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『映像研には手を出すな!』で考えたこと_010

 アニメ版『映像研には手を出すな!』を見て原作を読み、実写版に違和感を覚えた私は、その違和感を備忘録として残すこととした。ここでは、原作、アニメ版、実写版の人物描写や台詞、演出、構成などを改めて見直していく。【ネタバレ】全開ですが、お付き合い頂ければ幸いです。

用語のおさらい

 まずは、用語の事前説明をしよう。《生活》《妄想》《作品》だが、これらはこの作品で描かれる世界を示している。《生活》は、彼女達の普段の高校《生活》のことだ。《妄想》は、彼女たちの妄想で描かれる「最強の世界」のことである。《作品》は彼女たちが作り出す「最強の世界」、アニメーション作品そのものだ。
 次に、アニメーションの違いとして、セルアニメの流れを汲むアニメーションは〈*アニメ〉、ストップモーション・アニメーション、3DCGI、VFXは〈@アニメ〉とする。

気になることのおさらい

 一連の『映像研には手を出すな!』を見て、ふと、気になったことをおさらいしておく。
[い]:原作がどのように分解され再構築されたのか。
[ろ]:オリジナルエピソードをどれだけ盛り込んだのか。
[は]:生きている人間と妄想と作品となるアニメーションの描き方、あれこれ。
[に]:原作に忠実であれとは言わないが、原作を基にアニメ化や実写化するとはどういうことなのか。
[ほ]:これは、ふと、ではない。ずっとだ。VFXとか、生きているガスマスクの少女とかモーションキャプチャとか。アニメーションとはなんぞや。

ロボカニ

一気にみるぞ!キーワードでみるアニメ版と原作

 ここ約3週間ほど、滞っていた仕事に追われて、暫く『映像研には手を出すな!』を見返すこと、読み返すことができなかった。やっとこさっとこ時間が見つかったので、改めてアニメ版と原作を見直したところ、アニメ版について[いろはに]と[ほ]が刺激されていろいろ書きたくなってしまった。そこで、010は一気にキーワードだけ挙げたいと思う。

アニメ版第六話

 では、アニメ版の第六話からいってみよう。

アニメ版(第六話:前作より進歩するべし!)
制作会議/美術部の打診/ロボ研の要望/制作期間(文化祭まであと96日)/アニメーターの義務と呪い(水崎氏)/部活動として破綻/PC問題/出かけてきます(金森氏)/オープニング/放課後正門で待つ金森氏/行きます?飯/ラーメン屋到着/金森氏の奢り(裏があるだけ)/残業代の前金(適切な対価を払う予定)/新作の絵コンテ/《作品》のライカリール/ラーメン登場/アクションシーンは頭の中(浅草氏)/水崎氏のアクションシーン/演技力のなせる技(アクションシーンは水崎氏に任せる)/SE問題/PC手配(有能な金森氏)/一々うるせぇ小心ダヌキ/寝る子(金森氏)が育ってる現場/家でも電車でも作画するぞ(水崎氏)/完成は目標ではなく決定事項(金森氏)/お会計は別会計(ラーメン代は貸し)/生徒會室(金の動きは生徒会でチェック)/厄介な部一覧/金森氏、音響部に向かう/生徒会の代理です(立ち退き)/500万の価値(浅草氏)/音の標本(音響部)/音響部を擁護する浅草氏/ガサ状を出す金森氏/悲鳴をあげる音響部/廃部まっしぐらの音響部/音響の実態(浅草氏と音響部)/交渉を始める金森氏/交渉成立/百目鬼氏と浅草氏(報告写真)/朝の部室/乗ると早い浅草氏とスイッチが入った水崎氏/浅草氏のスイッチ/美術部との打ち合わせ/雲行きが怪しい空/雲行きが怪しい打ち合わせ/説明が苦手な浅草氏と攻めてくる美術部員/雨が降る/美術部のツッコミ/疲弊した脳みそに酸素供給(浅草氏)/妄想を始めてロボ設定を考え直す浅草氏/巨大ロボは嘘の塊からのロボアニメはやめよう/対案を出す浅草氏/視聴者の目は厳しい/監督浅草氏への叱咤激励/復活した浅草氏/ロボの改善案/浅草氏の創作スイッチは自由(放牧か)/エンドクレジット

映像研と音響部

 さて、アニメ版第六話で語られた原作は、第2巻11話、第3巻17話の百目鬼氏とSE、そして第2巻12話、浅草氏のスイッチについてだった。

原作(第2巻11話:労働の対価)
制作会議/制作期間3倍/アニメーターと呪い(水崎氏)/部活動として破綻/PC問題/出かけてきます(金森氏)/「PCあればアニメも簡単に描ける」的な誤解/PC手配に動く金森氏/情報技能研究部との交渉/生徒會へ書類提出/備品一覧検索(図書館)/放課後正門で待つ金森氏/行きます?飯/ラーメン屋到着/金森氏の奢り(裏があるだけ)/残業代の前金(適切な対価を払う予定)/新作の絵コンテ/《作品》シーン/ラーメン登場/アクションシーンは頭の中(浅草氏)/水崎氏のアクションシーン/演技力のなせる技(アクションシーンは水崎氏に任せる)/PC手配(有能な金森氏)/一々うるせぇ小心ダヌキ/寝る子(金森氏)が育ってる現場/家でも電車でも作画するぞ(水崎氏)/完成は目標ではなく決定事項(金森氏)/お会計は別会計(ラーメン代は貸し)/なんだそりゃ!

原作(第2巻12話:二人のスイッチ)
ベッドのなかで作業する水崎氏/登校する水崎氏と金森氏/絵コンテを仕上げた浅草氏/スイッチの入った水崎氏/物事には必ず訳がある(浅草氏)/ロボアニメはやめよう!!(浅草氏)/対案を出す浅草氏/視聴者の目は厳しい//最善案と死ぬだけ/監督なんすよあんたは(金森氏)/復活した浅草氏/ロボの改善案/浅草氏の創作スイッチは自由(放牧か)

原作(第3巻17話:お宝奪取作戦!;COMET-A538に参加するための《作品》制作)
芝浜高校厨房搬入口/パンの耳を食べる音/映像研部室/儲けは少ない/COMET-A538参加/お宝探し/三人娘、生徒會に問い合わせ/強制執行と宝/音響部へ/結構です/SEの宝庫/音響の実態(浅草氏と音響部)/悲鳴をあげる音響部/500万の価値(浅草氏)/音の標本(音響部)/ガサ状を出す金森氏/交渉を始める金森氏/交渉成立/百目鬼氏と浅草氏(報告写真)/今日中にカラにすること

アニメ版第七話

 次に、第七話だ。

アニメ版(第七話:私は私を救うんだ!)
夜、テニスコートにプール付きの大豪邸/ベッドに入ってタブレットにペンタブでロボを描く水崎氏/部屋を覗く水崎氏母/水崎氏の瞳/水崎氏祖母と幼い頃の水崎氏/湯のみとお茶と水の動き/もう一回(観察)/モデル教室/立ったり座ったり/一人、壁に向かって立ったり座ったり(観察から絵に起こす)/歩く/左右に揺れる歩き方/歩く形を描く水崎氏/モデル歩き/番組内の立ったり座ったり/お茶(水)の動き(できた)/祖母に立ち方と歩き方を伝える(左右に揺れる歩き方)/車椅子の動きを習得する水崎氏/ロボットの習作(タブレット)/オープニング/作業する部員/百目鬼氏の荷物が搬入される(軽トラ/自動車部+生徒会)/音響の打ち合わせ/タイミングと音量と場所の広さなどなど/キャスティングは決定済み/ビデオコンテに声を当てるロボ研/音量とタイミング/作業を進める映像研/オープニングは中止/音楽はフリー素材/美術部の背景/そこ気にする?/言われたこと(美術部)と守ってほしいこと(映像研)/個性の中村くんと調整役の久保さん/監督は指示してなんぼ(金森氏)/絶対全部描く(水崎氏)/昼飯と雷/休校/総員退避/音曲浴場へ/ホウレンソウの浅草氏/受付(今日はお友達と、いいえ(金森氏))/興奮する水崎氏/写真撮っていい/銭湯のルール/湯の贅沢な使い方/もう一回×3(水崎氏)/水鉄砲(浅草氏)/放任と怒られたこと話/おばあちゃん子の水崎氏/雷(きっかけ)/雨水と下水の流れ(妄想への流れ)/戦う水崎氏と淺草氏(妄想)/飯を食いに出る金森氏/大座敷/ザリガニ釣り/塩ゆでザリガニ/浴場の記録をつける二人/《妄想》湯内専用ボート足漕ぎ式の冒険(水の動き)/雨上がる/寝ている淺草氏/淺草氏を背負う水崎氏と荷物を持つ金森氏/翌日、文化祭準備の生徒たち/作業する三人/あっふんだぁ!(動きに煮詰まる水崎氏)/見る目を養うのもプロデューサーの仕事/音をつける/作画オタクは音を消す/音をつけた動画/音も技法/悔しがる水崎氏/金魚の尻尾、桜吹雪、ダンス、動き、デフォルメと細部、実写との違い/ロケット発射のアニメーション/空を見上げ風を受ける三人娘/あんたのこだわり/最強の世界は自分で描くしかない/アニメーションが作りたい水崎氏/私はここにいる/水の動き/エンドクレジット

論破アニメ

 アニメ版第七話は、原作第2巻12話水崎氏のスイッチを、第13、14話で絡め膨らませ、オリジナルエピソードを加え丁寧に描いていた。原作のキーワードは以下の通りだ。

原作(第2巻13話:音曲浴場の休息)
落雷/大雨警報で休校/仕込んだご飯と横流しルート/降り出した雨/総員退避!/雨宿り/音曲浴場へ/浅草家ルール/初銭湯の水崎氏/銭湯ルール/浅草氏の全身洗うワザ/贅沢だ(金森氏)/もう一回×4(水崎氏)/いい加減に、しやがれ!(浅草氏)/怒られることと過干渉/戦う水崎氏と淺草氏(妄想)/飯を食いに出る金森氏/食堂/ザリガニ釣り/ザリガニの塩ゆで/浴場の記録をつける二人/《妄想》湯内専用ボート足漕ぎ式/雨上がる/寝ている淺草氏/淺草氏を背負う水崎氏と荷物を持つ金森氏

原作(第2巻14話:こだわり)
文化祭準備の生徒たち/ロボ研実験中/揃ってきたよな。武器/この眺めは動くロボのいる世界/いい加減なもん作れないな。ヤツラ(映像研)に失礼だ(小野)、たりめーよ(小林)/アッフンダァ!もう!!(動きに煮詰まる水崎氏)/見る目を養うのもプロデューサーの仕事/音をつける/作画オタクは音を消す/音をつけた動画/音も技法/アニメーターは動画の守り人/金魚の尻尾、桜吹雪、ダンス、動き、デフォルメと細部、実写との違い/ロケット発射のアニメーション/空を見上げる三人娘/あんたのこだわり/最強の世界は自分で描くしかない/アニメーションが作りたい水崎氏/私はここにいる

論破原作

アニメ版第八話

 いよいよ、アニメ版第八話だ。この回で描かれた原作は第2巻15話のみだ。

原作(第2巻15話:大芝浜祭)
泊まり込み作業/文化祭当日、野外で朝食(三人娘)/集客プランについて(体育館のクーラーと水崎ツバメ)/没になった水崎夫婦共演作品/夫婦揃って文化祭へ/明るい場所(金森氏)/親にバレた水崎氏、バレたら困る映像研/文化祭開催/来るなら来い(水崎氏)/ロボ研と共に「今回ばかりは気合いだ!!」/宣伝する映像研/チラシを夫婦とGHQに渡してしまった淺草氏/体育館舞台袖/壇上中央に向かう水崎氏/父の依頼、母知らず/気合い入ってます(水崎氏)/ロボアニメ《作品》上映/両親の思い/観察眼と独創性/焼きそば3人分/ロボアニメ500円/焼きそば屋にて親子遭遇/私が生きること/良い演技だった/反省会(浅草氏)/DVD完売/ツバメのお友達?(夫婦)い、いえ。仲間です(浅草氏)

 では、アニメ版キーワードをみよう。

アニメ版(第八話:大芝浜祭!)
夜の部室/アフレコは間に合わなかった/音を入れた《作品》のワンシーン/音の演出/シーンが引き立ちましたな/没になった水崎夫婦共演作品/夫婦揃って文化祭へ/母、水崎氏がいないことを知る/文化祭当日、野外で朝食(三人娘)/集客プランについて(体育館のクーラー(空調部)と水崎ツバメ)/《作品》の力でDVD予約に/明るい場所(金森氏)/箸の持ち方/広告塔/親にバレた水崎氏、バレたら困る映像研/朝日に映える芝浜高校/オープニング/文化祭開催/来るなら来い(水崎氏)/気合いだ!/さまざまな客引きする様々な部活動/ロボ研の応援(段ボール水崎ロボ)/カウントダウン/ペットボトルロケット発射/水崎ツバメの集客力/芝浜高校内/22でどうだ(金森氏と空調部)/リークされたら終わりの空調部/生徒会と警備部/水崎氏を守れ(ロボアニメ上映の為)/ロボ研と警備部/段ボールを装着し走って逃げる水崎氏(金森氏指示)/撹乱する水崎ロボ/チンドン屋研究会も水崎ロボ/外部のお兄さんも水崎ロボ参加/走り逃げるロボ研小野(水崎ロボ)/覚醒する小野(オープニングを歌う)/階段を登る小野/バージョンアップするロボ小野/ロボ小野飛ぶ/小野やりきる/舞台袖の金森氏、水崎氏、ロボ研/チラシを夫婦とMIBに渡してしまった淺草氏/覚悟を決める水崎氏/ロボ研上映開始/壇上中央に向かう水崎氏/父の依頼、母の夢/気合い入ってます(水崎氏)/ロボアニメ《作品》上映/《作品》内の箸の持ち方に気付く母/生アフレコ/《作品》差し込まれるお茶/気付く観客(怪訝そう)/《作品》戦うロボ/《作品》応戦するカニ/身を乗り出す観客/あの走り方、ツバメだ(父と母)/《作品》ロボ、飛ぶ/美術部も観ている/《作品》歩くロボ/警備部も観ている/分析して再現/再現して演技より絵/観察眼と独創性の水崎氏/表現者、水崎ツバメ/スタンディングオベーション/上映終了(蛍の光)/DVD予約には特典が/連行される小野/握手会/昼飯調達に抜ける水崎氏/焼きそば屋にて親子遭遇/私が生きること/箸の持ち方と良い演技だった/用意した特典ボード全部なくなる/反省会(浅草氏)/ツバメのお友達?(夫婦)い、いえ。仲間です(浅草氏)/エンドクレジット

 第五から七話で描かれたエピソードとオリジナルエピソードが、第八話に見事に繋がっている。ロボ研《作品》エピソードは、アニメーションの醍醐味と創作に対する苦悩と喜び、「音」へのこだわり、当事者だからこそ言えること、伝えたいことなどがそこかしこに散りばめられている。中盤を担うに相応しい展開だったといえる。
 
 なお、ロボ研の原作で魅せたこだわりは、水崎ロボに変換されて飛翔した模様。

ロボ研小野アニメ

今回のまとめ

 アニメ版ロボ研エピソードは、中盤を担うに相応しい展開だった。
 

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