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最新の論文をご紹介 発芽そば発酵エキスの併用で間質性膀胱炎の病状が改善

8月10日、『機能性食品と薬理栄養』の最新号に投稿した「発芽そば発酵エキスの排尿障害に関する機能性」という論文が公開されました。間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療に発芽そば発酵エキスを加えると、病状のスコアや痛みなどの各種症状に改善が見られることを報告。試験に参加した患者さんに満足度を尋ねた結果では、18人中16人から「よい」以上の回答が得られています。

新芽×発酵、“発芽そば発酵エキス”の概要

常務の前島です。日本機能性食品医用学会より8月10日に刊行された『機能性食品と薬理栄養』の最新号(Vol.14 No.7)に、「発芽そば発酵エキスの排尿障害に関する機能性」と題する論文を投稿しました。投稿者には、私のほかにも坂本貞昭先生(敬愛会中村病院・大分県別府市)、影山慎二先生(かげやま医院・静岡市)、山田静雄先生(静岡県立大学大学院薬食研究推進センター)が加わっています。

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私たちは、「皆様の健やかな暮らしをサポートしたい」という信念のもと、発芽そば発酵エキスの改良や学術的な研究を続けてきました。公開された論文は一つの成果です。今回の記事では、発表されたばかりの論文のポイントを簡単にご紹介します。

発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を乳酸菌で発酵して得られるエキスです。原料には、不二バイオファームで水耕栽培しているそばの新芽を用いています。洗浄したそばの種子を暗室内に一晩置くと、発芽が始まります。それを培地に播種して、1〜2日ほどかけて5〜10mmに発芽させたところでビニールハウスにせり出すと、新芽はおよそ7日で100〜120mm丈に成長します。日光をよく当てて昼夜の寒暖差の環境を作ることで、茎はきれいなピンク色へと変化していきます。

そばの新芽と茎を搾汁したものが、そばの新芽の青汁です。一旦冷凍した青汁を解凍するタイミングで、乳酸菌を添加して発酵を進めていきます。発芽そば発酵エキスが完成するのは、およそ10日後。とろみのある赤黒い液体と緑色の液体に分離していた青汁ですが、発酵後にはとろみはなくなり、色も鮮やかなルビー色へと変化していきます。

発芽そば発酵エキスには、特徴的なフラボノイドを含むポリフェノール類やアミノ酸などが含まれています。本能性高血圧のラットを対象とする実験では、発芽そば発酵エキス1%餌料によって血圧の上昇を有意に抑制できることが確認されています。

また、身近な愛用者からは、花粉症や喘息などのアレルギー性の症状が改善したという報告を受けています。アレルギー症状を引き起こす「ヒアルロニダーゼ」という酵素の働きを阻害した結果と考えられています。ヒアルロニダーゼ阻害の効果を検証したところ、発芽そば発酵エキスには、そばの新芽の青汁の7倍の活性があることがわかっています。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に対する発芽そば発酵エキスの有効性を見出したのは、酒本先生です。大分県別府市にある中村病院で実施された試験では、発芽そば発酵エキスを摂取した11人中9人に症状の改善が認められました。2014年のことです。この報告を受けて、静岡県立大学大学院の山田静雄先生との共同研究が始まりました。

共同研究では、発芽そば発酵エキスの排尿機能に対する作用を検証するために、シクロフォスファミドという薬剤で膀胱炎を誘発したラットを用いて実験を行いました。ラットの排尿機能に対する発芽そば発酵エキスの作用を検討した結果、体重1 kgあたり300mgの発芽そば発酵エキスを摂取していたラットの排尿回数は有意に減少して、排尿間隔と1回あたりの排尿量が有意に増加するという結果が得られました。摘出膀胱に電気刺激を与えて収縮力を測定する実験では、ケルセチンとケラシアニンが異常収縮を抑制することを確認しています。

病状を示すスコアが改善、満足度も9割

実際に、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんを対象とする試験も実施。静岡県立大学大学院薬食研究推進センターが中心となり、中村病院の酒本先生とかげやま医院の影山先生の協力のもと、試験には両院から10人ずつ、計20人(内2人ドロップアウト)の患者さんが参加しました。発芽そば発酵エキスの入ったソフトカプセルを1日4粒、12 週間摂取してもらうという内容の試験です。

試験では、0週、4週、8週、12週で来院してもらい、自覚症状質問票にてOABSS (過活動膀胱症状)、IPSS((前立腺肥大症およびそのほかの下部尿路症状質問票)、 OABSS-Bother(過活動膀胱困窮度)、間質性膀胱炎症状スコア、間質性膀胱炎問題スコア、VAS (自覚している痛みの程度を示すスコア)、患者さんの印象、排尿回数(昼間、寝てから朝まで)、最大我慢尿量(4週ごとの受診前に紙コップで計測) を測定しました。

その結果、昼間排尿回数、夜間排尿回数、間質性膀胱炎症状スコア、間質性膀胱炎問題スコアで有意な改善が認められました。さらに、痛みを評価するVASのスコアも改善。患者さんからの印象は、「とてもよい」が1例、「よい」が 15 例という回答で、「よい」以上の評価は18人中16人という結果となりました。

私たちは、発芽そば発酵エキスは間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療の助けになると考えています。有効成分やメカニズムなどを明確にするために、さらなる研究を続けていく方針です。

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