【アメリカ製保健室】 のお題で、 【どんでん返し】なショートショート~鉄分不足でも扉には要注意~

まだ現実と夢の境が曖昧だ。
僕の体は意識との一体感がまるでない。
シーリングファンの軋む音が耳に忍び込んでくる。
ぼんやりと見つめていた天井の濃い木目が次第にはっきりとしてきた。

ベッドから上体を起こすと木枠が軋んだ。

針の動く音が響く壁掛け時計は、6限目の始まる時刻を指していた。

カビ臭そうなカーテンを開けて顔を覗かせたブロンドヘアの女性養護教諭が首を傾ける。色白で鼻筋の通った堀の深い彼女は、青い瞳を心配げに揺らす。

「授業に戻るかい?」

言葉のイントネーションが日本人のそれとは異なるが、彼女は淀みなく日本語を口にした。

僕は小さく頷き、ベッドから降りる。

一歩足を前に出すとふらついたが、なんとか体勢を保ち、さらに一歩歩く。

「気をつけてね」

取っ手に手をかけて扉を引いた。

あっと聞こえると同時に目の前に星がいくつも飛ぶ。
そのままふらふらと扉に寄りかかると反転する。

「もう!回転扉だって毎回言ってるじゃない」

不服そうな声が聞こえたかと思うと、扉が音を立てて元の位置に戻った。

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