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事務でありながらも医療の現場の空気や課題を目の当たりにした8年間

■自己紹介■

40代主婦です。学校を卒業して8年間医療機関で事務の正社員として働きました。その後上京して派遣や非常勤などで大手企業、広報誌の制作、診療所受付、審査支払機関、講師業、単発で座談会のバイトなど経験。

しかしその結果、現在無職。
今後の身の振り方を模索しながら過去の経験を振り返っています。

私が新卒で入った診療所。

24時間365日体制のクリニックは小児科、内科を標榜していた。

院長には断らないという信条があるので様々な患者さんが来院した。

しかし、外科の患者さんをしっかり処置できる環境が整っていないので重度の患者さんは地域の別の病院に紹介をした。

朝方に消防団の方が野犬に噛まれたとか、職場の飲み会で急性アルコール中毒になったとか、子どもが鼻の穴にピーナッツを入れてしまい取れないとかいう救急もあれば

熱性痙攣、てんかんの発作、喘息の発作など親御さんが真っ青になり突然駆け込んでくるケースもある。

医療事務の仕事は、まず受付して患者さんの名前を確認する。カルテを出し、または新規カルテの作成をしてカルテを医師のもとへ持っていくのが真っ先にやることだった。

時々、親御さんがあわてて患者である子どもの名前を言うのではなく自らの名前を言ってしまうこともある。カルテを出してみて生年月日が大人であり気がつくこともあった。
とにかく、スピーディーでありながら冷静さを忘れないように心掛けた。

診療所にかかってくる電話を真っ先に取るのも医療事務の仕事だった。

事務的なことはもちろん、症状を言われ「受診した方がいいか」という問いや薬の飲み方や急病の対処の仕方など悩み相談の電話も多かった。要点をまとめて聞き、看護師や医師に確認し伝える。パイプ役になるのだが毎日のようにやっていると自分が医師か看護師になったかのような錯覚にも陥るが決して事務の立場を忘れてはならない。

救急車からの受け入れ要請だけは有無を言わさず医師に直接繋いだ。

救急車の受け入れが決まると空気が少しピリッとする。事務員は入り口を搬送されやすいよう広くあけて、来院されたらまず付き添い者を捕まえる。保険証を受け取り患者さんの名前と生年月日を確認する。新規の場合は急いでカルテを作成する。

時には残念な結果となり搬送されても間に合わないこともある。

保育園の昼寝中に児童が息をしていない、と運ばれてきたことがあった。残念ながら運ばれてきたときには既に亡くなられていた。

安置する病室前の廊下で担当していたと思われる保育士さん達が、土下座をして泣いていた。部屋からは連絡を受けてから駆けつけたご家族が泣き叫んでいた。とんでもなく辛く見ていられない光景だった。

小児科の医師がぽつんとつぶやいていた言葉を覚えている。

「どんな患者さんの死もつらいけど特に小児科で経験する死はつらすぎる。辞めたくなる。」

と言っていた。小さな身体が冷たくなっていく姿は本当に痛ましい。だからこそ、些細に思える問い合わせや来院にも慎重に対応しなければならない。もちろん大人も子どもも同じであるが子どもは急変が早いことが多いと聞いた。

24時間365日体制の診療所だからこそ目にする悲惨なことも多かったし学ぶこともたくさんあった。事務でありながらも医療の現場の空気や課題を目の当たりにした8年間だった。


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