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ケルセチンの炎症・免疫の調節作用は レビュー論文をもとに健康効果を検証

不二バイオファームで製造している「発芽そば発酵エキス」には、ケルセチンというフラボノイド化合物が、そばの新芽の8倍量含まれています。ケルセチンには、抗炎症作用があることがこれまでに報告されています。ヒト試験では、鼻やのどに炎症が生じる上気道感染症(URTI)の発病や重症化を抑制する結果が確認されています。

日本ではタマネギや緑茶からケルセチンを摂取

学術顧問の望月です。不二バイオファームでは、「発芽そば発酵エキス」を製造しています。発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を植物性乳酸菌で発酵させたエキスです。発芽そば発酵エキスには、ケルセチンというフラボノイド化合物や乳酸菌の菌体成分など、多くの有用な機能性成分が含まれています。今回の記事では、2016年に医学雑誌『Nutrients』に投稿された「Quercetin, Inflammation and Immunity」というレビュー論文をもとに、ケルセチンの抗炎症作用を整理していきます。

ケルセチンはフラボノイドの一種で、リンゴ・ベリー・ケーパー・ブドウ・タマネギ・緑茶・トマトなど、多くの野菜や果物に含まれています。ケルセチンには、さまざまな健康効果があることが知られています。抗酸化作用や抗炎症作用、抗腫瘍効果や抗ウイルス作用などは、これまでに報告されているケルセチンの健康効果の一部です。

ケルセチン

ケルセチンの構造

健康効果をご紹介する前に、日本におけるケルセチンの摂取状況を見てみましょう。1日あたりのケルセチンの推定摂取量は、北海道の住民を対象とするコホート調査を続けている札幌医科大学医学部から報告されています。壮瞥町の住民を対象とする2013年度の食事調査では、夏の平均値と中央値は16.2 mgと15.5 mg、冬の平均値と中央値は18.3 mgと16.1 mgであることが確認されました。ケルセチンの供給源を調べたところ、夏は緑茶やタマネギ、アスバラやトマト、冬は主にタマネギと緑茶であることも明らかになりました。

抗炎症作用は動物でもヒトでも確認

ケルセチンは、主な形態が配糖体であり、ヒトの血液中に抱合型で存在します。抱合型とは、簡単にいうと体内で作られた物質との化学反応によってできているという意味です。実際に、ケルセチンを含む食事を継続的に摂取すると、血中に蓄積していき、血漿中のケルセチン濃度は大幅に増加することが報告されています。また、ケルセチン濃度は食事の内容と相関関係にあることもわかっています。

体内に吸収されたケルセチンは、どのような働きをしているのでしょうか。ケルセチンが強力な抗炎症能力を持つ長期的な抗炎症物質であると報告されたのは、1995年のことです。その後、アレルギー反応を引き起こす肥満細胞の安定化と胃腸の細胞保護作用、炎症および免疫に対する調節作用、樹状細胞の機能に対する免疫抑制効果があることなどが明らかになりました。

試験管を用いた細胞実験では、腫瘍壊死因子やインターロイキンといった炎症に関与している生理活性物質や、シクロオキシゲナーゼやリポキシゲナーゼといった炎症を引き起こす酵素の産生を、ケルセチンが阻害することが確認されています。さらに、複数の動物実験でもケルセチンの抗炎症作用を支持する結果が得られています。いくつかピックアップしていきましょう。

肥満モデルラットを用いた実験では、ケルセチンが内臓脂肪組織の腫瘍壊死因子α(TNF-α)と一酸化窒素(NO)の産生を減少させ、一酸化窒素シンターゼ(NOS)の発現が低下することがわかりました。関節炎モデルラットを用いた実験も行われています。ケルセチンを投与したラットの症状は、未治療のラットの症状に比べて軽度であることが報告されています。そのほか、ケルセチンの外傷後投与によって、急性外傷性脊髄損傷後の運動機能が早期に回復することも確認。投与量や投与頻度が重要であるという結果も得られています。

海外では、1002人を対象とする試験も実施されています。500 mg/日または1000 mg/日のケルセチンとプラセボを12週間摂取してもらう試験では、鼻・のどに炎症が生じる上気道感染症(URTI)の発生率に有意な効果は確認されなかったものの、40歳以上の参加者のサブグループでは1000 mg/日のケルセチンの摂取によって、URTIに関連する総病欠日数と症状の重症度が統計的に有意に減少することがわかりました。

そのほか、訓練を受けたアスリートに100 mg/日のケルセチンを摂取してもらう試験も行われています。3日間の激しい運動後の免疫機能に変化は見られませんでしたが、運動後2週間のURTI 発生率には有意な減少が見られました。具体的には、プラセボを摂取していたグループのURTI 発生数は20人中9人だったのに対し、ケルセチンを飲んでいたグループは20人中1人という結果でした。ケルセチンの抗炎症作用を示唆する結果です。

野菜や果物に含まれているケルセチンは安全であるとされています。一方で、ケルセチンの抱合型や食べ合わせ・飲み合わせによって吸収率などが異なることも報告されています。今後、最適な摂取法やケルセチンの長期的な効果が明らかになっていくものと思われます。

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