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[読む古典漫才] 回転寿司(当て書き:おせつときょうた)

#オチの直前まで無料

#オチを予想してお楽しみください (3文字)

しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる
●漫才における「相槌」はそのときの雰囲気で自然に入れるものなので通常漫才台本には書きませんが,本格的な掛け合いのしゃべくり漫才をイメージできるようあえて細かい「相槌」を書き込んでいます。それが「読む漫才」です。

おせつ:先日,回転寿司に行ったんですけどね
きょうた:いいですね〜回転寿司。僕は最初は絶対マグロからいきますね
お:ベタですね〜
き:「ベタ」って言うな。王道ですよねぇ
お:ネタがベタすぎる
き:「ネタがベタ」って,僕の芸風否定してません?
お:回転寿司はオリジナリティが命ですからね
き:どうせハンバーグとかエビフライとかの軍艦巻き的なものでしょ?
お:「どうせ」って言うな
き:オリジナリティ出しすぎじゃないですか?あれ
お:あれ結構美味しいですからね
き:あなたはなんのネタが好きなんですか?
お:僕はプリンですね
き:プリン!?
お:全然ベタじゃないでしょ?
き:ベタではないけど,寿司でもないでしょ
お:なんでやねん。プリンも回ってきますよねぇ
き:回ってくるやつ全部お寿司だと思ってます?
お:思ってますよ。回転寿司ですからね。回ってるの全部お寿司でしょ
き:みなさんも薄々気づいてると思いますけどね,回っくてる魚以外のやつはお寿司じゃないですからね
お:じゃああいつは?
き:あいつ?誰?
お:きゅうりのくせして「お寿司」と名乗っているあいつですよ
き:カッパ巻はもういいじゃないですか
お:「もう」って何?
き:許してあげてくださいよ
お:何を?
き:「お寿司」として認めてもらうためにカッパ巻きがどれだけ苦労してきたと思ってるんですか
お:なんでカッパ巻きの肩持ってんねん
き:ファンクラブ入ってますから
お:ファンクラブ?
き:カッパ巻きの
お:カッパ巻きのファンクラブなんてあんの?
き:お寿司の定番まで上り詰めると,自然発生的にファンクラブ開設されますからね
お:そんなシステムないやろ。だいたいずるいんですよカッパ巻きは
き:ずるい?何が?
お:きゅうりのくせして「お寿司」として認めてもらえてね
き:「きゅうりのくせして」って言うな
お:そのうえファンクラブまであるんでしょ?
き:それはこれまでのカッパ巻きの努力の結晶でしょうが
お:それならプリンだって毎日レーンの上をぐるぐるぐるぐる何周も回って努力してますからね
き:あんなん努力じゃないですよ。メリーゴーランド乗ってるようなもんでしょ。レジャーですよレジャー
お:プリンはプルンプルンしてるんやから,ぐるぐる回されるのは修行やないか
き:なんの修行なんですかそれは
お:「お寿司」として認めてもらうための修行ですよ
き:プリンなんで寿司目指してんねん!
お:プリンだってねぇ,巻き物にしてもらえれば「お寿司」いけますからね
き:いけるか!プリンは一番巻いたらあかんやつや
お:なんでも海苔で巻いたらなんとかなるんですよ
き:きゅうりみたいにじっとしとるやつじゃないと巻き物にはなれないですからね
お:「プリン落ち着きない」みたいに言うな
き:海苔で巻いたらブチュて出てくるでしょあいつ
お:そこは職人さんがうまいこと巻いてくれたらええやないか
き:だいたいプリンはもう十分自立してるんだから,お寿司になる必要ないんですよ
お:自立はしてますけどね,結構不安定じゃないですか
き:不安定?
お:プリン買ってきて容器から出して食べることあるでしょ?
き:お皿にプッチンってやってね
お:皿の上で自立はしますけど,プルンプルンプルンプルンして今にも倒れそうですよねぇ
き:いや僕が言ってる「自立」というのは,プリンが皿の上に立つ「自立」のことじゃなくてね
お:違うんですか?
き:プリンは,「プリン」という一つのジャンルとして十分確立されていて,全国的にも人気あるんだから,「わざわざお寿司になる必要ないでしょ」って言ってるですよ
お:さてはあれか
き:なんですか?
お:プリン巻き人気出たらカッパ巻きの人気が落ちるから
き:「プリン巻き」て
お:プリンの巻き物参入を阻止したいんやろ
き:阻止はしたいですけどね
お:カッパ巻きファンクラブ会員としては
き:純粋にキモいんですよ。プリン巻きは
お:「プリンキモい」って失礼やないか
き:「プリンキモい」って言ってないでしょ
お:この人今「プリンキモい」って言いましたよ〜
き:言うてないわ。プリンはすでに国民的大スターみたいなもんなんやから,どっしり構えとけばいいんですよ
お:「どっしり」言われても,どうしてもプルンプルンしてしまうからね
き:いいんですよ。大御所なのにプルンプルンしてるとこが人気なんやから
お:人気なんてねぇ,たった一つの不祥事で一気にガタ落ちですからね
き:プリンの巻き寿司作ることがむしろ「不祥事」でしょ
お:「不祥事」ではないやろ
き:だいたいねぇ
お:なんですか?
き:寿司屋なんだから,魚を食べてくださいよ
お:自分だってきゅうり食べとるやないか
き:僕はメインは魚ですよ。合間にきゅうり食べてるだけで
お:僕だってメインは魚ですよ。合間にプリン食べてるだけで
き:「合間にプリン」はおかしいでしょ
お:「合間にきゅうり」よりおしゃれですよねぇ
き:魚はなんのネタが好きなんですか?
お:僕はまずね,サバからいきますねぇ
き:青魚からいくタイプ?意外と通じゃないですか
お:あなたはベタに?マグロからいくタイプでしたっけ?
き:いいでしょそれは
お:彼,ベタな芸風の昭和の芸人ですからね
き:誰が昭和の芸人やほんま〜「ベタな芸風で笑い巻き起こしたろかい!」ってこのやろー
お:巻き起こった試しがないんですけどね
き:やり続ければ人気出るやつやこれは〜マグロ並みに人気出るまでやり続けますからね僕は
お:あなたそんなにマグロが好きなんですか?
き:大好きですよ。僕はマグロがレーンに流れてきたらね,「よっ!待ってました!」て声掛けるくらい好きですからね
お:板前さんに
き:マグロにですよ
お:マグロに!?
き:板前さんに「よっ!待ってました!」はおかしいでしょ
お:おかしいけどね
き:板前さんのこと待ってたみたいになっちゃいますからね
お:マグロに「よっ!待ってました!」って言うのも頭おかしいでしょ
き:「頭おかしい」言うな。応援してるんだから
お:応援?なんの?
き:レースに勝てるようにですよ
お:「レース」って何?
き:回転寿司のレーンの上で繰り広げられるレースに決まってるじゃないですか
お:あんなんレースちゃうやん。レーンに乗せられた順に流れてくだけなんやから
き:誰かがマグロを取って,「あっやっぱりやめよ」って戻すことあるでしょ
お:戻すのはダメなんですよ。ほんまは
き:そしたら,先頭のマグロにぴたりとつけていたカッパ巻が,マグロを抜かして一番手に躍り出るわけじゃないですか
お:レース風に言ってますけどね,カッパ巻がマグロを自力で抜かしたわけじゃないでしょそれ
き:そう!そこがカッパ巻きのずるいところなのよ
お:ずるくはないよ。たまたまマグロを取ろうとしてやめた人がいただけですからね
き:たまたまやったらな
お:え?たまたまやろ?
き:その男に,カッパ巻きサイドから金が流れてんねん
お:カッパ巻きサイドからお金が!?
き:カッパ巻きが一位になれるように,その男に金渡して裏工作させてんねん。カッパ巻きサイドの悪いやつらが
お:八百長やないか!何してんねん!大事なレースやぞ
き:僕もさすがにこれはね,カッパ巻きファンクラブ会長として見すごせないと思ってね
お:あなた会長だったの!?カッパ巻きファンクラブの?
き:スッと手を伸ばしてカッパ巻きの皿を取ってね,戻してやりましたよ。マグロの後ろに
お:さすが会長!これで再びマグロが一位に返り咲いたわけや
き:これで目を覚ましたカッパ巻きは,今度こそ自力でマグロを追い抜いてやろうと思い直してね
お:おもしろくなってきたやないかこのレース
き:レーンでは熾烈なデッドヒートが繰り広げられるわけですよ
お:マグロとカッパ巻きの一騎討ちやな
き:そしてついに最終コーナーにさしかかり
お:来たよ来たよ〜最終コーナー
き:逃げるマグロ
お:王者の貫禄見せたれ!
き:食らいつくカッパ巻き
お:カッパ巻きも意地見せたれ!
き:おーっとそこへ?
お:え?
き:最後尾から猛追撃だ〜
お:おぉぉぉ〜来た来た来た来た。誰?あいつ
き:サバだ〜!!!!
お:うおぉぉぉぉ!!!サバやないか〜!!!!
き:そのままカッパ巻きをかわし
お:おぉ!
き:マグロもかわし
お:すごいやないか!
き:見事サバが一着でゴールイン!
お:さすが!◯◯は◯が速い

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