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レールが運ぶ。パラダイスの塔。

今日は久しぶりに宇品の1万トンバース港へ車を走らせた。昨日が満月と言うこともあり潮は満ちていて、波止場の波は足元近くで小さな水しぶきを立てながら水面を揺らしていた。ここは俺がまだ免許とりたての頃、車で彼女を連れてよく夜更かしをした思い出の場所だ。小さな波止場なので夜海辺に車を止めていても目の前の海は真っ黒で何も見えない。そのかわり車のオーディオの明かりが車内をセンスよく飾っていた。何を話したかさえ思い出せないが、車の中で過ごす波止場は開放感を味わえる唯一の場所だった。
そんな思い出が秋風と共に頭の中を通り過ぎていく中で、ふと目にとまったのは取り残された鉄道のレールだった。それは日清戦争当時宇品港から広島市内までをつないでいた軍事貨物輸送用のレールを、記念として残したものだった。過去に何度も来ているが来る時はいつも夜だったので全く気づかなかった。
ましてや当時高校生の俺は古びたレールに興味を抱くほどの知的好奇心を持ち合わせていなかった。
宇品から広島まで敷かれたこのレールの距離は約6キロメートルだったが、なんとこれを16日間で完成させたという。
凄まじい早さだ。。。
それだけでも戦時中の一丸となった勢いを感じずにはいられない。お国のために命を捧げると心し、ここから出発した若者。戦場から負傷し帰ってきた者、そして遺骨となって戻った者たちがこのレールを通ってきたのか、、、、。
そんなことを想像しながら目線をあげると少し先でカップルが釣りを楽しんでいる。その近くには、よく手入れをされた子犬が飼い主と嬉しそうに散歩している。のどかな風景だ。。

足元にある古びた鉄のレールから生まれる想像と、目の前にあるのどかな風景のコントラストが、この時代に生まれたことを心からありがたいと思わせた。
もしかすると戦時中に未来の平和を願った人はこんな風景を見たかったのかもしれない。。。
日本の歴史上初めて70年以上平和が続いているこの時代も、今は先行きが見えづらくなっている。。
そんな"今"が運んでくる時代の風に"憂い"を感じるのは気のせいではないだろう。。
そんな湿り気のある気分を振り払うようにそびえ立っているのがパラダイスの塔だ。これは1989年に開催された海と島の博覧会のモニュメントだったものをここ宇品港に移設したものである。先端は星の形をしておりスペインのサグラダファミリアをチラつかせ、遠くから眺めると小さなロケットのようにも見える。中は空洞になっていて入れるが特に何かあると言う感じでは無い。外見の多少のインパクトにつられて若者がたむろする程度だ。
その若者たちと同じように数十年前は俺もここにタムロしていた日が懐かしい。
最近過去を振り返ってばかりいる俺は自然に逆らうことなく素直に歳を重ねているという証拠だろう。
さて本題はこれからどう生きれば良いのだろうかという事である。
自分の問題は常に同じである。。

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