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肩の安定化-知っておきたい3ヶ条-肩甲帯の基礎動態・評価・介入ポイント

どうも肩関節機能研究会の郷間です。
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今回は肩関節疾患に従事するすべてのセラピストに伝えたいことを1つの記事にしました。

というよりも2021年の集大成をまとめたものです!

本記事では肩関節の安定化についてお話していきますが、その前に基礎知識として肩の構成物広義・狭義の肩関節について解説していきたいと思います。

肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨、胸郭から構成されている関節です。


肩関節は広義および狭義の肩関節に分類され、広義の肩関節には
・肩甲上腕関節
・第二肩関節
・肩甲胸郭関節
・胸鎖関節
・肩鎖関節
・烏口鎖骨機構 *があります。

ではこれら6つの関節の中で1つだけ狭義の肩関節があるのですが、それはどの関節でしょうか?


おそらく皆さんが思った通りで、狭義の肩関節とは肩甲上腕関節のことを指します。

私の記事でも過去に肩甲上腕関節や第二肩関節に関する内容を数多く執筆してきましたが、広義の肩関節に分類される肩甲胸郭関節、胸鎖関節、肩鎖関節ついて詳しく執筆したことはありませんでした。

そのため、本記事では緑枠の肩甲帯(肩甲胸郭関節、胸鎖関節、肩鎖関節)に関する基礎動態、評価ポイント、介入ポイントについてまとめさせていただきました。

また、本記事は12月16日㈭に開催した
肩関節機能研究会主催オンラインセミナー【肩の安定化 知っておきたい3ヵ条】を記事化したものになります。
350名以上が参加された当セミナーに参加を逃してしまった人や文章でもう一度確認したいという人におすすめの記事となっております。

本記事をきっかけに、読者様の臨床視野が少しでも広げられれば幸いです。

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では早速本題に入っていきましょう。



①肩の3つの安定化機構


✓第1の安定化機構 -骨構造-

第1の安定化機構は肩甲上腕関節を構成する上腕骨頭と肩甲骨関節窩からなる球関節構造です。
上腕骨は球状を呈しており、関節窩は凹面を形成しています¹⁾²⁾。

もし関節窩が凹面を形成せず、平面だとしたら骨頭は関節窩上を円滑に動くことができず、脱臼しかねません。


このような骨頭と関節窩の関係は”ゴルフボールとティーの関係性”によく似ています。

また、球関節は単一の運動ではなく、4つの運動が複合的に生じて円滑な関節運動を行う特徴があります¹⁾。


これらの運動は必ず抑えておきましょう。

では具体的に球関節はどのようにして複合運動が生じるのでしょうか?


このように屈曲-伸展、内転-外転、内旋-外旋運動はそれぞれの運動が複合的に生じています。

もう少し具体的に解説していきます。


前額面から肩甲上腕関節の内外転運動を確認してみましょう。
一見すると転がり運動だけのように見えますが、よく見ると外転時には骨頭が下方に、内転時には骨頭が上方に滑っているのが確認できます。

これは内外転運動において転がりと滑りの複合運動が生じていることを意味します。

ここからわかることは、外転時には骨頭が下方に滑るため、それを安定させるための下方軟部組織の張力(骨頭求心力)と許容するだけの柔軟性が必要であるということです。

結局、骨構造による特徴的な運動であっても、軟部組織が関与してくるということがわかります。


ということで第1の安定化機構-骨構造のまとめ-です。



✓第2の安定化機構 -軟部組織-

第2の安定化機構は軟部組織です。
軟部組織には筋肉(腱板筋)、関節包、関節唇などがあり、第1の骨構造の安定化の補助を担っています³⁾。

理学療法士の私が骨構造自体を変えることはできませんが、軟部組織の機能改善が責務と考えています。

第1の安定化機構の項で、骨構造による安定化という視点から軟部組織の重要性について解説しましたが、本項ではさらに詳しく骨と軟部組織の関係性を解説していきます。

肩甲上腕関節は球関節です。
そしてもうひとつ、身体で有名な球関節が股関節です。

同じ球関節。
ですが2つの関節は似て非なる関節です。

具体的には
肩関節=上腕骨頭>関節窩(ボール>ティー)
股関節=大腿骨頭<寛骨臼(ボール<ティー)
このようにボールとティーの関節面の比率が肩関節と股関節では真逆になります。


ここで、肩甲上腕関節の実際のサイズ比に関する報告を紹介します⁴⁾。

このように日本人健常成人の肩関節形態は骨頭が大きく、関節窩が小さいです。
さらに、男性・女性ともに値は比較的均一で身長と比例し、左右の肩関節の比率は相関します。
また欧米に比べて全てのパラメータが小さいのですが、これは日米の平均身長の違いも関与していそうですね。


信原先生の書籍に記載されていた肩関節形態も比較的同じようなサイズ比となっています¹⁾。

大まかな計算ですが骨頭:関節窩=3:2という結果です。


ここまでの内容から考えられる肩甲上腕関節の構造上の利点と欠点をまとめると

‐利点‐
人体で最も大きな可動域を有しており、手を広い範囲でかつ自由に使える

‐欠点-
骨構造だけでは安定性が乏しく一番脱臼しやすい。

これらのことから肩関節は骨以外の要素で支えなければならず、その骨以外の要素が”筋肉”と”靭帯”であるということがわかります¹⁾²⁾³⁾。


では筋肉や靭帯の基礎的な知識で大切なことは何でしょうか?
起始停止、作用、支配神経、栄養血管、組織学…

言ってしまえば全て大切ですが、ポイントとしては
”どこに何が付着して、どう走行するのか”だけでも理解できると臨床でイメージしやすくなるので、肩関節に苦手意識がある方はまずは”付着部と走行”だけでもいいので覚えちゃいましょう。


緑枠は腱板筋群です。
✓上方に棘上筋
✓後方に棘下筋
✓後下方に小円筋
✓前方に肩甲下筋

赤枠は関節上腕靭帯です。
✓前上方に上関節上腕靭帯
✓前方に中関節上腕靭帯
✓前下方に前下関節上腕靭帯
✓後下方に後下関節上腕靭帯

そして前上方の脆弱な腱板疎部には上腕二頭筋長頭腱(橙色)、下方の腋窩陥凹には上腕三頭筋長頭腱(橙色)が位置し関節の安定性を担っています。

肩関節(肩甲上腕関節)は骨構造だけでなく、軟部組織も機能して安定していることがわかりますね。

第2の安定化機構-軟部組織のまとめ-をしていきます。


✓第3の安定化機構 -肩甲骨機能-

最後の安定化機構である肩甲骨機能について解説します。
本項からは本記事のメインテーマである肩甲帯の内容となっております

第1,2の安定化機構では骨頭:関節窩=3:2の関係で、骨頭が大きく、関節窩が小さいため、骨構造の欠点である脱臼のし易さを軟部組織の機能が補い肩を安定させるという解説をしました。

しかし、肩関節は骨構造と軟部組織だけでも関節を安定させることは困難であり、肩甲骨機能も必要となります²⁾。

そこで重要になるのが肩甲骨の追従性です。


上スライドの解説をします。
赤線が骨頭の関節面、青線が関節窩の関節面です。
左の写真を見ると骨頭に対して関節窩が小さく、骨頭下方の関節面が肩甲骨に面していないのがわかります。

そこで右の写真のように肩甲骨が上方回旋することで、関節窩の関節面(機能的関節窩)が広がり、骨頭が安定します。

これを機能的関節窩といいます。

水平面からも見てみましょう。
水平面では肩甲骨が内転-外転、内旋-外旋することで肩の動的安定化に寄与します。


こういった追従現象は通常、無意識に生じるものです。
しかし反復性肩関節脱臼例等は脱臼不安感から肩甲帯を固めてしまい、肩甲帯の動的機能(追従性)が機能せず、不安定性を助長します。

肩甲骨(肩甲帯)の機能がいかに重要か、ということがわかります。


このあたりで第3の安定化機構-肩甲骨機能のまとめ-をしていきます。

②肩甲帯の基礎動態と評価のポイント

ではここからが本記事のメイン中のメインです。

第3の安定化機構で肩甲骨機能の重要性についてお話ししましたが、そもそも肩甲骨はどのような動き(動態)をするのでしょうか?


✓肩甲骨動態の定義

肩甲骨は挙上/下制、内転/外転、前傾/後傾、上方回旋/下方回旋、内旋/外旋の5種類2パターンの動きがあり、これらは一次元的な動きではなく、複合的かつ三次元的に動きます。

これら5種類の動きが2パターンあるので、2⁵=32パターンあるということがわかります。
32パターン全ての動きを暗記するのは難しいことのように感じますよね。

しかし、挙上/下制、内転/外転、前傾/後傾、上方回旋/下方回旋、内旋/外旋の動きをそれぞれ分解し、評価することができれば、実はそこまで大変なことではありません。


本項を読み終える頃には肩甲骨運動もスムーズに理解し臨床に落とし込むことができると思います。

では、ここからは肩甲骨の具体的な動態を紹介していきたいと思います。
肩甲骨の運動には2つの軸がありますので、それぞれ分けて解説していきます。

”2つの軸”というのは胸鎖関節軸と肩鎖関節軸です。

胸鎖関節軸:胸骨柄の鎖骨切痕と鎖骨の胸骨端からなる
肩鎖関節軸:鎖骨の肩峰端と肩甲骨の肩峰からなる


では早速、肩甲骨の各運動がどちら側の軸から起きているのかを確認しながら見ていきましょう。


 ・胸鎖関節が軸の肩甲骨動態

まずは胸鎖関節が軸となる運動から確認していきましょう。


胸鎖関節が軸の肩甲骨動態は挙上/下制、内転/外転があります⁵⁾。

では実際の動態をスライドでそれぞれ確認していきましょう。

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