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アスタキサンチンのレビュー論文をご紹介 健康効果の鍵は抗酸化作用と抗炎症作用

不二バイオファームでは、アスタキサンチンを主な原料の一つとするアスタニンを製造しています。抗酸化作用と抗炎症作用のあるアスタキサンチンは、炎症を伴うさまざまな疾患の改善に役立つ可能性が報告されています。2022年に発表された論文では、糖尿病、アルツハイマー病・パーキンソン病、神経因性疼痛、腎・肝保護効果、炎症性腸疾患、動脈硬化、ドライアイ、アトピー性皮膚炎などの研究情報が整理されています。

抗酸化作用と抗炎症作用による健康効果

学術顧問の望月です。前回の記事では、アスタニンを日々のトレーニングに取り入れている佐野力也さんの話をご紹介しました。佐野さんは35歳で肉体改造のためにジョギングなどの運動を始め、49歳になった今でも全国各地で開催されるトライアスロンの大会に積極的に挑戦。2022年5月に横浜で行われたオリンピックディスタンスでは、自己ベストを更新したそうです。

佐野さんが2015年から飲んでいるアスタニンは、アスタキサンチンを主原料の一つとするサプリメントです。今回は、『Biomedicine & Pharmacotherapy』に投稿された「Anti-inflammatory action of astaxanthin and its use in the treatment of various diseases」をもとに、アスタキサンチンの研究領域をあらためて整理していこうと思います。このレビュー論文が発表されたのは、2022年のことです。

結論を先にお伝えすると、レビューは、「アスタキサンチンは炎症性シグナル伝達経路を調節し、炎症性サイトカインの発現を抑制する」「アスタキサンチンは慢性炎症性疾患の治療の助けとなりうる」「炎症を調節することによって、アスタキサンチンは皮膚や胃腸の病気、動脈硬化などに対する保護効果を発揮する」「アスタキサンチンは免疫システムを強化する可能性がある」とまとめられています。

アスタキサンチンの機能性の柱となっているのは、強力な抗酸化作用と抗炎症作用です。本文では、糖尿病、アルツハイマー病・パーキンソン病、神経因性疼痛、腎臓・肝臓、炎症性腸疾患、動脈硬化、ドライアイ・アトピー性皮膚炎のほか、臨床試験という項目が立てられています。くわしいメカニズムは割愛しますが、それぞれの項目について簡単にご紹介していきましょう。

アスタキサンチンの抗炎症メカニズム。多くの急性期タンパク質(APP)、誘導酵素、ケモカイン、サイトカインなどの炎症性バイオマーカーは、アスタキサンチンによって調節される標的遺伝子である。炎症性分子に加えて、アスタキサンチンはPI3K/AkTおよび核因子赤芽球2様2(Nrf2)シグナル伝達経路を促進できるが、NF-κB、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2)、c-JunN末端キナーゼ(JNK)、p38 MAPK、およびJAK-2/STAT-3シグナル伝達経路をブロックし炎症を軽減する。赤い矢印は抑制作用を示し、黒い矢印は増強作用を示す。過去記事参照

炎症を伴う疾患の改善に期待

●糖尿病
慢性的な高血糖を引き起こす糖尿病は、酸化ストレスと炎症を伴う疾患です。アスタキサンチンは炎症を抑制して微小血管を保護することで、糖尿病網膜症や糖尿病神経障害といった合併症のリスクを下げることがわかっています。微小血管のほか、心血管障害に対する予防効果も報告されています。

●アルツハイマー病・パーキンソン病
アルツハイマー病のモデルラットを使った実験では、アスタキサンチンによって認知機能が改善することが確認されました。DHAによるアシル化という工程を経たアスタキサンチン(DHAアシル化ASTエステル)は、酸化ストレスを調節して神経炎症を軽減することもわかっています。

アスタキサンチンやDHAアシル化ASTエステルは、パーキンソン病に対しても有効です。こちらもモデルマウスの実験ですが、行動障害の改善の背景には酸化ストレスとアポトーシスの軽減があることが明らかになっています。そのほか、脳梗塞など血流障害による認知機能の低下を防ぐ可能性も示唆されています。

●神経因性疼痛
神経因性疼痛は、感覚神経に損傷や障害が生じた場合に起こるものです。痛みのメカニズムにも、酸化ストレスや炎症が関わっています。マウスにアスタキサンチンを投与する実験では、酸化ストレスの軽減、炎症性シグナル伝達調節因子と炎症性サイトカインの発現の低下とともに、神経炎症と痛みの反応が改善することが確認されました。

●腎臓・肝臓の保護効果
アスタキサンチンは、腎臓や肝臓の障害に対しても保護効果を発揮します。例えば、アスタキサンチンによって糸球体硬化症による腎機能低下の改善効果が示唆されています。腎臓における酸化ストレスと炎症が改善した結果です。同様に、肝障害に対する効果がラットモデルによる実験で認められています。

●炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は、大腸ガンのリスクの一つとされています。アスタキサンチンは、IL-1β、IL-6、COX-2など炎症に関連するサイトカインの発現を低下させ、結腸粘膜の潰瘍や腺ガンの発症を抑制すると報告されています。別のマウス実験でも、結腸ガンの予防効果が確認されています。

●動脈硬化
炎症性サイトカインの遺伝子発現を減少させるアスタキサンチンは、動脈硬化(アテローム性)のプラーク形成の予防にも有効です。マクロファージ、ミクログリア、内皮血管細胞、好中球における炎症誘発性メディエーターの発現の阻害効果が鍵となっています。

●ドライアイ・アトピー性皮膚炎
ドライアイにも酸化ストレスや炎症が関与しています。過去の研究では、アスタキサンチンが酸化ストレスを抑制したり、炎症反応のシグナルを調節したりすることで、ドライアイを改善させるという結果が得られています。

また、アスタキサンチンは、皮膚の炎症とアレルギー反応を軽減することもわかっています。注目されている一つが、アトピー性皮膚炎に対する研究です。アトピー性皮膚炎のモデルマウスにアスタキサンチンを投与する実験では、皮膚炎の重症度の軽減が認められています。

アスタキサンチンの抗酸化作用や抗炎症作用は、複数の臨床試験でも検証されてきました。例えば、42人の女性を対象とする試験では、炎症反応の代表的な指標の一つであるCRP値が著しく低下することが確認されました。さらに、ナチュラルキラー細胞の活性化、インターフェロンγ産生の増加など、免疫系を強化することも明らかになっています。さらなる研究が必要ではありますが、アスタキサンチンは将来的にガンや炎症性腸疾患など治療効果を高める切り札になるかもしれません。

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