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「推し」の文化論/(著)鳥羽和久

昨年7月、イベントに参加したことがきっかけで、著者の鳥羽和久さんを知りました。
そのイベントは、鳥羽さんが、本屋店主に、『BTSの魅力を存分に伝える』というもの。
BTS出遅れ組の私は、世界を席巻しているBTSの魅力とは何ぞや?と興味津々で参加。
その際に、BTSの本を執筆中と聞いていたので、先月発売と同時に購入しました。

BTSから世界とつながる。
楽曲やメンバーの言葉、ARMYとの関係の分析から、いまを生きるための術をさぐるBTS論の決定版!
 この1冊でARMYはバンタンと出会い直し、そしてBTSに初めて触れる人はその深みに驚嘆する。BTSメンバー(RM・JIN・SUGA・J-HOPE・JIMIN・V・JUNG KOOK)それぞれの魅力を描いたコラム付き。
※メンバーについて、鳥羽さんの愛が溢れていますw

特に印象に残った文章は、『「世界は狂いながら回っている」という認識がBTSのベースにある世界観です。』というもの。
人間はいつも過剰なものを抱えている存在で、秩序だった社会では欲望を抑えつけるしかなく、そうすると秩序をはみ出すような過剰な衝動を抱え込んでしまう。
そういったアンビバレントな感情を歌詞としてメッセージ化し、代弁して社会に訴えかけていることが、BTSの多くのファンの共感性を生み、爆発的な人気に繋がっているということに、なるほど、と思いました。

最後に、「推し活」に対する危うさを説いていたことも興味深かったです。
『「推し」を推すことを通して自分を発見すると同時に、世界とつながる実感が得られる。一人だけど独りじゃない。』
『「推す」行為は「推し」を通した刹那的、情動的な主体性獲得の運動であり、まさに推しを「使用」する運動なのですが、このことに自覚的でない人もいます。』
「推し」に対して「支配関係」に陥り、攻撃的になってしまうファン。
RMが、ツアー中に、ARMYを「使用」することで自己変容を遂げてきたことを伝え、ARMYにも、BTSを「使用」することで、自己変容し、自分を愛することを学んでほしいと、伝える。

愛から始まった「推し活」が、いつの間にかその境界線を踏み越えて暴走してしまう怖さ、危うさ。
実際に攻撃までしてしまう人は、ほんのわずかだと思うけれど、楽しい「推し活」の範囲で、入り込みすぎないことも、大事ですね。


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