[漫才] サプライズ(当て書き:和牛)
#オチを予想してお楽しみください (6文字)
水田信二:最近,芸人仲間で話し合いましてね…
川西賢志郎:はいはい
水:今度,「川西への感謝の言葉を書いた色紙とプレゼントを渡そう」ってことになったんですよ
川:え?それ俺に言うてもええの?
水:え?「サプライズ」って言うてたから…,大丈夫じゃない?
川:ダメやろそんなら。「サプライズ」って意味分かってんの?それ渡されても俺もう驚けないからね
水:でもそこは「サプライズ」やから。驚いたほうがええって
川:無理やろ。お前がすべてを台無しにしたんやないか
水:でも,「感謝の言葉を書け」って言われてもねぇ,全然思いつかないんですよ
川:だからそういうことも俺に言うなよ
水:こういうのって何書けばいいの?
川:アホなんかな?俺がそれに答えて今言うたことをお前が書いてそれを俺がもらって読んだところで俺は全然うれしくないやろ
水:でもお前だって,「川西への感謝の言葉を書け」って言われても困るやろ?
川:あたりまえや。俺は川西や。川西本人や。川西に「川西への感謝の言葉書け」って頼むこと自体がおかしいやろ
水:それは僕だって同じじゃないですか
川:同じやないわ。お前川西ちゃうやろ
水:ほんならお前は,「川西への感謝の言葉を書け」って圧力かけられてないの?
川:あたりまえや。「俺は川西本人や」言うてるやろ。っていうか「圧力」かけられてんの?
水:圧力すごすぎて胃が痛い。ストレスで
川:なんでそんな嫌がってんねん。俺への感謝の言葉書くの。っていうか誰に圧力かけられてんねん
水:それは口が裂けても言えませんよ
川:なんでやねん。言えないくらい怖い先輩芸人に圧力かけられてんの?
水:そこはサプライズやから
川:誰に圧力かけられてるかがサプライズって…,なんか怖ない?
水:「プレゼントは何がいいかをこっそり川西から聞いてこい」ってその芸人至上最強に恐ろしい先輩に言われてるんやけど…
川:誰やねん,その「芸人至上最強に恐ろしい先輩」て
水:プレゼント何がいい?
川:大丈夫なん?芸人至上最強に恐ろしい先輩に「こっそり聞いてこい」って言われたんやろ?直接聞いてもうてるやん
水:あっ!しまった!
川:「あっ!しまった!」やないよ
水:絶対黙っといてな。俺がお前にこっそり聞いたこと
川:だからこっそり聞いてないやろ。直接聞いてるんやから
水:こっそり聞いてるやん。ちゃんと他の芸人さんがいなくなったのを確認してから,こうしてお前に聞いてるんやから
川:「こっそり」言うのは俺に対する「こっそり」や
水:お前に対するこっそり?お前にこっそり「プレゼント何がいい」って聞くってこと?そんなん無理やん。「プレゼント何がいいか川西に聞いてこい」言われたんやから。何?もっと小さい声でこそこそっと聞けってこと?
川:ちゃうわ。「プレゼント何がいいかこっそり聞いてこい」っていうのは,例えば,「俺最近これすごくほしいんやけど,お前はなんか買いたいもんある?」みたいにやな,間接的に聞くということや
水:えっ!? そういうことなの!?
川:あたりまえや
水:どうしよう。直接聞いてもうた。芸能人至上最強に恐ろしい先輩に言われたのに
川:なんでちょっと怖さ上昇してんねん。さっきまで「芸人至上最強」言うてたのに,「芸能人至上最強に恐ろしい先輩」になってるやん
水:黙っててなこのことは。俺が上手にこっそり聞きだしたってことにして,プレゼントもらったときはめちゃめちゃ驚いてや
川:分かった分かった
水:で,プレゼント何がいい?
川:この状況で「プレゼント何がいい」聞かれてもやな,もらったときに驚かんといかんということを考えると…,もう家とかやな
水:家!? マイホームってこと?
川:そやなぁ。それやったら自然と驚けるわ
水:さすがにそれは無理やろ。日頃の感謝を込めて芸人仲間がお前に家プレゼントするておかしいやろ。お前もそんな家に住んでても落ち着かんやろし
川:まぁまぁ,それは確かにそやな。それやったら〜,手作り感あふれたもんとかもええな〜。世界に一つだけしかないものとか〜
水:そんなんでええの?
川:「そんなん」って…,気持ちがこもってていいんじゃないですかね〜
水:それならもうありますよ
川:あるの?
水:ネタ
川:「ネタ」って?漫才の?
水:ネタ帳に書いてあるネタをプレゼントしますよ。手作りのネタ
川:それは確かに手作りやろうけど…
水:世界に一つしかないですよ
川:あたりまえや。世界で二つ目やったらパクったネタやからね
水:「世界に一つだけのネタ」
川:スマップみたいなかんじで言うなよ
水:え?何?不満なの?
川:「不満」とかやないけど…,僕がイメージしてるプレゼントとちょっと違うかな〜思うて…
水:お金でしょ
川:え?なんですか?急に「お金でしょ」て
水:お前がイメージしてるプレゼントや。「お金がほしい」ってことやろ?
川:いやいやいや。「お金がほしい」なんて言うてないやないか
水:あぁそう。じゃあお金はほしくないのね
川:いやいやいや。「お金はほしくない」とも言うてないけど…。「お金がどうの」なんて人前で言うもんやないからね。それに,ほんとに手作り感あふれたものとか好きなんよ
水:それやったら,僕が手作りの何かを作るわ
川:お前が作んの?料理とか?
水:俺が料理作ってもあんま驚かんやろ?
川:まぁねぇ。いつも作ってますからね〜
水:だから,普段はあんまり作らんもん作るわ
川:相方の手作りっていうのもちょっと気持ち悪い気もしますけどね〜
水:でもお金だよ?
川:お金?偽札やろそれは。「手作りのお金」て
水:俺作るのうまいから
川:それはうまく作っちゃダメなやつや
水:うまくできたやつより,いかにも手作り感あふれてるほうがいいってこと?
川:「いかにも手作り感あふれたお金」って…,バレバレの偽札やないか
水:「世界に一枚だけのお金」のほうがええの?
川:どこで使ったらええねんそのお金は。絶対使えないやつやろ
水:ほんなら,使えるお金のほうがええの?
川:あたりまえや。使えないお金もらっても困るわ
水:それやったら,本物そっくりの偽札ならいいってことね
川:あかんやろそれは。使えたとしても使っちゃダメなやつや。それやったらそっくりとかやなくて,本物のお金くださいよ
水:みなさん聞きました?言いましたよこの人。人前で「お金くれ」って
川:ずるいずるいずるい。ずるいやろこの流れは〜
水:それやったらもう,プレゼント「ネタ」でええやろ
川:それは全然ええけど,それだと俺驚かんよたぶん。しかもそのプレゼントのネタって,今やってるこのネタちゃうの?
水:そうなんですよ。実は,「今やってるこのネタこそがプレゼント」っていうサプライズだったんですよ!
川:それはお客さんに対するサプライズやろ
水:ちゃうやん。え?お前ちゃんとこのネタの台本読んだ?
川:読んだよ。読んだから俺ちゃんとここまでネタやってこれたんやないか
水:この後にあるやろ。サプライズが
川:あ〜あれね。え?これ言うてええの?このネタの台本の最後の部分が,なぜか空欄になってるんですよ
水:それが,お前へのサプライズプレゼントや
川:え?どういうこと?
水:ツッコミって,漫才やっててもあんまりオチを言えないじゃないですか。大抵ボケの僕がいつもオチを言うて,お前が「もうええわ〜」言うて終わるから。だから,「たまにはツッコミのお前に一番おいしいオチを言ってもらおう」というサプライズなんですよ
川:あ〜なるほどね。え?でも,台本のオチの部分空欄やったけど…
水:せっかくのオチを言う機会やから,お前には好きなように思う存分オチを言うてほしい思うて,台本は空欄にしておいたんですよ
川:いやいやいや。そういうことは前もって言うてもらわな
水:前もって言うたらサプライズにならんやん
川:いやいやいや。今急に言われてもオチなんて思いつくわけないやろ。普段は「もうええわ〜」って言う係なんやから
水:でも今急に言われて驚いたやろ?サプライズ成功や
川:「サプライズ」っていうんはそういうんとちゃうねん。「サプライズ」やなくて「ドッキリ」やこんなもん
水:では漫才の最後に,綺麗にビシッと決めていただきましょう。川西賢志郎で,オチです。はりきってどうぞ!
川:「はりきってどうぞ!」やないよ。無理や。これ単なる嫌がらせや
水:どう?驚いた?
川:え?なんやねんこれ…
水:お前を驚かせといて,実は最後に「僕から川西への感謝の言葉で締める」というサプライズだったんですよ,このネタは
川:え?そうなん?なんやそのネタ。しかも漫才の最後に「感謝の言葉で締める」て,恥ずかしいからやめてくれる?
水:「川西へ」
川:おぃ〜聞いてんのか人の話
水:間違えた。「賢志郎へ」
川:(笑)もうええからそういうの
水:「賢志郎がいつも隣りにいてつっこんでくれるから,僕は安心してボケることができます。多少すべっても,賢志郎の鮮やかなツッコミですべてを笑いに変えてくれます」
川:照れるわ。漫才中にそんなん言われて
水:「今日も20回くらいすべったけど…」
川:すべりすぎや。「20回」て
水:「賢志郎のツッコミのおかげで,今日もなんとかここまで漫才をやってこれました。賢志郎がいなかったら,僕は怖くてボケれない。何を言っても『絶対に賢志郎がつっこんでくれる』って信じてるから,僕は全力でボケられます。そんな賢志郎はいつも最後に,「もうええわ〜」って男前のセリフを優しくささやいてくれますよね」
川:別に「男前のセリフ」やないよ,あれは
水:僕は,賢志郎のあの「もうええわ〜」が大好きです。賢志郎のツッコミが大好きです。賢志郎!これからも僕と漫才してください!おじいちゃんになっても一緒に漫才してください!一生一緒に漫才しましょう!僕は,賢志郎のその髪型が…
川:いやいやいや,僕の髪型の話とかええから。気持ちはもう十分伝わったから。恥ずかしいからもうその辺で◯◯◯◯◯◯
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】