デートのあとの欠席裁判(ダイエット大好きJK⑤)


(雑誌記事を模すかたちで始まった姫那ちゃんシリーズ。ここからは、その裏話、というか、彼女をめぐる物語の本筋になります)


 デート企画の撮影後、姫那とS・Yはそれぞれ帰路につき、残りのメンバーはスタジオ近くのカフェで打ち合わせをした。出席したのは、編集者、カメラマン、スタイリストの3人。そこでも、姫那のことが話題になった。

編「いやぁ、最初はどうなるかと思ったけど、なんとか無事に終われたね」
カ「うん、合間にも言ったし、映り具合も見せたけど、写真だとそこまで病的な感じにはならないだろ」
編「あ、もう一回、見せて」

 そう言って、カメラマンからカメラを受け取った編集者は、写真を再生しながら、
「それでも、細いけどね。たしかに、変な骨っぽさや筋っぽさはうすれるかな。正直、あの子を見た瞬間、病気か何かだと思ったくらいだから」
「うんうん、前回撮影したときは34キロだっけ。あのときも細すぎると思ったけど、そこから5キロも痩せてるなんて、ちょっと想定外だよね。まぁ、本人は元気そうだったけど」

 そのとき、スタイリストが「でも、私」と会話に加わった。

「あの子、病気だと思うんです。たぶん、拒食症じゃないかと。もちろん、断定はできないけど、仕事でもプライベートでも、拒食症になった子、何人か知ってて、おんなじ痩せ方なんですよね」

カ「あぁ、言われてみればたしかに。俺も拒食症になったモデル知ってるけど、似た痩せ方だったな」
編「おいおい、待ってよ。いや、実際のところはわからないけどさ。病人扱いして、誌面に登場させるわけにもいかないし、ここはあくまで、細すぎる以外は普通の子ってことでいくつもりだよ」

「あ、もちろん、雑誌的にはそれでいいと私も思います。これが女の子向けの雑誌なら、読者への影響も考えなきゃだけど、ここの読者はほとんど男子だし。でも、大丈夫かな、あの子、体力だってかなり落ちてるように見えたけど」

カ「そういえば、ちょっとよろめいて、転びかけたりしてたよね」
編「あぁ、水族館のアシカショーのあとだっけ。本人は、床が濡れてて滑ったって言ってたけどね」

 その光景を思い出し、沈黙する3人。その空気に堪え切れなかったように、編集者が口を開いた。

「いま、一瞬、彼女の親に連絡して、健康状態について気をつけたほうがいいとか、何か伝えたほうがいいかなとも思ったんだけど、それもおせっかいな話だよね。僕らが気づくくらいだから、親はもうとっくに気づいて、手立てを考えたり、行動してるかもしれないし」

 ふたりも同意を示し、その話題はひと区切りということに。それから1時間半ほどで、この席もおひらきとなった。

 編集者は会社に、スタイリストは自分の事務所に戻り、カメラマンは居酒屋へと直行する。先輩カメラマンと呑む約束があるからだ。



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