藤井秀昭

京都産業大学経済学部教授。 専門分野はエネルギー経済学,環境経済学。 博士(エネルギー…

藤井秀昭

京都産業大学経済学部教授。 専門分野はエネルギー経済学,環境経済学。 博士(エネルギー科学)(京都大学)。 脱炭素とエネルギー政策の研究に取り組む一方で,大学の専門教育及びキャリア教育を通して,GX人材・サステナ人材の養成に取り組んでいる。作家。63歳。

最近の記事

いつまで続くガソリン等補助金で,上昇志向が空々しく聞こえる日:2024年11月3日(日)

世の中は,いつから,こんなにもつまらないものになってしまったのだろうか。「上昇志向でありたい」という言葉が,何か空々しく聞こえてくるようだ。  燃料油価格激変緩和措置としてのガソリン等補助金は,これまでに数々の期限延長が繰り返され,この年末時点で2022年1月からの累計で約7兆円に達する見込みだ。さらに,延長する雰囲気さえも漂っている。この国では3年以上も緊急時が続いているのか。きっと,このまま行くと,ずっと緊急時になるのかもしれない。石油元売会社は,笑いが止まらないのでは

    • 今年の京都の秋の紅葉の見頃時期:2024年11月2日(土)

      京都嵐山(京都市右京区)の今年の秋の紅葉の見頃の時期は,「勤労感謝の日」の11月23日頃だろうとの情報が,一昨日の10月31日にNHK京都放送局の番組で報道された。おおよそ例年並みの時期だということである。  京都市の中でも,秋の紅葉の見頃の時期は場所によって多少のばらつきがあるが,例年11月中旬から12月上旬あたりが見頃の時期である。上の写真は,ずいぶん前に撮影したものである。今から14年前の2010年11月13日に南禅寺法堂の前で撮影した。当時76歳の故郷の母が京巡りを

      • くらま温泉の復活:2024年11月1日(金)

        「くらま温泉」(京都市左京区)が,本日の2024年11月1日(金)に,リニューアルしてグランドオープンする。個人的な気持ちだが,復活に貢献された京都西陣伝統工芸士の岩本一樹氏をはじめ鞍馬温泉再建プロジェクトチームに感謝したい。凄いことだと思う。  コロナ禍の営業自粛の影響と台風豪雨による叡山鉄道の不通の影響で,惜しまれるなかで2021年春に「くらま温泉」が閉鎖された。「くらま温泉」は,叡山電車(叡山電鉄)鞍馬線の終着駅「鞍馬」を降りて,さらに鞍馬の山の奥にあり,露天風呂の峰

        • 仮説検証:2024年10月31日(木)

          世の中においてメディアを通して流れている情報は,事実の情報と仮説的な情報が混在している。一方,事実の評価に関するもののほとんどは仮説であると言って良い。別に,仮説が悪いと言っているわけではない。常に,耳に入ってくる情報を鵜吞みにするのではなく,一定の距離と時間を置いて,冷静に自分の頭で検証する癖が必要だということだ。この仮説検証の習慣の必要性は今日益々重要になっているように思う。  かつて,日本の大学入試は,知識詰込み型教育の成果を測ることに重点を置いた選抜制度だと言って批

        いつまで続くガソリン等補助金で,上昇志向が空々しく聞こえる日:2024年11月3日(日)

          手づくり市:2024年10月30日(水)

           ものづくりは大切にしたい。京都市では,毎月どこかで「手づくり市」が開催されていて,こうしたイベントがポストコロナ禍のなかで拡がりつつあることは大変良いことだと思っている。  「上賀茂手づくり市」は上賀茂神社で毎月第4日曜日に開かれている手づくり市であり,今月は10月27日(日)に開かれ,大変賑わっていた。10月6日(日)には,京都府立植物園の近くで北山駅のそばにある京都府立・陶板名画の庭で「北山クラフトガーデン」が開催された。会場である「陶板名画の庭」は有名建築家の安藤忠

          手づくり市:2024年10月30日(水)

          METIが太陽光発電事業のM&A推進:2024年10月29日(火)

          経済産業省(METI)が太陽光発電事業の一部の事業者に,他の太陽光発電事業者を合併・買収(M&A)しやすくなるような支援制度を検討し,これについて審議会で議論することが明らかになった。  2012年7月から経済産業省は再生可能エネルギー全般を対象に固定価格買取制度(FIT,Feed-in Tariff)を導入した。これに先立ち,2009年11月より,住宅用に限り太陽発電の余剰電力を固定価格で買取する制度を始めてきたが,この買取期間が10年間と定められていたため,2019年1

          METIが太陽光発電事業のM&A推進:2024年10月29日(火)

          大卒3年以内の離職率34.9%が示唆すること:2024年10月28日(月)

          10月25日に厚生労働省が「2021年3月卒業の大学新卒の就職者の34.9%(約3人に1人の割合)が3年以内に離職した」と公表した。この離職率は過去15年間で最も高い水準だという。  2021年と言えば,コロナ禍で希望する就職先に就職できなかった人が多かったことによる影響も部分的にはあるのだろうが,約3人に1人の割合で3年以内に離職しているともなると,新卒者の離職率上昇の背景には,雇用者と被雇用者の双方に原因があるのではなかろうか。  雇用者側においては,①自社に相応しい

          大卒3年以内の離職率34.9%が示唆すること:2024年10月28日(月)

          人工知能が人間関係を完全に代替することはない:2024年10月27日(日)

          情報や画像は生成AIで生成できるようになり,その精度の高まりは日進月歩だ。むしろ,一部の分野では人間の所作能力を遥かに超える領域・水準に到達している。  人間が生成AIを活用すればするほど,生成AIの能力は増強されることになるだろうが,従来,人間の脳と身体が獲得してきた能力が低下していく部分も必ず生じるだろう。そうした意味で,人工知能の発達は人間の一部の能力を代替していくことになる。生成AIを上手く利用することにより,生成AIの発達と人間の共存が,トータルで観て,人間の幸福

          人工知能が人間関係を完全に代替することはない:2024年10月27日(日)

          同時代を生きる:2024年10月26日(土)

          国連環境計画(UNEP)が「2023年の世界全体の温室効果ガス排出量が過去最高の571億トン(前年比1.3%増)を記録した」と公表した。2050年までにカーボンニュートラルを実現するには温室効果ガス排出量を削減しなければならないはずなのに,逆に,増え続けている。おかしくないか。  2023年の世界全体の温室効果ガス排出量の571億トンのうち,中国が160億トン,アメリカが59億トン,インドが41億トン,EU(欧州連合)が32億トン,ロシアが26億トン,日本が11億トンだとい

          同時代を生きる:2024年10月26日(土)

          銅線窃盗事件の報道方法を観て思うこと:2024年10月25日(金)

          最近,どうも「日本国内におけるマスメディアの報道方法が変だ」と思うことが多い。自分が歳をとったせいだろうか?  テレビ,ラジオ,インターネットなどでニュースを見たり聞いたりしていると,「一般の受信者に何を伝えようとしているのか」という観点から,情報発信者が発信目的と発信による効果をきちんと考えて行動しているのかについて疑問に思うことがある。  たとえば,2024年10月18日に,次のような内容の事件が報道された。「タイ人“銅線窃盗”グループ4人を逮捕 被害総額1億円超か

          銅線窃盗事件の報道方法を観て思うこと:2024年10月25日(金)

          扇子の応援客:2024年10月24日(木)

          1985年に私は大学を卒業して都市銀行に入行した。日本橋支店に配属となった。忙しい営業店舗だった。五十日(ごとおび)の日の銀行の営業店業務はとりわけ戦闘現場のように殺気立って多忙を極めていた。五十日というのは,毎月5日,10日,15日,20日,25日,30日のように5と10の付く日(5の倍数の日)のことをいい,給料支給日や決済日などが集中する日である。  五十日の営業店業務は銀行の窓口で働く人,後方記帳係,為替係,資金係の人は,お互いの声が聴こえないほどに四方八方に指示する

          扇子の応援客:2024年10月24日(木)

          プラスのストローク:2024年10月23日(水)

          キャリア教育科目の最初の授業のほうに必ず登場するキーワードに「プラスのストローク」というのがある。人と温かく関わることの重要性を教え,具体的なコミュニケーションスキルを教える単元である。  日常生活で言葉や態度で「プラスのストローク」を継続して実行するのは容易ではない。常に「プラスのストローク」に配慮していることは,結構,疲れるものである。関わる人にエネルギーを与えるには,自分のなかに余剰となるエネルギーがないと,自分のほうがエネルギー不足の状態に陥ってしまうことになるかも

          プラスのストローク:2024年10月23日(水)

          インフレ下の賃上げは所得格差を拡大させるだけ:2024年10月22日(火)

          政治家たちの経済オンチは今に始まったことではないが,「失われた30年」の間,金融財政政策の舵取りは「何もしないこと」が良しとされてきた。デフレが続く限り,名目賃金の上昇がなくても実質賃金はそれほど大きく下がらずに済んだからだ。  ところが,いったん物価が上昇し始めると,「デフレ脱却」に成功したと名乗りを挙げる政治家たちは,「物価上昇率を上回る『賃金』上昇率を確保することが重要な経済政策だ」として政治公約の筆頭に臆せずに掲げるようになった。  しかし,よくよく考えてみてほし

          インフレ下の賃上げは所得格差を拡大させるだけ:2024年10月22日(火)

          研究と教育:2024年10月21日(月)

          最近,少々,鬱(うつ)状態だ。私は29歳の頃に,当時の(社)日本経済研究センターに1年間研修のために出向をさせてもらったことがある。日本経済予測の部門で短期経済予測を担当させていただく機会を得た。2年間研修コースと1年間研修コースの2つのコースがあり,いずれも日本経済研究センターの法人会員となっている企業から研修生として送り込まれてくる。私は1年コースで研修目的で出向させてもらった。  東京都中央区日本橋茅場町にあった,当時はインテリジェントビルと呼ばれていた日本経済新聞社

          研究と教育:2024年10月21日(月)

          名目と実質:2024年10月20日(日)

          大学の経済学部の低学年の学生でも,「名目賃金と実質賃金,名目国内総生産と実質国内総生産,などにおける『名目』ベースと『実質』ベースの値の変動が異なる」ことが理解できていない学生に出会うことが,残念ながら,時々ある。  言うまでもなく,その要因は物価変動にある。分かりやすく説明するために,数量を一定と仮定すると,物価が上昇すれば,名目値は大きくなり,実質値は小さくなる。逆に,数量が一定のもとで,物価が下落すれば,名目値は小さくなり,実質値は大きくなる。現実では数量が変動するわ

          名目と実質:2024年10月20日(日)

          宇宙太陽光発電:2024年10月19日(土)

          松本紘先生(国立研究開発法人理化学研究所初代理事長)が京都大学総長を務めておられた2011年に,先生は『宇宙太陽光発電所』(ディスカバー・トゥエンティワン)という書籍を出版された。松本先生の専門分野は宇宙科学,宇宙電波工学である。それから13年が経過し,一昨日(10月17日),京都大学宇治キャンパスで,宇宙太陽光発電(SSPS;Space-based Solar Power Systems)に不可欠なマイクロ波による送電実験が行われ,2045年以降の実用化を目指す段階までやっ

          宇宙太陽光発電:2024年10月19日(土)