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K・リンチ『都市のイメージ(新装版)』(丹下健三・富田玲子訳)(2007年)を読んで。

▮読後感

大学院(京都芸術大学大学院学際デザイン領域)の課題レポートを作成する過程で読んだ本。教員がこの本を薦めていた。

一言でいえば、都市デザイン、都市計画の古典。都市をイメージとして捉えるために5つのエレメント(パス、ノード、エッジ、ランドマーク、ディスリクト)に分類し、意味づけとは別に構造として、景観形成やそこに住む人自身がどのようにそのまちを捉えるかを考えるための概念を提唱しています。

多くの都市計画の考え方に影響を与えている不朽の名作の感。もう50年以上前の本ですが、内容はいまでも読むに値するのかなと思いました。(文章はちょっと読みにくいし、字が小さい・・)

都市計画に携わる方は読んでおいて間違いはないのではないでしょうか。
以下、備忘録として付箋を貼った個所をまとめておきます。
専門知識や興味関心なく読むと、さっぱり分からないと思います。解説文は分かりやすいかなと思いますので、そこから読み始めるといいかもしれません。

▮気になった個所(付箋を貼った個所)

・ここでイメージアビリティimageabilityとでも呼ぶべきものの定義が必要になる。これは物体にそなわる物質であって、これがあるためにその物体があらゆる観察者に強烈なイメージを呼びおこさせる可能性が高くなる、というものである。それは、あざやかなアイデンティティと強力なストラクチャーをそなえた非常に有益な環境のイメージをつくるのに役立つ、色や形や配置などである。単に見えるというだけではなく、鮮明にそして強烈に諸感覚に訴えるという高度な意味においてならば、イメージアビリティは、わかりやすさlegibilityとか見えやすさvisibilityと呼ばれてもよいだろう。(p12)

・イメージの強さは、そのランドマークとなんらかの連想とが一致していれば、さらに増大する。もしある独特な建物が歴史的事件の現場であったり、明るい色彩のドアが、実はあなた御自身の家のドアであったりすれば、その建物やドアは、それでこそはじめて正真正銘のランドマークとなるのである。名前を付けるだけのことでも、その名前が広く知られ、受入れられるようになってしまえば、効力を発する。たしかに、環境を意義深いものとすることを望むならば、このように連想とイメージアビリティとを一致させることが必要なのである。
単独で存在するランドマークは、よほど支配的なものでない限り、それ自体では不十分な参考物にしかならないことが多い。そうしたランドマークを識別するには、かなりの注意力を必要とする。しかしいくつかのランドマークが群になっていれば、互いに強化し合ってそれぞれの強さを加算したもの以上に強くなる。(p127-128)

・イメージの発展にとって、見られるものを造り直すことばかりでなく、見るための教育をおこなうことも非常に重要である。実に、この両者は、円の過程、あるいはらせんの過程をつくりあげることも期待できるのである。つまり視覚的な教育によって市民は視覚的世界に生きるようになるのである。都市のデザインの芸術が高度に発展するかどうかは、批判力をもつ注意深い聴衆が誕生するかどうかにかかわっている。もし芸術と聴衆がともに成長するならば、われわれの都市はそのときこそ、その数百万の住民の毎日の生活を楽しくする源泉となることができるであろう。(p152)

・「都市は、人々にイメージされるものである」ということである。リンチは、「イメージされる可能性」を「イメージアビリティ」と名づけ、これを高めることこそ、美しく楽しい環境にとって、最も重要な条件であるという大目標をかかげながら、「イメージは、アイデンティティ(そのものであること)、ストラクチャー(構造)、ミーニング(意味)から成り立つが、最初の2つは、形そのものがもたらすものであり、あとのひとつは、社会的、歴史的、個人的、その他もろもろの要因から生まれるものであるから、これらは、2つの独立した領域として考えられる。そして、前者に集中して形そのもののイメージアビリティを追求することも、可能であり価値があることである」という思い切った宣言をしているのである。つまり彼は「内的秩序を表す形態をつくること」を主張している人々に対して、「形態そのものが人の心に強くやきつくようにすること」を強調しているわけである。(「解説」p243)


◇プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 共同創業者
1978年10月生まれ、滋賀県出身の43歳。2003年に若年者就業支援に取り組む会社を設立。2011年に政治行政領域に活動の幅を広げ、地方議員として地域課題・社会課題に取り組む。3期目は立候補せず2020年に京都で第二創業。2021年からSOCIALXの事業に共同創業者として参画。現在、社会課題解決のために官民共創の橋渡しをしています。
京都大学公共政策大学院修了(MPP)。京都芸術大学大学院学際デザイン領域に在籍中。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。

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