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発芽そば発酵エキスのACE阻害活性 鍵は発酵で増えるヒドロキシニコチアナミン

発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を乳酸菌発酵して作られています。発酵によって、血圧の上昇にかかわる「アンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)」という酵素の活性を阻害する働きは5倍になることがわかっています。ACE阻害活性物質の単離を試みたところ、「ニコチアナミン」「2”-ヒドロキシニコチアナミン」が同定されました。今回の記事では、「ニコチアナミン」「2”-ヒドロキシニコチアナミン」にフォーカスします。

血圧の上昇を抑制する注目の“ニコチアナミン”

常務の前島です。不二バイオファームでは、間質性膀胱炎に対する発芽そば発酵エキスの有効性を検証しています。私は、ドクター論文でも発芽そば発酵エキスを研究対象に選びました。15年以上、発芽そば発酵エキスの研究に携わってきたことになります。今回は、ドクター論文でも触れている「ニコチアナミン」「2”-ヒドロキシニコチアナミン(以下、ヒドロキシニコチアナミン)」という機能性成分をご紹介します。

タラノメやシュンギク、マルナスやズッキーニなどに多く含まれているニコチアナミンは、L-メチオニンというアミノ酸から生合成される合成中間体です。「S-アデノシルメチオニン合成酵素(SAMS)」「ニコチアナミン合成酵素(NAS)」という酵素の働きを受けて作られています。ニコチアナミンには、血圧の上昇にかかわる「アンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)」という酵素の活性を阻害する働きがあることが報告されています。一方のヒドロキシニコチアナミンは、ニコチアナミンに構造や性質が似ている類縁体です。こちらにも血圧を下げる働きがあります。

ニコチアナミンやヒドロキシニコチアナミンは、そばの新芽にも含まれていることがわかっていました。ドクター論文では、血圧に対する発芽そば発酵エキスの働きを検証。その過程で、ニコチアナミンとヒドロキシニコチアナミンの含有量や働きについても調べていきました。おもしろい結果が得られているので、実験の概要を簡単にご紹介していきましょう。

発酵でACE阻害活性は5倍

実験では、血圧の上昇を引き起こすACEの阻害活性を調べました。特定保健用食品と比較したところ、発芽そば発酵エキスには、およそ16倍のACE阻害活性があることがわかりました。本態性高血圧ラットに発芽そば発酵エキスを投与する実験では、血圧上昇を有意に抑制するという結果を確認。簡単なヒト試験でも、血圧の上昇を緩やかに抑制するという結果が得られました。

次に行ったのがACE阻害物質の同定です。実験では、発酵による有用成分の変性を確認するために、発芽そば発酵エキスの原料であるそばの新芽の青汁との比較を行なっています。ACEの活性を50%阻害する濃度(IC50)を調べたところ、青汁は1.25 mg/mL、発芽そば発酵エキスは0.24 mg/mLでした。ACE阻害活性は約5倍。発芽そば発酵エキスのほうが、少ない量でACEの活性を阻害できることがわかりました。これは発酵による物質変化の恩恵です。

ACE阻害活性を持つ物質を分離・定量したところ、ニコチアナミンとヒドロキシニコチアナミンを確認することができました。100gあたりの含有量を算出すると、青汁中のニコチアナミンは7.9 mg、ヒドロキシニコチアナミンは25.1 mgだったのに対し、発酵そば発酵エキス中のニコチアナミンは21.5 mg、ヒドロキシニコチアナミンは83.3 mgであることが明らかになったのです。なお、そばの新芽にはニコチアナミンが18 mg、ヒドロキシニコチアナミンが48 mg含まれていると報告されています。

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ニコチアナミン(NA)とヒドロキシニコチアナミン(HNA)の含有量。上は発酵後、下は発酵前。発酵によってNAとHNAが増えていることがわかる

ヒドロキシニコチアナミンの生成メカニズムは、必ずしも明らかになっていません。ここからは考察となりますが、ニコチアナミンの2"位に水酸基を置換するヒドロキシラーゼが存在すると考えられます。乳酸菌発酵の過程で、遊離アミノ酸として増加したL-メチオニンがアデノシンと結びついてS-アデノシル-L-メチオニンとなり、その後、ニコチアナミンを経て、2”位に水酸基が結合した結果、ヒドロキシニコチアナミンも増加しているのではないかと考えています。

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