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旧司法試験 刑法 平成20年度 第2問


問 題

甲はXとその配偶者Yとの間の⼦であり、⼄はXとその内縁の妻との間の⼦であってXから認知されている。甲と⼄は、Xと同居している。
甲は、Xが別居中のYから盗んだY所有の指輪を保管していることを知った。そこで、甲は、⼄に相談し、⼆⼈でその指輪を盗み出したが、その際、⼄は、その指輪はXが所有する物であると思っていた。⼄は、盗んだ指輪を換⾦し、その全額を⾃分のものにしようと考え、盗品であることを秘して指輪を売却し代⾦全額を⾃⼰に引き渡すように甲に命じた。これを了承した甲は、古物商丙に盗品であることを秘して、指輪を売却したいと告げた。丙は、その指輪が盗品であり、時価100万円の価値があることに気付いたが、甲に対して、その指輪には傷があるので買取価格は10万円にしかならないと告げた。甲は、丙のその⾔葉を信じて、その指輪を10万円で丙に売却した。甲は、丙から交付を受けた売却代⾦10万円を⼄に渡すのが惜しくなり、その全額を遊興費として使ってしまった。
甲、⼄及び丙の罪責を論ぜよ(ただし、特別法違反の点は除く。)。

関連条文

刑法
45条(第1編 総則 第9章 併合罪):併合罪
235条(第2編 罪 第36章 窃盗及び強盗の罪):窃盗
244条(第2編 罪 第36章 窃盗及び強盗の罪):親族間の犯罪に関する特例
246条(第2編 罪 第37章 詐欺及び恐喝の罪):詐欺
250条(第2編 罪 第38章 横領の罪):未遂罪
252条(第2編 罪 第38章 横領の罪):横領
255条(第2編 罪 第38章 横領の罪):準用(244条)
256条(第2編 罪 第39章 盗品等に関する罪):盗品譲受け等

問題文の着眼点

乙は盗んだ指輪は親であるXの所有するものだと思っていた
古物商である丙は指輪が盗品であると気付いた

一言で何の問題か

親族相盗例、処罰阻却事由に対する錯誤

答案の筋

窃盗罪について、奪取罪は財産法秩序維持を目的とし、占有そのものを保護法益とするものであるから、被害者が所有権を有しない点は問題が無い。また、親族相盗例は政策的配慮に基づく処罰阻却事由であり、(構成要件的)故意の対象とはならないため、所有者が親族であるとの錯誤は刑の免除をもたらさない。
横領罪について、⾦銭の動的安全の保護が重視される⺠事法と異なり、委託者との間での静的安全の保護を重視すべき刑事法では、他⼈物性が肯定されるべきである。また、外形上委託信任関係があり、これが領得⾏為によって破壊されるのであれば、財産法秩序が害されると言え放置し得ない。
盗品等有償譲受罪および盗品等保管罪は、本犯助⻑的性格を有するとされ、本犯者との意思の連絡が必要とされる。

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