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■ダンサー人生[第十一話]

あなたは、自分の中の「本当の姿」を知っていますか?そして、その本当の自分に変身する鍵を手に入れましたか?誰も知らない、本当の自分に会いたいですか?yesであれば、この話(ストーリー)をヒントに、本当の自分に会う鍵を見つけてください。■■■

 いつの間にか、私は、とある公式イベントの出演が決まっていた。私自身の意志を確認されることはなく、当たり前のように、出演者リストにエントリーされていた。私もそれを望んでいた。ある日、初イベント出演の踊り子が練習会場に集められた。おそらく、イベント詳細の説明会だろうと、軽い気持ちで、会場に向かった。会場にはすでに、普段の練習で見る顔馴染みばかりだった。そして、一人のインストラクターがその会場にいた。私が、よさこいに参加するきっかけになった、エアロビクスのインストラクターNさんだった。これまでの練習会場には、別のスタッフの方々が振付を指導していた。なぜNさんがこの会場に来ていたのか、このあとすぐにわかった。これまで教えてもらった振付は、実は全てNさんが考えたものだった。そして、このイベント出演者の前で、Nさんが発表したのは、イベント用の踊り子の立ち位置とフォーメーションだった。今度のイベント用に、これから新たな振付とフォーメーションを指導するというものだった。よさこいの踊り子にとって、立ち位置はとても重要だった。踊り子にとっては、目立ってなんぼの世界だ。出演者は皆、最前列の中央、つまりセンタートップを狙っている。舞台上での主役の立ち位置なのである。皆、主役を狙っていることは、容易に理解できた。練習会場に散らばった皆は、各々、仲間と話し込んだり、ストレッチをしたり、前回までの振付練習を復習したりしていた。急に大きな声を張り上げ、Nさんが皆を集めた。会場前方の白板前に、集まったみんなは、Nさんを前に、体育座りをした。Nさんが口を開いたその瞬間、その場に緊張感が走った。「皆は、イベントに出る自覚はあるの?殆どの人が、おしゃべりしたりしてたけど、ちゃんと動けるの?」Nさんは、大きな声を張り上げ、皆に檄を飛ばした。そしてさらに、「今から、今度のイベント説明しますけど、今回のイベント用のフォーメーション決めにオーディションやりますから。」皆が、固まって動かなくなった。これまでの練習の雰囲気と明らかに違う、かなり張り詰めた空気感を、その場にいた誰もが感じ取れたはずだ。よさこいはかなり厳しい世界だとは聞いていたが、こんなに急に、オーディションがあるのかと、私自身も身が引き締まった。なんせ、オーディションは、もちろんのこと一回こっきり。一発勝負の世界だ。Nさんからイベントの説明が終わり、今回のイベント用の振り落としが始まった。振り落としは、とても丁寧に行われ、細かい動きにまでも説明と、動きの意味、コンセプト、気持ちの入れ方、顔の向き、そして、曲のタイミングと表情に至るまで、事前に作り上げた振り落とし内容を確認しながら、私達に指導していった。これまで受けていた練習や内容とは明らかにレベルが高いことに気づいた。私達は、この振り落とし後に行われるオーディションのことが気になって仕方がなかった。振り落としが行われながらも、いつもと違う緊張感が、みんなから伝わってきた。

◆本当の自分に会うポイント◆      ① 緊張感が走る場面で、あなたは気持ちを冷静に保つことができますか。常に自分自身には、試練を与え、冷静でないときにこそ出やすい弱い部分を自覚することを心がける。

② 一発勝負ほど緊張する場面はありません。その一発にかけることができる強いメンタルを身に着け、そんな場に慣れよう。

第十ニ話に続く

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