ハロー・グッド・バイ
hello good bye
(地域情報誌フジマニ 2010年5月号 vol.48 掲載の編集長コラムから転載)
あの娘は泣き虫で/僕は弱虫さ/とっても似合いの/二人じゃないか
すっかり、春ですねぇ。今年もまた出会いと別れの季節があらわれて、たくさんのこんにちはとたくさんのさよならが咲いては散った。まるで陽気に当てられた桜の花みたいに人は出会って、風に吹かれた桜の花びらみたいに人は別れる。でも、そんな出会いひとつひとつにだって、すべて意味があるのだと思いたい。出会わなければよかった出会いなんてないのだと、おれは信じていたいんだ。
ふと気付けば流れていた、2003年に「フジマニ」を創刊してからの、この丸7年という月日。はたと振り返って思い返されるのは、この7年間に出会ったすべての人々と、すべての出会いと、すべての出来事のこと。ときには跳び上がるような喜びも、もちろん砂を噛むような思いも、なんどかは立ち直れないような辛さもあった。それでもどうにかここまで続けてこれたのは、ほんとうにたくさんの出会いのおかげだった。だからおれだけは、出会わなければよかった出会いなんてないんだと知っているんだ。
白い目で見られるのなんか/もう慣れちまったよ/だから本気で/暖めあっているんだぜ
ことを始めるのは簡単で、ずっと続けることは大変で。夢見るだけなら誰でもできて、実現させるのは至難の業で。言葉だけではなんとでも言えて、伝わるのはその生き様だけで。他にももっともっとたくさんの言葉なんかでは表せないような多くのことを教えてくれたのがこの街と、この街での出会いだった。
おれは多分、人生の大事なことすべてをこの街から教わったのだ。そしてなおこの街で同じことを続けて暮らし、生きている。根性も、学才も、天分も無かったおれに唯一さずけられたのは、この街にうまれた、ということだったのかも知れない。
この世に生まれ落ちたおれが最初に覚えている風景は、真っ青な空と海のまじりあった、辻堂か鵠沼の、ただただ広いだけの海と空。その空と海のあいだで27年間、歩いたり、駆け出したり、泣いたり、怒ったり、笑ったり、フラれたり、転んだり、落ち込んだり、愛したり、酔っぱらったり。でも、それですっきり。空と、海。それだけで、もう良かったんだな、きっと。
もとい、すっかり、春ですねぇ。フジマニにとって、8年目となる日々が始まった。今年はどんな出会いがあるんだろう。「はじめまして」「よろしく!」「こんにちは」たぶんこれからも、そんなふうに。
汚れた心しか/あげられないと/あの娘は泣いていた/きれいじゃないか(「ぼくとあの娘」RCサクセション)
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