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自然と人工

an Agricultural tribe

(地域情報誌フジマニ 2018年6月 vol.139掲載の編集長コラムからの転載です)

風が吹いたのは10 年前、ここ藤沢からだったと思う。
藤沢で株式会社みやじ豚を立ち上げた宮治勇輔さんが「きつい・汚い・かっこ悪い・臭い・稼げない・結婚できない6K 産業」である農業を「かっこよくて・感動があって・稼げる新3K 産業に」と掲げ『農家のこせがれネットワーク』というNPO 法人を立ち上げ日本全国で動き始めた。それから地域の「農業」は少しずつ、確実にカッコ良くなってきたと思う。

農は日本人のDNA に刻まれている基本的な能力だと思う。おいしくて、さらに身体をつくる農産物を作る能力。かつて武士も、僧侶も、必要に迫られたときには畑を耕し、野菜を植えた。はたまたニューカレドニアでは、日本人の移民が現地農業の礎を作った。大きな船を作って海を渡るとか、派手な芸術作品を作ることより地味かもしれないけれど、実は大切で愛すべきそういう能力が、僕らの中にはきっとある。

時流が追いつき、「農」が再度見直され、就農者も増え始め、そしてやってきたのは次のフェーズだ。「農」の正しさというか、真価を問われるというフェーズだ。輸入か、国産か。または有機栽培か、農薬を使っているか否か、そして、遺伝子組み換え作物かどうか。アレルギーのように何が毒になり何が薬になるかはわからない。万人に問題がない結論をということじゃなく、自分と家族にとっての、最善を選びたいと思う。味や匂いや形でわからない部分を選ぶという、無理難題を突きつけられていると感じる。でも、生きるとはつまり、そういうことなのだろう。

『自然と人工の最大の違いは、自然とはあらゆる可能性を秘めた最良の結果であり、人工には計り知れない気付かない点までカバーしているという事ではないだろうか。(「世界の終わり」より引用)

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