見出し画像

確かに掴んだ「自信」から生まれた「余裕」そしてその結果 水戸ホーリーホック戦レビュー(2022年J2第13節)

こんヴァンフォーレ!
今回は4月30日(土)に行われた
2022年J2第13節
水戸ホーリーホックvsヴァンフォーレ甲府のレビューをお届け!


1.概要

5連戦をホーム2連戦でスタートした甲府はそれぞれ当時2位の町田、3位の東京を下し、連戦前からの連勝と合わせて4連勝を達成!

開幕戦から失点が多い試合を続けていたが2試合連続でクリーンシートを達成し、結果だけでなく自信と手ごたえを持って、5連戦真ん中の3戦目、アウェーの水戸に乗りこんでの試合となる。

連戦も折り返し地点となり、選手の疲労なども気になる中でターンオーバーも考えなくてはならない状況。
ここまで試合から遠ざかっていたり、普段はベンチスタートの選手たちの活躍も必要になってくる。

苦しみながらも積み上げてきたものを信じて戦い続けてきた成果が結果として表れてきたことを確かな自信に今節に挑む!


2.選手紹介

水戸ホーリーホック

まずは、ホーム・水戸ホーリーホック

水戸ホーリーホック スターティングメンバー

3-6-1のフォーメーション

連戦3戦目ということもあるが、フィールドメンバー全員を前節から入れ替える大幅なターンオーバーを敢行して今節に挑む。

ターンオーバーしているながらも、広島から加入している土肥選手や元甲府の曽根田選手には注意したい。

また、ベンチスタートの今季5ゴールをあげている木下選手らにも警戒が必要。

ヴァンフォーレ甲府

続いて、アウェー・ヴァンフォーレ甲府

ヴァンフォーレ甲府 スターティングメンバー

3-6-1のフォーメーション
甲府も半数以上の6人をターンオーバーさせて今節に臨む。

ダブルボランチは林田選手と松本選手の若手2人に変更。
左WBは荒木選手が復帰後初先発となった。
シャドーは飯島選手と長谷川選手、1トップにリラ選手が入る。

ターンオーバーがなかなかできていない守備陣のコンディションが心配だが、フレッシュな前線メンバーで前からの圧力を高め、守備陣の負担を減らしたい。


3.試合結果

水戸ホーリーホックvsヴァンフォーレ甲府 スコア表

5連勝をかけて挑んだ一戦は、自分たちのミス絡みで2点を献上
後半に追い上げを図るも1ゴールに留まり、痛恨の黒星
上昇気流の最中に喫した敗戦を振り返る・・・

前半12分 ボール奪取から鋭い攻撃で関口選手のシュート!

一度はボールを奪われるも、素早い切り替えから関口選手がスライディングで敵ボールをカット
ニアサイドの飯島選手へのクロスはクリアされるも、こぼれ球に再度関口選手が反応して左足でシュートを放つも大きく枠を外れる

前半24分 ショートカウンターから先制点を献上

ハーフウェーライン付近でパスをつなぐ甲府
浦上選手から右サイドの関口選手へボールを渡すと、その後の関口選手のパスをカットされ、トランジションのキレで甲府を上回った水戸が縦に鋭い攻撃を仕掛ける
土肥選手が安藤選手にスルーパスを送ると野澤選手と1vs1となり、抜き切らずにゴール前にショートパスを送ると荒木選手の前に走り込んだ曽根田選手が合わせ、一度は河田選手が右手一本で反応するも詰められ、金沢戦以来の先制点を奪われる形となった

前半29分 ビルドアップのミスから追加点を奪われる

1点を追いかける甲府はDFとボランチでパスを繋ぎ、ビルドアップを図る
松本選手→浦上選手→野澤選手と繋ぎ、そして左WB荒木選手へ幅を使ったパス回しをするが、水戸攻撃陣も前線からのプレス強度高く保ち、ボールホルダーへのアプローチを怠らない
荒木選手からボランチの松本選手と繋ぎ、再び野澤選手にバックパス
それに対してすかさず曽根田選手がプレスをかけると、野澤選手から河田選手へのパスが乱れ、そのボールに反応した安藤選手が詰めて水戸がリードを2点に広げる

前半終了

立ち上がりから3連戦目とは思えない動きでペースを握っていた甲府
左サイドの長谷川選手や荒木選手の連携や右シャドーに入った飯島選手の裏への抜け出しで再三チャンスを作った
しかし、前半20分過ぎからやや水戸がボールを持つ時間が増え始めた中で初めてのチャンスといってもいいシーンで失点を喫してしまうのは勿体なかった
ミスからの失点も良くなかったが、序盤でのチャンスを1つでもモノにできていれば流れは違うものになっていたように感じる

後半開始

2点をおいかける甲府は松本選手に代えて、吉田監督が「ファイター」と表現する山田選手を後半スタートから投入
中盤の制圧力を高め、逆転に向けて動き出した

後半9分 反撃の一撃

自陣まで左シャドーの長谷川選手が下がり、攻撃の組み立てに参加
センターサークルにいる山田選手にパスを送ると3タッチ目で前線に縦パスを繰り出す
縦パスに反応して後退気味の対応をする水戸DF陣の間でリラ選手が軽めのタッチでコースを変えるとそのボールに飯島選手が反応し一気にPA内へ侵入
GKと1vs1となった飯島選手が冷静にゴール左隅に流し込み、1点を返す

後半11分 同点へ、水戸ゴールへ迫る!

敵陣右サイドでボールを保持し、水戸ゴールに迫るチャンスを伺う甲府
浦上選手が中間ポジションを取った長谷川選手へ縦パスを送るとターンして攻撃のスイッチを入れる
そして1トップのリラ選手へラストパスを送ると、強烈なシュートを放つ
シュートはGKのセーブに阻まれてしまう

後半42分 1点が遠い甲府

1点を返したあとも支配率を高め、攻勢を強める甲府
パライバ選手、宮崎選手を投入しフレッシュな選手を送り込んだり、林田選手を鳥海選手に代え、長谷川選手をインサイドハーフのポジションチェンジし、攻撃に厚みを持たせるなど手を尽くすがゴールが遠い
右サイド荒木選手のクロスは跳ね返され、そのボールに鳥海選手、攻撃参加しているDF須貝選手が波状攻撃を仕掛けるも、水戸の手堅い守備陣に阻まれてしまう


終盤にはロングボールを前線に放り込み、パワープレーに出るも決定力を欠き、反撃も1点どまり
自らのミスで勝点を落とすゲームとなってしまった


4.今節のポイント

①右肩上がりの可変システムの弱点

1失点目のシーン、右サイドでのポゼッションとなるので直近の甲府の可変システムの動き方として須貝選手が数的優位を生み出すために高い位置を取っていた
そのタイミングでパスが相手に引っかかってしまい、前を向かれたときに狙われるのは、本来いるはずの右ストッパーが不在となった、敵チームからすると左サイド前方の広大なスペースが手数をかけず、最短ルートで甲府ゴールに向かうコース

現在のシステムでいつかは狙われるであろうポイントであったとは思うが、相手の狙いがはまるとあっさりと失点するということを突き付けられた形であった

特に切り替えが相手よりも遅くなった場合(今節1失点目の場面)は、リベロがスライドしてボール保持者に対応、左ストッパーも連動してスライドし、ゴール前の選手をケアしつつ、ファーストディフェンダーのカバーも考慮
時間をかけている間に左WBやボランチが下がってきて陣形を整えるという対応がこうなってしまった以上おそらくベターな対応となるはず
しかし、今回のシーンではリベロの浦上選手がやや高い位置を取っていたために(ダブルボランチのどちらかがリスクマネジメントすることもなく)、安藤選手へのファーストディフェンダーの対応が左ストッパーの野澤選手になってしまった
そして、ゴール前に走り込んでくる曽根田選手への対応が左サイドから帰ってくる荒木選手となるので曽根田選手の前に入って対応するには間に合わなかった

切り替えの早さで相手に劣り、リスクマネジメントも怠ると下位に沈んでいるチーム、そしてターンオーバーでややメンバーを落としている相手だったとしても仕留められてしまうことを痛感した失点だった


②大きかったビルドアップのミスの代償

2失点目のシーン
浦上選手からパスを受けた野澤選手は右サイドのパス回しのビルドアップを、左WBの荒木選手に預けることで幅広くピッチを使っていた
そして、荒木選手の前方に2人の水戸の選手、後方に曽根田選手が挟む形になるため、荒木選手は1タッチでボランチの松本選手にはたいた
そして松本選手の背後からさらに1人水戸の選手がプレスがくるため、最終ラインの野澤にバックパス
という一連の流れ

この状況を人数の部分で整理すると
甲府の野澤選手・松本選手・荒木選手の左サイド3人のビルドアップに対し、対応した水戸の選手は4人
という状況となっている

ここで野澤選手から、河田選手と水戸の安藤選手を通り越し、浦上選手へパスを通し、右WBの関口選手へ縦パス、それを追い越していく須貝選手
という形を作れれば、自陣左サイドに水戸の選手を集中させていることから、右サイドで数的優位を作ることができ、ここでのビルドアップは成功だったはず

なぜそうはいかなかったのか
個人的に考えた要因として
まず1つ目は松本選手から野澤選手へのバックパスが野澤選手の左足でなく右足に入っていたらということ
そうすれば、野澤選手は1タッチ目で内側に体勢を取ることができ、浦上選手や河田選手へのパスに関しても余裕を持つことができたのではないか

左ストッパーに左利きの選手が入っていれば、利き足でサイドチェンジができたり、ビルドアップを諦め前線へロングキックを蹴ることもできるが、今の甲府の左ストッパーのファーストチョイスは右利きの野澤選手であることは間違いないため、このバックパスは野澤選手にとって難しいボールになってしまったのではないかと思う

もう1つは、野澤選手に対して曽根田選手がプレッシャーをかけた時の周囲のサポートがあまり良くなかった
ビルドアップはうまくいけば相手の選手たちをはがす大きなプレーになるが、前線からプレスをかけてくるチームに対しては1つ1つのミスが失点に直結しかねない

それゆえにミスがないような判断、プレー技術、サポート
さらには万が一のミスに備えたリスクマネジメントは常に頭に入れておかなくてはならないということを思い知らされた手痛い2失点目だった


③積み上げてきた「自信」とその隙間の「余裕」

開幕からの8試合を振り返ると
・わずか1勝のみ
・完封した試合は秋田戦の1試合のみ
・先制点を献上した試合は半分以上の5試合
・1試合平均失点は1.75(8試合で14失点)
・手にした勝点は6(1試合平均勝点0.75、目安にされているのは昇格ラインが平均勝点2、残留ラインが平均勝点1といわれている)

こう考えると、開幕からの8試合の結果だけを見れば(上位陣との戦いは多かったが)、残留できるかどうかというラインでの序盤戦を繰り広げていたといえる

しかし、大きく戦術の変更をしたわけでもなく、大型補強があったわけでもなく(遅れてきた外国人選手の合流はあった)、メンバーの大幅な入れ替えがあったわけでもなく(コロナとケガでそれどころではなかった)、監督の交代もなかったわけだが、試合に絡めるベストのメンバーで昨季からの継続と今季からの積み上げをベースとした戦いを諦めなかった結果が大宮戦からの4連勝に繋がっている

苦しい時期を過ごしたからこそ、直近4試合で結果と内容が伴った勝点12を手にしたからこそ、「自分たちがやってきたこと、チャレンジしてきたことは間違っていなかった」と確かな自信を掴んだに違いない

今節も立ち上がりは4連勝の勢いをそのままに、良い入り方をした
失点までの時間帯は甲府ペースでチャンスの数も水戸よりも多かった
その中でゴールを奪えなかったこと、そしてほんのちょっとの「これを続けていれば、いつか入るだろう」という「持ちすぎた自信」こそが「余裕」を生み、そしてそれは致命的な「隙」を生み出すことに繋がってしまったのではないかと思う

これに関しては、誰が悪いというわけでなく、チームが持ってしまった雰囲気だったと思うし、観ている観客側もそんな感情を持っていた人もいると思う(個人的にもちょっと思っていたので、ここで白状します…)
きっと1失点目を防げていたら、甲府が先制していた可能性は高かったと思うし、ゆえにあの流れからの失点は悲願の5連勝を果たすうえで与えてはならないものであった

きっと今シーズン中にまた5連勝のチャンスがくるはず
その時に、選手がスタッフがそしてファンサポーターがどういう心構えで挑むのか、それを認識する上で大切な一戦になったと振り返れることができる今節にしたい


5.まとめ

4連勝後に痛恨の敗戦。
勢いを持って臨んだだけに、自滅のような形で2失点を喫し、今の自分たちの力では跳ね返しきることはできなかった。

しかし、逆を言えば自分たちのミスさえなかったら、結果的に相手に得点は与えていなかったといえる。
水戸に崩されて失点はしていない。

苦しみ、試行錯誤しながらやっと掴んだ上昇気流
今節の敵は水戸と自分たちの内側にもいたように思う。

連戦後半、仕切り直しとなる次節に勝利し
再び自分たちのもとに流れを引き戻したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?