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今日も「かぐやびより」

※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2022年6月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。

ミニシアターで連日満席の映画「かぐやびより」

鵠沼海岸にあるミニシアター「シネコヤ」で、あるドキュメンタリー映画が歴代トップクラスの動員を集めました。取材に訪れた日は千秋楽となる予定の日でしたが、連日予約で満席が続いたことにより上映期間は延長され、その分も満席になり、大幅な延長上映が決まったところでした。

好評を博している映画は、「かぐやびより」。津村和比古監督が3 年半の密着を経て完成されました。NPO 法人さんわーくかぐや(以下、かぐや)の日常をありのままに映し出しています。

千秋楽になるはずだったその日はトークイベントがあり、映画の中でスポットが当てられていた利用者の方やボランティアの方もお顔を出され、映画の中で触れていた日常の様子がスクリーンの外で続いている、とても印象深い時間となっていました。

映画の中でも理事長として、かぐやの母として登場する藤田慶子さんが、精神疾患を抱える長女の家以外の居場所の必要性を感じ2008 年に設立された場所。

善行駅から徒歩10 分弱、住宅街で一際緑の多い名前の由来にもなった竹林の中で、生き辛さを抱えた方に日中の居場所を提供するとともに、その支援を
されているご家族の小休止の時間を作っています。

今号では、先ほどの長女さんの兄にあたる現理事長(映画作中では副理事長)の藤田靖正さんにお話を伺いに行きました。

取材に訪れた際はちょうど「帰りの会」の最中。映画作中にも出ていたボランティアの方が山形県より久々にかぐやを訪れ、遅めの誕生会をしていました。少し遠くから眺めていると利用者・スタッフの区別もなくなるようで、フラットでアットホームな関係性が見て取れました。

利用者の方に、多彩な社会体験の場を…

制度的には、かぐやは藤沢市日中一時支援という障がいのある方のデイサービスにあたり、そこに集まる利用者は農作業や創作活動に勤しみます。

藤田さんはある利用者の方のお話として「割りばしを袋詰めする福祉作業所に通い、機械なら一瞬でできることに、その日の昼食代よりも低い日給で何年間も作業をしていて、嫌になってパニックを起してしまいました。支援とは幸福を作り出す事で、誰も幸福にしない活動への、ある種のアンチテーゼでもあると感じています」と語ります。

かぐやの活動は施設内にとどまらず、職業体験や季節のイベントなど多彩で、通う人の社会体験や暮らしの経験値を強く意識しています。ごく最近は竹の飯ごうで筍ご飯を作ったり、食べられる野草を自分たちで探して天ぷらにするなど、かぐやならではの活動をしていました。

野草の天ぷらづくり

日々の活動の喜びについて藤田さんは「メンバーが元気になっていくことを実感したり、それを伝えてくれた時、とても喜びを感じます。心を開いてくれた時、信頼してくれたなと感じる時に嬉しくなりますね」とのことです。

活動の場の選択肢を広げていきたい

今年4 月には、善行駅近くに「駅前かぐや」が開所しました。かぐやで回復し元気を取り戻した人たちが、地域の中で働き出す事を応援する場になっています。

2015 年から藤沢本町商店街にて職業体験を行い、店主の方々のメンバーを受けとめる力に驚かされ、これから駅前かぐやで個を活かしながら強みのあるスキルだけで地域と繋がっていける機会作りを目指すとのお話。

今後の展望について藤田さんは「中華料理屋さんで餃子を作るお仕事をすると、ものすごく手際よくできる方もいます。実際にwin-win で活動出来る場を広げていけば、福祉施設ではなく地域のお店で働く選択肢もどんどん広がっていきます。NPO 法人として社会的に先駆的な事例を作り出す役割があると考えているので、成功例を作り他の福祉施設や、行政などが取り入れていけるモデルを作っていきたいです」と語りました。

映画「かぐやびより」は今後、映画祭などに出される予定となっています。取材時点で今後の上映予定は固まっていませんが、ご興味があれば予告編(https://youtu.be/tHsceZEw_I8)をご覧ください。

「かぐやびより」予告編

毎年9月には監督が映画を撮るきっかけにもなった「かぐや祭り」が開かれ、ステージイベントのほか、かぐやメンバー自身のお店出店、地域のアーティスト出店などで、多くの人が訪れます。公開イベントとなっていますので、実際にかぐやを見てみたい方は、訪れてみてはいかがでしょうか。

団体紹介

NPO法人  さんわーくかぐや
【設立】 2008年4月
【代表】 藤田 靖正  さん
【連絡先】un_and_moon2008@yahoo.co.jp/0466-77-8610
特定非営利活動法人さんわーくかぐやは、2008年4月1日に開所し、福祉活動を行うための法人です。障がいがあってもなくても、自分らしくありのままに、いつでも仲間と一緒に過ごせる場所、創作と働く機会を通して、自立に向けた思いを基本に設立しました。創作活動や生産活動を行い、身体能力・日常生活能力の維持向上を目的として、必要な支援を受けながら多くの人と交流し、色々な体験・社会参加をしていきます。


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