頭痛キャラメル 第三十一話 【薔薇の絵 後編】
ふと目が覚めた。
辺りは静まり返り、両親やおばあちゃんも居間にはいなかった。
真っ暗になった寝室と居間の襖が開いており、居間の方を見渡すと、僕の目にあの、薔薇の絵が飛び込んだ。
「今、確認しなくては。」そう誰かが、僕の耳元で囁いているように感じた。
僕は何枚にも重ねられた掛け布団をそっと剥がし、その薔薇の絵に引き寄せられるように薔薇の絵に向かった。
しかし、誰が描いたのだろう。
おばあちゃんがとてもこの絵を気に入っていたので、なんとなく、僕はその絵の作者に焼きもちを焼いていた。
その絵は、端っこからめくれていた。その少しめくれた角を摘まむと、壁に留めていた画びょうが、「パチッ」と、飛び出し、弾かれていった。
めくれた角がくるんと丸まった。
すると、めくれた角に、何やら文字が見えた。
「これは、作者の人のサインかな」そう想像した僕は、その角部の反対の面に書いてある文字を読んだ。
そこには、「おばあちゃん、いつも元気でね」と書いてあったが、作者の名前のような文字は見つけることができなかった。
薄暗い居間の中に、ポツンと僕だけがいる。辺りは静まり返り、その静けさに恐怖を感じた。
どこからか、人の視線を感じる。
急に怖くなり、僕は急いでお布団に戻り、その掛け布団を頭からすっぽりと被って、怖さを遮断した。その記憶は鮮明に記憶していたが、いつの間にか寝てしまった。
目が覚めると、僕の両隣に寝ていた両親の布団が片付けてあり、広い和室の真ん中に、僕だけが横になっていることに気がついた。
居間のテレビを観ながら、おばあちゃんと両親が何やら楽しそうに話をしていた。
おばあちゃんの家での時間もあっという間に過ぎていき、日曜日のお昼になろうとしていた。
僕たち家族が帰り支度をし始めると、いつもおばあちゃんの姿が見かけなくなる。
「おばあちゃん、もう出発するよ。」そう、母親がお庭の方に向かって、大きな声でおばあちゃんを呼ぶと、お庭横の納屋から両手いっぱいの、お野菜を運んできた。
「あっ、おばあちゃん、ありがとう」
「野菜いっぱい持って帰ってぇ」
いつも帰り際に、おばあちゃんは、僕たち家族に野菜をいっぱい持たせてくれた。
見たことのないほど、大きな白菜、大きなさつまいも、たくさんのミカンなどいろいろをお土産にくれた。
一通り、貰ったものを車に積み込み、準備が終わったところで、玄関前で、おばあちゃんと両親が話し込んでいた。
「さあ、そろそろ帰ろうか。昼過ぎると、海岸線の道路が、混むからね。」母親がこう言うと、毎回、出発の合図となった。
僕たちが手荷物を持って、車に向かおうとしたとき、おばあちゃんが「あっ、⚪️⚪️くん、あの薔薇の絵は、持って行かんの?」
そう、言われるまで、僕はあの薔薇の絵のことをすっかり忘れていた。
「いや、持って帰らんよ。」そう、僕が言うと、おばあちゃんが、
「いつでもいいよ。あれは、⚪️⚪️くんがおばあちゃんに描いてくれた絵だからね。」
「えっ?僕が描いてプレゼントした絵」
僕は、自分があの絵を描いたことを忘れていた。
しかも、おばあちゃんにプレゼントした絵だった
僕は、いつも持ち歩いている絵の具で、いつでもどこでも、求められても、求められなくても、大好きな絵を描いていた。
僕は絵が大好きで、将来は画家さんになりたいと、本気で語っていたことを、後々母親から聞かされた。