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パーキンソン病とGABAの関係をレビュー 睡眠障害の改善が病状管理の鍵

パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで患者数が多い神経変性疾患です。症状は、運動緩慢、安静時振戦、固縮などの運動症状と、睡眠障害などの非運動症状に分けられます。パーキンソン病の前触れには、嗅覚障害、睡眠障害、認知機能障害などが挙げられます。パーキンソン病と睡眠障害は相互に悪化していく関係にあり、脳内のGABA(γ-アミノ酪酸)レベルの低下が関わっていることが明らかになっています。

パーキンソン病の発症にGABAが関与

学術顧問の望月です。今回の記事では、GABAに関する研究をご紹介します。ピックアップしたのは、『CNS Neurosci Ther』に2024年に掲載された「Sleep disorders cause Parkinson's disease or the reverse is true: Good GABA good night」です。レビューでは、パーキンソン病の症状の一つである睡眠障害とGABAの関連が整理されています。

パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで患者数の多い進行性の神経変性疾患の一つです。脳の黒質緻密部においてドーパミンを分泌しているドーパミン作動性神経が変性することで発症します。簡単にいうと、パーキンソン病の原因はドーパミン不足です。パーキンソン病の前触れには、嗅覚障害、睡眠障害、認知機能障害などが挙げられます。

通常、黒質緻密部のドーパミン作動性神経を保護しているのは、GABAをはじめとする神経伝達物質です。GABAの働きは、パーキンソン病の発症に関わるドーパミン作動性神経の変性と、パーキンソン病の「運動症状」「非運動症状」の進行に関連していることが明らかになっています。運動症状とは運動緩慢、安静時振戦、固縮などのことで、非運動症状とは睡眠障害やうつ病などのことです。

ドーパミン作動性神経の変性や機能不全は、睡眠障害の原因であると考えられています。他方、睡眠障害はGABAの神経伝達やαシヌクレインというたんぱく質に影響を及ぼし、パーキンソン病の症状の一つである認知機能障害も引き起こします。簡単にいうと、パーキンソン病と睡眠障害は相互に悪化していく関係にあり、そこには脳内におけるGABAレベルの低下が関わっているのです。

GABAの強化が病状管理のポイント

レビューでは、パーキンソン病の患者さん98%に睡眠障害が認められるという研究結果が紹介されています。パーキンソン病による睡眠障害は、「夜間の不眠」「日中の過剰な眠気」に大別されます。発症前、あるいは直後から現れる睡眠障害は、パーキンソン病の進行に伴って悪化していくのが特徴です。実際に、夜寝ているときに大声を出したり暴力的な行動をしたりするレム睡眠行動障害や日中の過度の眠気については、神経変性プロセスとの関連が明らかになっています。

パーキンソン病に伴う睡眠障害は、細胞内を浄化するオートファジー、脳における老廃物を排出するグリアリンパ系の機能低下、小胞体ストレスなどの原因となり、神経毒性たんぱく質の蓄積を促進します。神経毒性たんぱく質が蓄積すると、慢性的な神経炎症が生じます。慢性的な神経炎症は、認知機能の低下を引き起こすこともわかっているのです。

αシヌクレインおよび睡眠障害の軽減を目的としてGABAの働きを活性化することは、パーキンソン病の管理に役立つかもしれません。実際に、GABAが炎症誘発性物質の発現を阻害した結果、ドーパミン作動性神経の変性に対する保護効果が得られることが過去の研究で明らかになっています。

レビューでは、脳内のベンゾジアゼピン受容体を介してGABAの働きを促すことで神経活動を抑制するニトラゼパムという睡眠薬が、睡眠障害の改善に効果的であるという研究結果が引用されています。また、ゾルピデムという睡眠・鎮痛薬には、GABA作動性経路を調節して不眠を改善させる働きがあることも紹介されています。

著者らは、前向き研究が不足しており、パーキンソン病とGABAの関連は観察研究や前臨床研究から得られた結果に限られているとした上で、GABAの調節によってパーキンソン病の運動症状と非運動症状を管理できる可能性があると考えています。研究が進めば、不眠・不安などに対する効果が認められているGABAによってパーキンソン病による睡眠障害をコントロールすることができるようになるかもしれません。

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