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日本人の忘れ物by中西進を読んで

 私の学生時代の友人が 関東に住んでいて、お仕事関係で中西進先生と
お知り合いだったらしく、中西先生の「ふくろうの会」に所属して、奈良で行われる総会に出席するため関西に来て その後数人の同窓生と会った時、
全員に この本をいただいた。
もう かれこれ何年前になるだろうか?
 当時 途中迄読んで どうしてだか読み忘れていたこの本を 思い出したように手に取って読み始めた。

中西進先生は 余りにも有名でここにご紹介せずとも 皆さまはよくご存じだと思いますので、省略させていただきます。

葛西敬之さんが「解説」のなかで
「本書は、日本人がかつてもっていながら、次第に失ってしまった心の持ちようや身の処し方の機微を切り口にした、日本精神文化論である。
日本と言う温和な島の歴史の中に育まれた日本民族の心、あるいは『古事記』『万葉集』『伊勢物語』『源氏物語』とつながっている日本的なものの考え方が 忘れられようとしている現実に対する警鐘でもある。」

と書かれているように、便利さを求め続けてきた私たちが歩んできた時代の「進歩」は 古き良きものを精神性もろとも「津波」のように引きさらっていく危機感なのだ。
 
 日本という島国の独特の文化は
「自然や隣人、地域社会との調和を重んじ、外から来るものを歓迎しつつ、環境と共生する環境型の文化を培ってきた(P253)」

 確かに 外国の人から「日本の魅力」に気付かされることに、私たちは驚きを隠せない。
余りにも身近にある故なのか、鎖国の時代遅れを取り戻したい一心で、他国にはない大切なものを 置き去りにして来たようである。
 この本に取り上げられている一つ一つに 中西先生の日本文化への愛と
惜別の文章がこめられ、読みすすむうち読者にも 懐かしみとともに心に
沁み込んでくる。

 今年から「源氏物語の作者:紫式部の物語」である大河ドラマ「光る君へ」が はじまった。
平安時代の世が全て「みやび」だったわけでなく、どのように武士の時代に移行していったかを 知るに良きドラマであるに違いない。
 時代は時を伴い動いていくものであり、現代に至る変遷も残念ながら
「さもありなん」と承諾するしかないのかもしれないが、唯一「日本人の精神性」は残しておきたいものである。

 能登の地震でも、残念ながら全て根っ子から覆されたようなショックを
うけたが、日本人としての魂は 一時期覆されたとしても、必ずや復活するものと信じたい。

 「日本人の大切なもの」に 気づきを与えてくださった中西 進先生に 心から敬意と感謝を申し上げ、この本をくださった友人に感謝いたします。

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