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アスタキサンチン・ルテイン・ゼアキサンチンの効果、ヒト試験で有効性を検証

パソコンやスマートフォン、タブレット端末やビデオゲーム機といったVDTの長時間の使用は、視覚情報をもとに手を動かす作業、スムーズにモノを追跡する眼球運動に悪影響を及ぼします。アスタキサンチン・ルテイン・ゼアキサンチンは、これらの改善に有効であるとされています。日本で行われた試験では、8週間の継続摂取による効果が確認されました。

VDTによる疲れや老化で視覚機能は低下

学術顧問の望月です。3週間ぶりの投稿となりました。ゴールデンウィークは、どのように過ごされたでしょうか。私は、庭木の剪定、草取り、農作業などをして過ごしました。おかげで、一週間で1㎏減量できました。皆さんも試してみてはいかがでしょうか。

今回の記事では、『Nutrients』に2023年に掲載された「Effects of Astaxanthin, Lutein, and Zeaxanthin on Eye–Hand Coordination and Smooth-Pursuit Eye Movement after Visual Display Terminal Operation in Healthy Subjects: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Intergroup Trial」をご紹介します。日本発の本論文では、視機能に対するアスタキサンチンなどの効果が整理されています。

アスタキサンチンは、キサントフィル類に分類されるカロテノイドの一種です。不二バイオファームで製造している「アスタニン」というサプリメントにも、アスタキサンチンを配合しています。これまでの記事でご紹介してきたとおり、アスタキサンチンには、強力な抗酸化作用・抗炎症作用があります。

アスタキサンチンは、さまざまな機能性を有しています。最も広く知られているのが、眼精疲労など目に対する効果です。本論文はユニークなもので、アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンの併用による効果の検証を試みています。具体的には、パソコンやスマートフォン、タブレット端末、ビデオゲーム機といったVDTを使用した後に引き起こされる目と手の協調障害、眼球運動の低下を軽減できるかが確認されています。

VDTを長時間使用すると、持続的なピント調節に伴う疲労の蓄積によって一過性の近視が起こります。過去の研究では、外眼筋の緊張を通じて眼球運動機能が低下することも確認。さらに、水平方向の眼球運動を伴うビデオゲームによって、動的視覚活動が一時的に低下することも報告されています。簡単にいうと目が疲れてしまうという話ですが、VDTは日常活動に不可欠な視覚機能に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。

8週間の継続摂取で効果あり

試験には、未矯正または矯正後で遠方両側視力が0.6以上あり、日常的にVDTを使用している20〜60 歳の健康な男女が参加。アスタキサンチン6 mg、ルテイン10 mg、ゼアキサンチン2 mgを含むソフトカプセルを摂取するグループ28人(サプリメント群)と、米油を含むプラセボカプセルを摂取するグループ29人(プラセボ群)に分けて、それぞれの食品を1日1 回、8 週間飲みつづけてもらいました。

試験では、試験前と 試験開始から2週間後、4週間後、8 週間後に検査を実施。視覚情報をもとに手を動かす作業の早さと精度、スムーズにモノを追跡する眼球運動といった視覚機能はVDT操作の前後に評価され、⻩斑色素光学密度(MPOD)はVDT操作前に評価されました。

VDT操作は、スマートフォンで30分間ゲームするというものです。具体的には、画面に映し出された42文字の漢字の中から、似ているものの異なる1文字を探していく内容となっています。正解すると画面には別の漢字が表示されていき、参加者は回答をくり返していきます。なお、参加者はスマートフォンに取りけられた30 cmのストラップを首にかけ、目とスマートフォンの距離が一定となるようにVDT操作を行いました。

検査項目の視覚機能についてですが、視覚情報をもとにした作業の早さと精度は、モニターに映し出されたターゲットを指でタッチしていく試験で確認。眼球運動は、特殊な機器のモニター上のターゲットを両目で追跡する方法で確認されました。MPODの測定には、⻩斑色素スクリーンという測光器という機器が使用されています。

8週間後の視覚機能を確認したところ、タッチ試験の時間と精度はいずれも、プラセボ群よりサプリメント群が優れていました。それぞれに有意差も認められています。著者らは、血流の改善、筋肉の損傷の回復、毛様体筋の弛緩などによって調節機能を回復させた結果と分析されています。一方の眼球運動については、サプリメント群の結果は2週間後のみプラセボ群より有意に成績がよかったものの、4週間後と8週間後に違いは認められませんでした。

MPODの変化は、プラセボ群よりもサプリメント群のレベルのほうが有意に高いという結果が得られています。これは、ルテインが豊富なホウレンソウを8週間摂取することでMPODレベルが上昇したという過去の研究結果と一致しています。黄斑色素は、ルテインとゼアキサンチンで構成されています。食品由来のルテインとゼアキサンチンは、黄斑部に蓄積していくと考えてよさそうです。

論文は、「アスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンを含むサプリメントは、視覚情報をもとに手を動かす作業の早さと精度の低下を軽減する」と結論づけられています。一方で、今回の一連の結果が相加効果によるものなのか、相乗効果によるものなのかは明らかになっていません。著者は、この点を課題の一つに挙げています。今後さらなる研究が進めば、メカニズムなどの詳細が明らかになっていくものと思われます。

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