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熟成ニンニク抽出物で血液循環が改善 動脈硬化の患者さんを対象としたヒト試験の結果をご紹介

ニンニクは、動脈硬化の予防に役立つと考えられています。動脈硬化の患者さんを対象とする試験では、熟成ニンニク抽出物の長期的な摂取の効果が検証されました。さまざまな機能性成分が含まれる熟成ニンニク抽出物には、抗酸化遺伝子発現の調節機能や増強機能があります。試験の結果、熟成ニンニク抽出物は血管の弾力性や内皮機能を改善させることがわかってきました。

酸化・炎症による動脈硬化と血液循環

学術顧問の望月です。不二バイオファームでは、自社で水耕栽培しているそばの新芽を原料とする発芽そば発酵エキスのほか、ニンニクスプラウトにアスタキサンチンを配合したアスタニンを製造しています。ニンニクスプラウトは、大分県にあるグループ会社の海洋牧場で水耕栽培によって育てられています。

ニンニクの機能性成分として挙げられるのが、アスタニンの記事で取り上げたS−アリルシステイン、シクロアリイン、ジアリルトリスルフィドなどです。これらの成分は、ニンニクよりもニンニクスプラウトに多いことがわかっています。そのほか、ニンニクにはS-1-プロペニルシステイン、S-アリルメルカプトシステイン、Nα-(1-デオキシ-d-フルクトス-1-イル)-l-アルギニン、DASn、フェノール化合物などが含まれています。ニンニクを熟成させることで含有量が増加する成分です。

今回は、『Int Wound J』に2021年に投稿された「Successful improved peripheral tissue perfusion was seen in patients with atherosclerosis after 12 months of treatment with aged garlic extract」という論文をピックアップしました。この研究では、動脈硬化に対する熟成ニンニク抽出物の効果が検証されています。

結論からいうと、「熟成ニンニク抽出物には、動脈硬化によって妨げられていた血流を回復して微小循環を増加させる、つまり灌流を再生させることで血管内の創傷の治癒を促進する可能性がある」という結果が得られています。研究の概要を簡単にご紹介していきましょう。

しなやかな血管を維持するために必要な要素の一つが、血管内皮を再生したり血管を弛緩させたりする働きがある一酸化窒素です。一酸化窒素の合成酵素は、高血圧などで血管内皮が傷つくと減少します。内皮の傷が増えれば、活性酸素による継続的な酸化・炎症も加わって血管の損傷が広がる悪循環に入ります。基礎的な先行研究では、抗酸化作用のある熟成ニンニク抽出物は一酸化窒素を介する血管保護の経路にプラスの影響を与えることがわかっていました。

末梢組織の保持・修復の効果も期待

今回の試験では、動脈硬化の患者さんに対する熟成ニンニク抽出物の効果を検証しました。試験の対象となったのは93人の患者さんです。93人を熟成ニンニク抽出物摂取グループ46人、プラセボ摂取グループ47人という2つに分けて、二重盲検によってそれぞれの血管・血液の状態を分析していきました。試験期間は12ヵ月となっています。

血液の巡りが悪化すると、末梢組織に悪影響が生じます。組織の修復や機能の保持に欠かせないのが、末梢組織の灌流と酸素分圧(酸素の供給)です。試験では、一度止めた血流を解放した後の血液や酸素の動きを見る閉塞反応性充血(PORH)と、皮膚血流量を平均血圧で除した皮膚血管コンダクタンス(CVC)という指標が測定されました。これらの評価には、LSCIが用いられています。LSCIは、照射したレーザー光によって血流量を測定できる機器です。

12ヵ月後の結果を比較すると、PORHとCVCの数値はプラセボグループよりも熟成ニンニク抽出物グループで優れていることがわかりました。具体的には、熟成ニンニク抽出物グループのPORHはプラセボグループよりも21.6%高く、同様にCVCも21.4%高いことが明らかになったのです。いずれも有意差が認められています。

今回の試験の結果は、熟成ニンニク抽出物によって末梢組織の灌流が再生され、動脈硬化によって悪化した血液循環が改善している可能性を示唆しています。前述のとおり、これらは末梢組織の修復や機能の保持とも関連しており、損傷治癒の効果も期待される結果であると考察されています。

試験では、熟成ニンニク抽出物が使用されました。血管の弾力性や内皮機能の改善という結果には、ニンニク成分の抗酸化遺伝子発現の調節機能や増強機能が関与していることがわかっています。同様の成分が入っているニンニクスプラウトでも、このように実践的なデータを蓄積していきたいと考えています。

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