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party next door

2022
藤中康輝, 山田彩七光
映像+サウンド(05;38 ループ), テキスト

モニターに映し出される風景、ベンチに座る人物、ヘッドフォンを装着すると、彼は自分の聞こえる音をつぶやいているのだとわかる。口元から耳元へ密接した声は空間的な移動と共に映像にひとつ奥の場所を作り出す。その後に窓の方を見ると、そこに付けられた字幕も同様のルールに則っていることがわかるだろう。窓の向こう、この部屋の外にいる人物の気配はここから地続きのものとして感じられるかもしれない。
この展示では藝祭という環境を踏まえ、映像、音、窓、テキストを用いて“現実感”についての表現を試みている。
メディアを通して窃視するような想像力によって可能になる〈どこか〉への縮地、その副作用は〈ここ〉に対する現実感の薄れだろう。モニターに映る〈どこか〉と〈ここ〉の距離はどこまでも遠く、同じくらい近い。
〈ここ〉とはそれぞれが現実感を感じられる範囲のことだ。それは自分の身体が存在する場所に留まらず、様々な媒体、あるいはそれぞれの思考や記憶を通して複数の時空間にまたがる。様々な〈ここ〉に対して浮遊と着地を繰り返す、虚構と現実のパラレルな関係性の中で暫定的に生じる現実“感”にこそ、多層で有機的な個人と社会を見ることができる。

藤中康輝:
東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻在学(2022年現在)。 2017年よりクリエイティブユニット「Oku Project」として活動し、パフォーマンスやワークショップ形式で行う実践『おく』を展開。同作でCAF賞2020入選、第26回学生CGコンテスト筧康明審査員賞を受賞。虚構的な世界への没入と覚めを通して、現実的な世界に新鮮に出会い直すための作品制作を行う。
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山田彩七光:
東京藝術大学美術研究科デザイン専攻在学(2022年現在)。2020年東京藝術大学卒業・修了制作展にてサロン・ド・プランタン賞受賞。同作でMADD.award2020 8K大型映像部門グランプリ受賞、第27回学生CGコンテスト アート部門、エンターテイメント部門 入選。
光やループ映像を用いて空間に虚構の連鎖を構築。記憶を喚起する装置としての作品を制作している。
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「party next door」
会場: 東京藝術大学上野校美術学部中央棟2階第7講義室
会期: 2022.9.2-4 9:00-18:00
*入場には『藝祭2022』の予約が必要です。

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