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ビックルがリトマス試験紙


電車の扉の溝にビックルのペットボトル。
各駅停車の電車に座る自分。
急行の乗り合わせ待ち。開け放たれた扉。
空のビックルが、扉の溝に横たわる。

ほっといたら誰か拾うかも。
乗り換えてくる人が蹴飛ばすかも。
このままだと電車の扉が閉まらなくなるかも。
などと想像する。


ホームの先に自販機が見える。
ゴミ箱は見えないが、たぶんある。
駅員さんに「落ちてました」と渡すか。
渡したら受け取ってはくれるだろう。
(落ちてた?え?自分で捨てれば?)と思われながら。
「いや、扉のココにあってですね…」なんて説明。
無益すぎるやりとり。


『まもなく急行の電車が参ります。』
アナウンスが流れる。

ふと、違う考えが浮かんだ。
この「小さな突然」に気づきながら、
無視する自分に腹が立たないだろうか。


試されている、と想像する。
どう行動するんだ?と。


席を立ってビックルを拾った。
自販機の隣、ゴミ箱に捨てた。
違う車両に乗り込む。

小さな突然の試されごとに、アクションした。
流されることに逆らった、気がした。



僅かな迷いの瞬間は、たくさん転がっている。

急に誘われた飲み会に参加するか。
小さな気掛かりを相手に言うか。
これ良いよね!と言われて、
良いと思えなかったら同意しないことを言えるか。
ごめんなさい、わかりませんでした。と素直に言えるか。

誰かには見えない、
自分にとってのリトマス試験紙は転がっている。
あのビックルは「傍観したままかお前」と試してきた気がする。



僅かな出来事。
僅かな後悔しそう、を乗り越える。

また今度、試しにこい。
ビクビクしながら、
自分が良いと思う行動をまたしてやるから。