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旧司法試験 憲法 平成8年度 第1問


問 題

 団体Aが、講演会を開催するためY市の設置・管理する市民会館の使用の許可を申請したところ、Y市長は、団体Aの活動に反対している他の団体が右講演会の開催を実力で妨害しようとして市民会館の周辺に押し掛け、これによって周辺の交通が混乱し市民生活の平穏が害されるおそれがあるとして、団体Aの申請を不許可とする処分をした。
 また、団体Bが、集会のために右市民会館の使用の許可を申請したところ、市民会館の使用目的がY市の予定している廃棄物処理施設の建設を実力で阻止するための決起集会を開催するものであることが判明したので、Y市長は、団体Bの申請を不許可とする処分をした。
 右の各事例における憲法上の問題点について論ぜよ。

関連条文等

憲法
21条1項(第3章 国民の権利及び義務):集会・結社・表現の自由
地方自治法
244条(第2編 普通地方公共団体 第10章 公の施設):公の施設

一言で何の問題か

集会の自由と明白かつ現在の危険の基準

答案の筋

団体Aについて、意見が対立しているというだけで他の団体が実際に実力行使に出たり、押し掛けるかは不明であり、また、周辺に警察官を配置するなどすれば、他の団体の接近や周辺交通の混乱を阻止できるため、申請の不許可処分が必要不可欠とは言えず、違憲となる。
団体Bについては、決起集会が実際に開催されれば、そのまま実力行使が行われるおそれが極めて高く、集会終了後直ちに実力行使が行われると思われ、集会の開催を阻止するための不許可処分が必要不可欠であるため、合憲である。

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