【8】隠された子どもの行方は

7.

 幸い雛乃の意識はすぐに戻った。検査の結果は異常なし。念のため二、三日入院した。
退院後、話を聞くが、雛乃は落ちた時のことを覚えていなかった。生霊を見つけて非常階段を急いで上ったが、生霊の姿は消えていたという。柵に近づいて校内を見渡した途端、息苦しくなったところで記憶が途切れてるらしい。その後は救急車の中だったと記憶している。気を失うと同時に非常階段から落ちたようだ。それとも生霊に落とされたのか。
斎は雛乃が落ちた非常階段を調べた。生霊の気配が色濃く残っていた。強く重く澱んだものだ。瘴気と呼ばれるものに近い。生霊の気配と瘴気が混在しているかのようだ。非常階段の柵の一部は腐敗していた。瘴気で傷んだ跡だ。触ろうと手を伸ばすと軽い反発があった。瘴気と隠力は同じ極を合わせようとする磁石のように反発する。隠力を強めて反発を押し切る。柵に触れると、手が赤くなり軽度の火傷を負った。
 雛乃が退院して数日後、清香のお見舞いへ行った。斎は早く行きたかったが、実家暮らしとは言え、女性の家に男一人で訪ねると誤解を招きかねないので避けていた。
 清香は規則正しい寝息を立ててベッドに横になっていた。弱々しく、顔色が悪かった。明らかに衰弱している。清香の部屋には薄っすらと瘴気が漂っていた。回復しない原因のひとつと考えられる。身体に障るため、瘴気を浄化した。清香本人とは話ができなかったが、何かあれば祖母が連絡をすると言ってくれた。
清香は一日数回目を覚ましているそうだが、学校に行く体力はないみたいだ。ベッドから出るのもひと苦労するという。
瘴気を浄化したので少しでも回復の兆しがあればと願うばかりだ。
しかし、お見舞いに行った一週間後、雛乃のところに清香の祖母から連絡が入った。
にぃ
目を覚まさなくなり入院した、と。
様子を見に行くと、寝たきりの清香は魂の抜け殻と化していた。

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