ。「一番がない」って
富:「同率二位」とかあるだろ。両方とも「二位」みたいな
伊:「一位」あるだろ,だとしたら。「一位」あっての「同率二位」だよ。もしくは「同率一位」かもしれないけど
富:ちょっと何言ってるか分からない
伊:なんでだよ。「一位がない」ってことはあり得ないんだよ
富:「一番」って決められないでしょ。寿司とか,焼肉とか,ラーメンとか,いろいろありますからね
伊:それはそうだよ。でも,強いて言えばだよ
富:強いて言えば…,煮豆かな
伊:「煮豆」ってなんだよ
富:煮豆とは,「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」だろ
伊:分かってるわ。ウィキペディアか!

かなり印象が変わりませんでしたか?

先ほどの台本と違うのは,富澤さんのギャグである「ちょっと何言ってるか分からない」というところだけです。ほとんど同じ台本なのに,「1.2~1.5倍くらいおもしろく感じた」という方もおられるかもしれません。漫才台本はあくまでも「台本」なので,読む方の想像力によってどれくらい「おもしろい」と感じるかが変わります。

今後漫才台本を書くうえで,この点も覚えておくと参考になると思います。

台本に「相槌を書き込む」と増す掛け合い漫才感

サンドウィッチマンなどの有名な漫才師で当て書きをすると脳内で実際の漫才を再現しやすくなりますが,「当て書き」せずにこれと似た効果を生み出す方法があります。それが,「相槌を書き込む」という方法です(詳しくは「しゃべくり漫才のうまさは『相槌』で決まる」という記事をご覧ください)では,相槌を書き込んでみます。

A:人それぞれ「好み」ってありますけどね
B:はいはい
A:好きな食べ物ってあるじゃないですか
B:ありますねぇ
A:一番好きな食べ物ってなんですか?
B:一番ですか?
A:「これさえあれば満足」みたいな
B:「一番」はないですね
A:ないんですか?
B:「二番」ならありますけど
A:それどういう状況だよ
B:何が?
A:「一番がない」っておかしいでしょ
B:「同率二位」とかあるじゃないですか
A:同率二位?
B:両方とも「二位」みたいな
A:「一位」あるでしょ,だとしたら
B:なんでですか?
A:「一位」あっての「同率二位」でしょ?
B:どういうこと?
A:「同率一位」ならあり得るけど
B:数学の話ね
A:全然違うわ
B:算数の話?
A:「『一位がない』ってことはあり得ない」って話だよ
B:「一番」って決められないじゃないですか
A:それはありますけどね
B:寿司とか
A:お寿司ね
B:焼肉とか
A:焼肉もいいですね
B:ラーメンとか
A:ラーメンも捨てがたい
B:決められないでしょ?
A:そうなんですけど
B:じゃあ「一番」なんてないじゃないですか
A:強いて言えばですよ
B:強いて言えば?
A:何が好きですか?
B:煮豆かな
A:煮豆!?
B:強いて言えば煮豆ですね
A:「煮豆」ってなんだよ!
B:煮豆っていうのは
A:え?
B:「大豆や小豆やえんどう豆などの乾燥豆を水でもどし甘い味付けでやわらかく煮た煮物料理のひとつ」ですよ
A:ウィキペディアか!

相槌を書き込むと「やたら台本が長くなる」という欠点があるので,掛け合いに慣れてきたら書き込まないほうがいいような気がしますが,掛け合いの感覚が分からない場合には,こういう書き方も有効だと思います。

第2章 漫才の書き方 「4つの方法」

第1章の方法をマスターすれば,多くの方が「漫才らしい台本」を書けるようになると思います。しかしこれだけで,「おもしろい台本」「オリジナリティ溢れる台本」「オチがしっかりとした台本」が書けるというわけではありません。ここからが本題です。

第2章では,「小噺」を教材として使い,「それぞれの小噺をどのようにして書いたか」を詳しく解説します。ここで取り上げるのは,①駄洒落のオチから作った「囲碁」 ②発想から作った「煮豆」 ③テーマから作った「でいぶ・すぺくたぁ」 ④駄洒落以外のオチから作った「裁判の4つの小噺です。小噺や漫才の書き方は,だいたいこの4種類に分類できると思います。

よく「オチの作り方を教えてください」と聞かれますが,4種類それぞれオチのつけ方に違いがあるので,「オチのつけ方」を文章化するのはなかなか難しいと思うのですが,今回,「4種類の小噺の作り方すべてを解説する」という方法で,文章化することができました。ぜひご覧ください。

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コメント (1)
「台本に『相槌を書き込む』と増す掛け合い漫才感」を追記いたしました。
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