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桐山清澄九段・田中寅彦九段引退に想う

将棋界の元タイトルホルダーだったお二方が引退された。

桐山清澄九段の引退試合はニュースでも取り上げられており、弟子で元竜王の豊島九段が師匠の最後の対局を見守っているシーンが印象的だった。

将棋世界6月号ではこのお二方の引退に際してのインタビューが掲載されている。これまでの将棋人生を振り返ってターニングポイントとなった対局やその時の心境は勝負の世界で生きてきた迫力や苦悩が滲み出ており、考えさせられるものがある。

その中でも田中寅彦九段の「現代将棋についていけなくなった」という発言は驚くばかりだ。

田中寅彦九段は「序盤のエジソン」と呼ばれ、居飛車穴熊や飛車先不突矢倉など将棋界に新たな発想をもたらした棋士だ。

それにも関わらず、今のAIが指し示す手がどうも納得できないとのことだ。

自身が若い頃は、年配の棋士が自分の新たな戦法の良さが分からず、頭が固いというニュアンスの発言をしていたが、全く同じ状況に自分が置かれているという点は、田中九段をもってしてもそうなるんだと驚きを覚えた。

将棋はご存じの通り頭を使う競技であり、スポーツと違い、肉体的な衰えは関係がない。

新しい考え方も取り込むことが論理的にはできるのだが、昔の感覚が染みつき受け入れられないという苦悩がそこには描かれていた。
(頭では分かっていても、受け入れがたい感覚なのかもしれない)

それだけ昔の成功体験を捨て去り、新しい感覚を取り入れることは難しいということだろう。

ビジネスも同じでDXを始めとして、「アジャイル」「デジタルネイティブ」「働き方改革」など新たな価値観がドンドン生まれてきている。

勝負の世界で生きているプロでもこうしたことに対応する自分自身の「トランスフォーメーション」が難しいことを念頭に置きながら、自身も必死で新しい価値観を受け入れることができるよう柔軟な考えや異質の受入れについては意識して行っていきたい。

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