わたしがあなたを愛している
性暴力を受けたことがある。
あれが性暴力だったと気付いたのは、数年経ってからだった。
数年前に付き合っていた人間がいた。
わたしは性行為をしたことがなかった。
性行為について知識としては知っているし、年頃だったので興味はあったけど、いざするとなったらとても怖くなった。
それを正直に伝えると、相手は私を咎めたりはせず、きちんと納得して行為をやめてくれた。
でも、その数日後に、勝手に下着の中に手を入れられた。
本当に怖くて、いやで、でも、どうしても身体が動かなかった。
表現を盛りすぎていると思われるかもしれないが、本当に身体からすべての力が抜けて、重りがついているかのようだった。指ひとつ動かせない。
レイプ被害に遭った方が「怖くて動けなかった」というのは、この感覚のことなんだと今では思う。
この時点で「おかしい」と思って相手から離れられていればよかったのだと思う。
当時のわたしは幼かったし、初めての恋愛だったし、相談できる友達もいなかった。
その後、いわゆる「初体験」をする。
これはきちんと合意の上で行われたので問題はなかった。
それから数年間、ふつうにふつうの恋人同士として過ごした(……本当はヤバいことが起きまくっているのだが、ここを詳しく書くとヤバそうなので伏せる)。
「デートDV」という言葉をご存知だろうか。
「DV」は馴染みがあると思う。
恋人や配偶者への、殴る、蹴るなどと暴力のことだ。
では「デート」がくっつくとどうなるか?
「精神的な暴力」になる。
わたしはデートDVを受けていた。
毎日のように「お前が悪い」といった趣旨の話をされ続けたり、わかりやすい例でいうと、もはや名前では呼んでもらえずに「マンコ野郎」と呼ばれていた(これはなんかもうひどすぎて逆に面白いなと思っている)。
デートDVや通常のDVの怖いところは「洗脳」にある。
DVをする人間は、物理的でも精神的でも、暴力を振るったあとに優しくなるのだ。
これがマジックの種。
被害者はそこで「さっきはひどいことをされたけどこんなに謝ってくれてるし」とかいう錯覚を起こす。
そしてどんどん深みにハマって、抜け出せなくなる。
どうなるかというと、暴力が当たり前になっていく。
「わたしがダメだから暴力を振るわれるのは当然。我慢しなければいけない」という、どう考えても間違っている思考になる。
ここで「第三者」がいてくれたら間違いに気付いてもらえるのだが、「加害者」と「被害者」だけの世界では誰も間違いに気付くことができない。
もう、完全にそれだった。
例えば相手と揉めた際は、当時は本気で「わたしが必ずすべて間違っている」と思っていた。
なので、毎回平謝りしていた。
そんな生活を続けていると人間はどうなるか?
壊れる。
わたしはもうそれはそれはブチ壊れていた。
でも、ブチ壊れている自覚が一切なかった。
どれくらいブチの壊れをしていたかというと、ストレスによる健忘症を発症していたぐらい。
健忘症ってなに?というと、なんもおぼえてられませ〜んというやつです。
そしてマジでなんも覚えてないので、「前に言ったのに忘れたの?」と怒られ、またストレスが溜まるコンボが発生しまくっていた。
あまりにも記憶を維持できないので病気を疑われ病院に行かされたけど、原因はオメ〜なんだよな〜
そんなこんなで毎日のように精神的苦痛を味わっていたので、もう相手に対する愛情など毛ほどもなかった。
ここからが本当に怖いところ。
洗脳されているので、「嫌いになったら怒られる」とかいう、意味不明な思考が発生する。
相手に対する愛情がないどころか嫌いですらあったので性的な触れ合いが本当に恐怖になっていた。
キスはおろか手を繋ぐのも嫌だった。
でも、拒むとメチャクチャに怒られて、ついでに人格も否定される。
だから相手のことを好きなふりをし続けなければならなかった。
相手から性的に求められると本気で吐き気がした。
手を繋ぐのもキスもセックスも気持ち悪くて仕方がなかった。
でも拒むと怒られて、人格を否定される。
相手のことが好きなふりをして、気持ちいいふりをし続けていた。
もうわたしに女性としての尊厳とか、そういうものはマジでなかった。
言いたかないけど、マジで肉便器というか、ラブドールとか、なんかそういう類のものだった。
その相手とは別れた。
上記の通り、ストレスのあまり健忘症になり、別れの前後の記憶がないため、どうやって別れたのか思い出せない。
最後の日に「罪滅ぼしのためのセックス」をさせられたことだけ覚えている。
相手曰く、なんか、わたしのせいでなにかしら苦しかったらしいんです。
よく分からないんですけど。というか覚えてない。なんか最後にヤらせろって言われた。
エッチな漫画で「嫌がっていても身体は正直」みたいなのあるじゃないですか。あれって、突然性器が入ってくると膣が傷つくから身体が防御反応として膣分泌液を出しているだけで、性的快感によるものではないというのをどこかで見たことがある。
なんかもう、それすらなかった気がする。
人間なので、性的快感を感じるところに触れられたら、嫌だとしても多少は気持ちいいのでは?と思うんだけど、本当になんもなかった。
「感覚」のスイッチを全部オフにしたみたいな感じだった。
セックスってこんなに虚無なことあるんだ、と思った。それ以外の記憶はあんまりない。
あれから何年か経っているが、わたしの傷は一切癒えていない。
未だにフラッシュバックに苦しんでいる。
さっきマジで最悪なエピソードを思い出してしまったので、この記事を勢いで書いている。
別れてからしばらくは、あの日々がなんだったのか、よくわからなかった。
たぶんわたしは可哀想な目に遭った気がするんだけど、まだ洗脳が解けきっていないので、相手が悪いと思いきれないでいた。
でも今ははっきりと言える。
わたしのあの経験は間違いなくデートDVであり、性暴力だった。
気付くのが遅かったし、表面上は合意の上だったし、もう相手をどうにかすることはできない。
世の中には性暴力に遭うひとがたくさんいる。
女性だけじゃない。男性もだ。
すがる思いで警察に相談しても、立件は無理だよと門前払いされたり、「そんなの逃げればいいじゃん」だとか、いわゆるセカンドレイプをされて、さらに傷を負ってしまうひとがいる。
実際の割合は分からないけど、性暴力被害を受けて、泣き寝入りをせざるを得ない人のほうが圧倒的に多いんだと思う。
わたしは本当にそれが許せなくて、悲しくて、つらい。
わたしは、そのひとたちに何もしてあげることはできない。
でも、わたしと同じように、被害から何年経っても悲しくて苦しくて、自分のことを愛してあげられないひとがいるのなら。
わたしだけは絶対に、何があっても、あなたを愛している、と伝えたい。
いつかは自分にけじめをつけるために一度は書いておきたかったまじめなはなしでした。恥ずかしくなったら消します。
胸糞悪いのにここまで読んでくれてありがとう。
これ以上わたしのような思いをする人が、この世に増えませんように。
愛を込めて
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