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コンビニトイレで不運に出会った

 ―これは数年前の事。ワタクシが映画かなんかを見に行く途中でコンビニに寄った時の事でございます。


 なんだか仰々しい出だしで書き始めてしまったので、このまま続けさせていただきますが、ワタクシはコンビニで、そう、もよおしてしまったのでございます。
 え?何をって?もちろんおトイレでございます。
 催してしまったからには仕方がない。
 ワタクシは意気揚々とおトイレへと向かいました。


 ガチャリ!


 個室トイレの扉を元気に勢いよく開いたワタクシの目には信じられない光景が待っていました。


 人です。人の後ろ姿です。
 トイレの中に人が立っているのです。
 それは男性でした。
 そう、立ちションをしているのでございます。
 男性も急に扉が開いた事に驚いたのかビクッとした様子がうかがえました。
 ワタクシはすぐさま扉を閉めまして、こう思ったのでございます。

『鍵しめなさいよ!バカぁ!』

 嫌なモン見たなと思いつつ、ワタクシも尿意に呼ばれておりましたので、扉の外で男性の小用が終わるのを待っておりました。


 ガチャリ!


 音がしましたので目を向けますと、くだんの男性が脱兎も真っ青の勢いで去っていく後ろ姿が見えました。


 よほど恥ずかしかったのでしょうね、ええ。


 気をとりなおして、ワタクシもさっそくとおトイレの中に入ったのでございますが、そこで異変を感じました。


 そう、それは「臭い」です。
 とても臭いのです。
 おかしいなと思い、臭いの元を目で追ってみたのでございます。
 察しの良い方ならお気づきでしょう。


 そうです、「流し忘れ」です。


 お便器の中には黄色い液体が残ったままでした。
 ワタクシはたじろぎました。
 そしてさらに悲劇は続きます。
 というか、ここからが悲劇の本番です。


 便座の上で液体がテラテラとおトイレの照明の光を反射していました。


 なんという事でしょうか。
 あの野郎は便座をあげずに放尿し、あまつさえ便座を汚したまま立ち去ったのでございます!
 ワタクシは怒りに震えました。
 怒りに震え半泣きで、臭いにえづきながら赤の他人のトイレの不始末の掃除をしたのでございますよ!


 ワタクシはくだんの男性の顔を見ていません。後ろ姿しか見ていないのです。
 その後ろ姿の幻影に向かって心の中で叫びました。

「鍵を閉めろ!便座を上げろ!そしてトイレを汚したらキチンと掃除ぐらいしろや!っていうかお前!手ぇ洗ったか!?」

 ワタクシの慟哭はおトイレの小と共に、悲しく無慈悲に流れて行ったのでございます…。

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