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漢の色香

格闘家『梅野源治』。
ずっと前から気になる存在だったのは確か。でもなぜか出会わなかった。
そういう風向きだったのだろう。
しかし出会いは突然訪れた。
僕がもうかれこれ10年以上は撮り続けている格闘家がいる。久しぶりの試合、もちろん密着して撮影していた。そこの控え室に燻し銀のオーラを纏った漢が入ってきた。「あ、梅野源治だ!」と、すぐさま釘付けになった。そして僕が密着している格闘家へ挨拶に来てくれた。語り口、声のトーン、佇まい。どれを取っても漢の色香溢れていた。

試合も完勝にて終えられ、ホッとしつつ会場を後にしようとしたそこに
梅野源治がいた。話すチャンスだ。思い切って話しかけてみた。
鼻には試合での名誉の負傷を負った跡が残っていた。
「あのバッティング、偶発的とはいえ悔しかったですねぇ」
「はい、ありがとうございます。仕方の無い事なので前へ進みます」
こんな様な会話をした記憶がある。僕にとってこの会話自体、コミュニケーションとも思っていない。憧れの選手を前に、そのオーラと空気を確かめるためにパンチの当たる間合いに入る。ただそれだけだった。そしてその間合いにある空気は確実に僕を虜にした。
「この漢、梅野源治を撮りたい、写真というグローブを着けて
思いっきり殴り合いたい。」

すぐさまSNSでつながり、メッセージのやりとりをした。丁度僕の25周年記念写真展があったのでご案内すると、約束通り来廊いただいた。そして、とてもしっかりと作品と向き合い、僕のメッセージと共に沢山のことを受け取ってくれた。アスリートであり、職人であり、また自身を表現するアーティストだった。一流といわれる人が持つ宝物をやはり彼も持っていた。

2022年3月20日。RIZINでの試合が決まりました。相手は因縁のあるあの選手との再戦です。そう彼から連絡をもらった。これは大変だ。ついに動いた。いやいや、動く時はいつも決まって急なものだ。その急に答えられなければチャンスなんて二度と掴めない。いつもそうやってきた。今回の漢もやっぱりそうか。

いてもたっても居られずに、練習に寄り添ってみたかった。そこにはすべての答えがあるはず。華々しい経歴を持つ梅野源治。だが練習での彼は寡黙に闘う孤独な格闘家だった。やはりそうか。僕の知っている限りの一流は皆孤独。最強の相手は「怠ける自分」という事が分かっているのだろう。己との戦い。いかに追い込めるかの勝負を魅せてもらった。

©Fujisato Ichiro
©Fujisato Ichiro
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格闘家『梅野源治』との出会い。これもまた一つの形に残していきたい。
格闘家である漢の生き方、生き様を見届ける為に・・・
また新たなる物語のスタートだ。

©Fujisato Ichiro
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