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株式を考える

株価とは何か

運用と言われて、真っ先に思い浮かぶのは株式投資ではないだろうか。
日経平均株価やNYダウという言葉や数字はニュース等で見ることもあるだろう。
どうやら株式投資だけで生計を立てる、トレーダーなる人がいることもご存知かもしれない。

しかし、そもそも株式とは何なのだろうか?

端的にいうと、株とは会社の所有権の一部である。

株式を保有していれば、経営方針にも口出しができるし(議決権)、利益が出れば自分のものだと主張できるし(剰余金配当請求権)、会社が解散したら残った資産の分前を貰うことができる(残余財産分配請求権)
ただし、経営に影響を及ぼすには相当数の株式を保有している必要があるし、会社の解散を期待して買うものでもないので、以下では会社が出す利益を軸に、株式を考察したい。

例えばA社の株式を保有しているとしよう。
ある年、A社の利益は100円であった。
貴方はこの利益100円を請求する権利がある。
つまり、配当金である。

ここでA社が請求通り100円の配当を出したとする。
どうやら今年も業績は良さそうなので、継続して保有していれば、更に100円を受け取れそうである。

さて、この時、追加でA社株式を買おうと思った時、一体いくらまでならお金を出せるだろうか?

答えは、最大で99円のはずである。(円未満は精算できないものとする)。
99円で買えば、100円の配当をもらって1円の利益が得られる。
約1%の利益なので、無リスク資産よりも投資妙味もある。

100円だと配当金と同じ額なので損はしないが、益もない。
それであれば預金金利の0.2%を受け取った方が効率が良い。

101円以上だと配当を受け取っても損失なので、投資する理由がない。



では、99円で株を取得したところで、更に考えを続けてみよう。

どうやらA社の業績は、今年だけでなく、来年、再来年も悪くないらしい。
その更に先も良さそうだ。
100円の配当が何年か続きそうである。

さて、この時貴方は、A社株式をいくらまでなら投資するだろうか?

今年を含めて3年間100円の配当が出るなら、合計300円なので、それくらいまでなら買ってもいいかもしれない。
しかし、その後も続き、10年も続くのであれば、900円出してでも買っておくべきなのでは?
いやいや、流石に続いても5年だから、500円以上で買う人がいるならむしろ売るべきか……

このような思惑が交錯し、たまたま合致して売買が成立した値段を、株価というのである。

株式の配当というのは、会社の決算期に保有していないと請求が出来ない。
そして、決算のタイミングでは、まだいくらの利益が出て、いくらの配当を出せるかもわからない。
株式というのは、未来の会社の業績を期待して買うため、投資家それぞれの考えによって、買いたい値段と売りたい値段が異なってくる。
予想通りの業績であれば、株価は変わらないだろうし、業績が良くて配当が高ければ株価は上がり、逆に悪ければ想定よりも株価は安くなる。
この不確定な未来の業績に基づく、価格の変動リスクが、株式の特徴の一つと言えるだろう。

また、ここでいう株を保有していた場合に貰える利益100円のことを、一株あたり利益(EPS)という。

そして、株価をEPSで除して出てきた数字をPERといい、今の利益が何年続くと期待しているか、ということがわかる。
すなわち、900円で買いたいという注文があったとする。
現在のEPSは100円なので、PERは900/100=9である。
つまり、900円で買いたいという人は、現在の利益が少なくとも9年以上は続く、と考えているはずなのである。

冒頭99円で取得した株が、900円まで上昇したのである。
そうすると、100円の配当で1円の利益を取らずとも、売却して801円の利益を受け取れば809%の利益である。
この大きな値上がりが株式の魅力の一つである。

ただし、株価の値動きは上昇一辺倒ではない。
結局配当が続くのは3年で、それ以降は業績も悪くなるらしい、ということが判明したとする。
その場合、株価は300円近くまで下落することが考えられる。
900円だった株が300円である。
約66%の損失だ。

不確実な未来の予想に基づくからこそ、ハイリスクハイリターンになるのが、株式投資なのである。


株価指標とは何か

前項では継続的に100円の利益を出し続けてくれた、優秀なA社に対して、ライバル会社であるB社の社長はこのように考えた。

利益のうち、半分だけ株主にかえして、残りの部分を事業投資に充てれば、更に利益を拡大できるのではないか?

話を単純化するために、事業への投資はそのまま利益に直結するとしよう。つまり、100円の利益のうち、50円だけ配当を出し、残りの50円を事業の拡大に費やすことで、翌年の利益は150円になる、という具合だ。

この場合、株価はどうなるだろうか。

株主が受け取れる利益=配当は50円である。
経済合理性を考えるのであれば、49円までしか投資ができないはず。
やはり利益を全額払ってくれるA社株式の方が魅力があるのではないか

ここで、もう一段踏み込んで、今後のB社の業績を考えてみよう。

今年の配当を50円にすることで、残りを事業拡大に充て、翌年は150円の利益が出る。
同様に半分しか配当を出さないとすると、来年も受け取れるのは75円だ。
しかし、その翌年は、75円を投資に充てた分、225円の利益が期待され、配当も100円を超えてくる。
その翌年は利益が337.5円で配当が168.75円、更に翌年は利益が506.25円で配当が253.125円ということになる。

こうなってくると、話は変わってくる。
当初100円の利益だったものが、5年も経つと759円ほどになり、その頃には379円もの配当を貰える計算になる。

A社とB社の5年間の配当を比べてみると、A社は500円に対して、B社は約659円になる。
この時、それぞれの株価はいくらになるだろうか?

5年間の業績は確かであると仮定すれば、A社は499円、B社は658円程度までなら株価が上昇して然るべきだろう。
(499円と658円で買って、それぞれ利益が1円だとすると、正確には銀行預金の方が利回りがいいが、考え方の単純化の為、ここではわずかでも利益が出れば株への投資妙味がある、と判断する)。

さて、この時のPERについて考えてみよう。
PER=株価/EPS(一株当たり利益)である。
現時点で判明しているのは、前年度の利益が両社とも100円だということである。
そうするとそれぞれのPERは、

・A社 499円/100円 = 4.99倍
・B社 658円/100円 = 6.58倍

となる。

PERは現在の利益が何年続くか? という思惑による、と前述したが、そうするとB社は業績が6年以上続くと期待されているのだろうか?
いや、業績を予想したのは5年までであるから、そういうわけではない。
期待する年数(5年)よりも数字が大きいのは、企業の成長を加味したからである。

すなわち、逆算すると、PERは企業の業績が何年継続されるのか? ということ加えて、どれほど業績が拡大するか? ということが数値化されたといえよう。

尚、利益の内いくらを配当に回すか、という割合を配当性向という。
上記B社の場合だと、配当性向50%ということになる。


期待値を考える

どうやら投資家の思惑・期待によって株価の値動きは決まるらしい。そうすると、株式投資の期待値は、どの程度なのだろうか?

まず、最大損失額を考えると、100%になる。つまり、投資元本が返ってこない可能性が存在する。
冒頭に述べた通り、会社の所有権である。
すなわち、そもそも会社がなくなる=破産すると、所有権を有していても、権利を行使する対象がなければ価値はない。
株価は0になるのが、株式投資の最大損失額といえる。

尚、株の投資で借金を抱えた、という話を聞いたことがあるかもしれない。
これに関しては、ここまでで述べた株式投資よりも、さらにリスクをとった運用手法に因るものである。
ここまでで述べた、現物株と呼ばれるものを買う投資では、借金を抱える事態にはなり得ない、という安心感(?)を読者諸君には伝えておきたい。



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