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音楽のコラム

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#エッセイ

禁じられたロシア語聖歌

図書館で『禁じられたロシア語聖歌』を借りてきた。

①「主の祈り」からはじまる。以下はロシア語で「主の祈り」を書いたものである。

Отче наш, сущий на небесах!
да святится имя Твое;
да приидет Царствие Твое;
да будет воля Твоя и на земле, как на небе;
хлеб наш насущ

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アラム語聖歌の魅力

 僕は図書館でアラム語の聖歌が吹き込まれているCDを借りた。聴いてみると、とても心地よい。教会でよく唱えられる「主の祈り」がアラム語で歌われている。グレゴリアンチャントも魅力的だが、個人的な音楽体験としてはアラム語聖歌に軍配が上がる。

 アラム語とはイエス・キリストがしゃべっていた言語である。「タリタ、クム」「少女よ、わたしはあなたに言う、起きなさい」(マルコの福音書第5章41節)や「エリ、エリ

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芥川也寸志 交響曲第1番

 これを聴いたとき衝撃がぼくの中で走ったデモーニッシュな音楽で力強い。チャイコフスキーを連想させるモティーフでメランコリックである。映画音楽に近いのかもしれない。音楽が語っているのであhる。それもかなり雄弁に。しかし、繊細さを欠いているわけではない。緻密な構成でかなり神経質なつくりとなっている。

 基本情報としてこの交響曲は1954年に芥川が團伊玖磨、黛敏郎とともに組織する作曲グループ「3人の会

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モーツァルト レクイエム

歌をうたいあげるような鎮魂歌である。この曲はとても祝祭的でポリフォニー(多声)でできている。音の粒が一つ一つなめらかでいかにもモーツァルトらしいではなかろうか。このレクイエムは未完であるが、モーツァルトが秘密裏で門外不出教会音楽「ミゼレーレ」を書き留めてしまったという事件があったというと納得のいく出来栄えである。映画『アマデウス』でもあやしげな使者の注文によってこの曲を書くことになるのであるが、ベ

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大江光さんの音楽

 作家の大江健三郎さんの息子である大江光さんは作曲家だ。そして、ぼくと同じように(正確にいえば知的障害)、精神に障害を抱えている。図書館で大江光さんのCDを借りて大江光さんの音楽を聞いた時に感じたことは「なんと磨き抜かれた音の粒たちなんだろう!」ということであった。ぼくも一時期、作曲家を目指していたが作曲のわざがないのであきらめた。それよりもむしろ「文字を書く職人」になることにした。

 病院に入

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音楽雑記

デイケアに通うようになって先輩のメンバーさんがディープパープルが好きでぼくも気になってTSUTAYAでハードロックのアルバムを5枚借りてきてパソコンに取り込み、ipodにインポートした。主にレッド・ツェッペリンとさきほどあげたディープパープル、レインボーそしてブルーハーツ2枚をパソコンに取り込んでipodにインポートした。いま、このコラムをかいているときはブルートゥースのスピーカーで聴きながら書い

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はてしなく長い宗教曲

 ぼくはこのコラムをヘンデルのメサイアを聴きながら書いている。メサイアはうんざりするほど長い。CD3枚組みで一枚平均70分間ある。いい加減にしてくれ。気が短いこっちとしてはお得に一枚で済ませたい。マラソンランナーではないのだ。ぼくは中学に中距離をかじったことがあるだけだ。飽きるではないか。ノリノリで宗教曲を聴くのもどうかと思うが。

 マタイ受難曲やヨハネ受難曲そしてロ短調ミサ曲はすべてバッハが作

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ゴルトベルク変奏曲への挽歌

 作曲家になりたかったグレン・グールドはなんでバッハのゴルドベルク変奏曲を1955年に録音したのだろう。きらきらした音楽は何度聴いても宇宙の世界へといざなってくれる。そこにはたくさんの賜物がつまっている神様がくれた御言葉のように。もだえ苦しむ鬱病世界のなかに光をあたえてくれる音楽は数あれどゴルドベルク変奏曲より多彩で激しいものはないだろう。理解しがたい困難に出会ったときカフカ的世界にわれわれは遭遇

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