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J1昇格へ試される「対応力」と「修正力」 レノファ山口FC戦レビュー(2022年J2第16節)

こんヴァンフォーレ!
今回は5月14日(土)に行われた
2022年J2第16節
ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FCのレビューをお届け!

※第14節群馬戦と第15節栃木戦のレビューが追いついていませんが、最新の試合の鮮度を優先したいので、後追いで投稿します。申し訳ありません。

1.概要

ゴールデンウィークの5連戦を終え、久しぶりに試合と試合の間隔が約1週間空いたスケジュールとなった。

近年稀に見る大混戦のJ2は前節からいよいよ中盤戦に突入!
5連戦を3勝1分1敗で終え、プレーオフ圏内一歩手前の7位で今節に臨む。

3戦連続のクリーンシートで3連勝中のホームで迎え撃つのは勝点差僅か2で11位につけているレノファ山口FC。
手堅く勝利を掴んでいる本拠地で、ホーム4連勝を果たし、混戦から一歩抜け出し、まずはプレーオフ圏内に飛び込むことができるかが注目!


2.メンバー紹介

ヴァンフォーレ甲府

ヴァンフォーレ甲府 スターティングメンバー

3-6-1のフォーメーション
5連戦から1週間明け、メンバー変更は4人

3バック左に前節負傷した野澤陸選手に代わって、ボランチが本職の林田選手が入る。
野澤選手に比べると高さはないが、ボランチの選手らしいボールを持った時の落ち着きを活かし、ビルドアップの安定性が高まることに期待したい。

左WBには好調の小林選手が入り、右シャドーに前節後半から出場し躍動した鳥海選手が先発に復帰。

1トップにはパライバ選手に代わりリラ選手が入った。

レノファ山口FC

レノファ山口FC スターティングメンバー

4-3-3のフォーメーション

4バックがハイラインを敷き、攻撃を組み立てていくイメージのサッカー
アンカーの佐藤選手を起点に、両サイドの突破と2列目からの飛び出しでゴールを目指す

注目は左SBながらチームにとって大きな存在である橋本選手
甲府の右肩上がりの可変システムとマッチアップする形となるので、その攻防が今節の勝敗に大きく影響する可能性は高い

また、元日本代表の山瀬選手のテクニックとゴール前でのキレに注意が必要である


3.試合結果

ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FC スコア表

ホーム4連勝を目指した試合は、開始早々のゴールで1点リードの時間が続いたが、山口に主導権を握られた後半に失点を喫し、ドロー決着となった
ハイライトシーンを中心に試合の流れを振り返る

前半2分 電光石火の先制ゴール!!

右サイドでボールを持つ甲府
須貝選手からバックパスを受けた山田選手が林田選手を経由して左サイドの小林選手へ展開
そこで山口のハイラインとの駆け引きで左サイドの裏へ抜け出した長谷川選手へ絶妙なスルーパスを小林選手が送る
ボールに追いついた長谷川選手は右足アウトサイドでゴール前に走りこんだリラ選手へラストパスを届けると冷静にゴールへ流し込んで開始早々の先制点を手に入れる

前半4分 前線からのプレスでゴールを目指す

河田選手のゴールキックの流れから関口選手が相手DFへプレスをかけるとボール奪取に成功
そのままミドルシュートを狙うがゴール上に外れる

前半14分 今日も河田選手が好セーブ

甲府陣内で山口にボールをキープされるとMF田中選手がミドルシュートを打たれるが河田選手が好セーブで難を逃れる

前半18分 橋本選手を起点に攻勢に出る山口

山口の左サイドで橋本選手がボールを持つ
須貝選手と関口選手の間へスルーパスを通されるとダイレクトで中央へパスを入れられる
走りこんだ山瀬選手がダイレクトでシュートするが、林田選手の身体を張った守備でゴールを死守

後半19分 一進一退の右サイドの攻防!

先ほどのピンチから一転
右サイド敵陣深くで関口選手のスローイン
須貝選手からのリターンパスをリラ選手に繋ぐとヘナン選手を背負いながらキープ
そして中央に折り返すとゴール前で鳥海選手がダイレクトシュート!
しかし、関選手に間一髪で阻止される

前半終了

ディフェンスラインからきっちりと攻撃を組み立て、左サイドの橋本選手を中心に甲府ゴールに迫る山口に対し、甲府は前半途中からシステムをいつもの3-6-1から5-3-2(3-5-2)に変更して対応
リラ選手と鳥海選手の2トップにして、山口のヘナン選手と渡部選手のビルドアップに対処しつつ、長谷川選手をインサイドハーフに下げて中盤を3枚に構成して山口のサイドバックからのパスコースを消す形の守備組織を形成した

後半5分 ハーフタイムを経て、山口が主導権を握り始める

ハーフタイムで甲府のシステム変更に対して整理をしたと思われる山口が甲府のインサイドハーフ横・ウイングバックの前のスペースを使いながら攻撃を仕掛ける
後半の早い時間に左サイドからのクロスでシュートまで繋げた

後半9分 2連続のビッグチャンスをモノにできず・・・

左サイド敵陣深くで鳥海選手がボールキープ
それに小林選手がサポートにいくと見せかけ、CBとSBのスペースへフリーランニング
鳥海選手が小林選手へ繋ぐと、ライン際から優しいクロス
そのボールに対して飛び込んだのは中盤の石川選手
ジャンピングボレーで合わせたボールはしっかりと枠を捉えたものの、関選手の好セーブに阻まれ、ボールは右サイドへこぼれる
さらにそのボールに反応した関口選手がダイレクトで強烈な一振り
しかし、今度は惜しくもポストを叩き、ゴールならず
立て続けに決定機を迎えるも追加点を奪うことが出来ず

後半32分 ついに破られるゴール

後半20分に運動量の落ちた前線2枚と関口選手を3枚同時に交代
フレッシュな三平選手、宮崎選手、荒木選手を投入して前線と右サイドの運動量を取り戻す狙いだったかと思うが、それでも山口の攻撃を受け続ける流れを変えられずにいるとついに同点ゴールを許してしまう
左サイドを攻め込まれると、1つ内側に走りこむ選手に対応しきれず、PA内に侵入を許す
浦上選手が自身のマークを捨ててカバーに入るが、フリーになった高橋選手を使われヘディングシュートを決められてしまう
試合も終盤に差し掛かったところでスコアは振り出しに戻ってしまった

後半33分 勝ち越しを目指す甲府に立ちはだかる難関

失点直後、勝ち越しを目指しパワーを持って攻め込む甲府に不運な出来事が起きる
ハーフウェーライン付近からの浮き球のパスに宮崎選手が抜け出す
なんとかボールにタッチし、山口守備陣を置き去りにしてキーパーと1対1の状況を作るが宮崎選手は足がもつれた状態となってしまったままPAへ
そこでボールのキャッチングにチャレンジした関選手の頭部に宮崎選手の右足が当たってしまう危険なプレーが起きてしまった
故意ではないことは一目瞭然ではあったが、危険であるプレーと判断されたこのプレーに対し、宮崎選手にはレッドカードが提示され、一発退場

ホーム4連勝を目指し、勝ち越しを目指す甲府にとって数的不利な状況で残り10分強の時間を戦うことを余儀なくされた

後半50分 プロデビューの大和選手の豪快な一振り!
1人少ないながらも全員がハードワークして1点を目指す甲府は山口の攻撃に耐えながら、数少ないチャンスを手にするべく攻撃に出る
そして迎えた後半ロスタイムには、荒木選手からのアーリークロスにDFの浦上選手が潰れ役となり、大外から上がってきた大和選手がダイレクトでシュートを放つ
枠を捉えることはできなかったが、プロデビュー戦ながらも豪快にシュートを放っていった気持ちは今後の戦いでも必ずやチームの力になると思う


最後までゴールを目指したが追加点は奪えず、結果はドロー
3試合負けなしだが、2試合連続の引き分けとなり、思うように勝点が積み上げられない試合が続く形となった。


4.今節のポイント

①センターバック林田選手

大卒ルーキーながらもここまで先発・途中出場を問わず出場機会を着々と掴みつつある林田選手
今節は本職のボランチではなく、前節負傷し今節の出場を見送った野澤陸選手に代わり、左ストッパーのポジションに入り、新たなチャレンジとなった

開幕前のキャンプでは、コロナの影響と守備陣の怪我人が続出した影響でセンターバックの経験を積んではいたが、公式戦で起用されるのは今節が初めて。
完封こそできなかったが、本職ではないポジションでも目立ちはしないながらも、丁寧な繋ぎでディフェンスラインからのビルドアップで持ち味を発揮していたと感じた。

ただ、やはり高さという点では185センチの高身長である野澤選手とは10センチほど小さく、リベロに入る浦上選手も178センチ、右ストッパーに入る須貝選手も172センチと守備陣としてはやや空中戦に不安を残す布陣だったことは否めない。
山口はサイド攻撃こそ仕掛けてくるものの、中央のフィジカルの強いFWにクロスを集中させるスタイルではなかったため、高さに関して目立ったピンチは多くなかったが、他にチームを相手にしたときには対応に限界があるように感じる。
今節はセットプレーの際には、ゾーンディフェンスながら高さのある選手に対してはマンツーマンで対応したり、いつも以上に河田選手が飛び出してハイボールの処理をするシーンが多かった印象。

そのため高さの点であったり、怪我人が復帰したりなど、今後の戦いで今節のような布陣がどれくらい披露されるタイミングがあるかわからないが、対戦相手や試合の展開によっては十分オプションとして考えられる形を試すことができたのではないだろうか。


②勝ち切るために必要だった追加点

今節に限ったことではないし、去年もそうだったと言えばそうだが
今節も含め、追加点が奪えていたら勝点3を確実にモノにすることができていたという試合はやはり何試合かはある

もちろん、言うのは簡単で相手もいることなので先制点を取ったからといって、容易く追加点が取れるものでもない

決定力を向上させるのか
決定機を増やすのか
はたまた、両方なのか
トレーニングで、実戦で、果たして両立して伸ばしていくことができるのか
まだまだ約3分の2を残す試合の中で積み上げていくべき部分であるのは間違いない

ちなみに、山口戦前の直近5試合(で複数得点した試合は東京戦のみ。
それでも勝利をあげられている試合もあるのは守備が安定してきたからともいえるが、見方を変えると守備の安定を図るために、これまで攻撃にあてていたパワーをやや守備の方面に持っていかれている・・・?(決して悪い意味では言っていないです)
難しいバランスがそこにはあるのかもしれない。


③対応力と修正力

そして、今節の最大のポイントであるシステム変更。
甲府がいつも運用している3-6-1(守備時は5-4-1)という布陣だが、今節は相手のキープレーヤーである橋本選手が左サイドバックの位置から攻撃の起点となる動きやパスを見せていた。
攻撃時、4-3-3の陣形となる山口。
山口の両ウイングを甲府のウイングバックがケアし、両ストッパーが2列目からの飛び出しとウイングバックの裏を警戒。
ダブルボランチも2列目の2人を注視しつつ、山口のセンターバック2人とアンカーの三角形の動きを確認。
シャドーの2人もサイドバックにプレスに行ったり、アンカーにプレスをかけたり・・・
書いてるだけであまり具合が良くないことがわかる(笑)
また、ハイラインでヘナン選手と渡部選手も積極的にボールを繋いで来ることで簡単にビルドアップさせてしまうと山口のディフェンスラインそのものが攻撃の起点になりかねない。

先制点を取ったからこそ、それでも余裕をもってはいたがいずれは崩される形が生まれるのは想定できる。
そこで行われたのがアンカーに山田選手を置き、左右インサイドハーフに石川選手と長谷川選手、2トップにリラ選手と鳥海選手を配置するという立ち位置の変更。

システム変更後の各ポジションの守備時の役割を整理すると(あくまで個人的に見ていて感じたものなので、実際とは異なる可能性が高いですが笑)

・2トップ→山口の2センターバックにマンマーク気味の対応となりスムーズなビルドアップをさせない
・インサイドハーフの2人→自分の担当サイドにボールがある場合、サイドバックの選手へプレス、逆サイドにある場合はスライドしてボールから遠い側の2列目の選手のケア
・アンカー→中盤3人で連動して山口のアンカーを無効化、サイドにボールがあるときはボールに近い側の2列目の選手をケア

という感じだった(と個人的には思っている)

前半はある程度この形で凌ぐことができていたが、甲府の布陣変更に冷静に対応してきた山口が後半は牙をむくことになる。

2トップにし、中盤を3枚にしたことで中央の厚みは強化されたところで、後半の山口はサイドでボールを保持する時間を多くし、2列目の選手もサイドに広がることが多くなり、高い位置を取るウイングの背後・甲府のインサイドハーフを突く攻撃が増える。
サイドの選手が増えることにより、甲府のウイングバックはウイングの選手を見る時間が増え、なかなか前に出ていくことが難しくなり、受け続ける形が続いてしまった。

また、インサイドハーフの運動量も左右のスライドの繰り返しで消耗が激しく、攻撃に転じた際も特に長谷川選手は通常の立ち位置よりも1列後ろの位置からの動き出しとなるため、前後の動きでもまた消耗する形となってしまった。

後半の初め頃の石川選手と関口選手の決定的なチャンスをゴールに繋げられないでいると、それ以降はより一層山口の攻撃を受けてしまう時間帯が続いてしまった。

3枚替えで運動量を取り戻すという方向性で修正を図ったが、対応しきれず結果的に同点ゴールを許してしまった。

結果はドロー、これまでの布陣と違う中でも相手がしたいことを封じることができた時間もあったし、チャンスを生み出すこともできていた。
その一方で、山口のようにさらにその上から修正をしてきたり、より一層ストロングな部分を全開に出してくる場合には力負けしてしまった印象もあった。

まだまだ発展途上、しっかり対応し、また修正し、それを繰り返し自分たちの力の底上げを図っていくことで、J1昇格に繋がる「対応力」と「修正力」を培っていくことができれば、また一回り強くなったヴァンフォーレになれるに違いない。


5.まとめ

今節が第16節、前半クールが第21節で終わり、第22節からは既に今年1度対戦経験があるチームと2度目の対戦となる後半クールがスタートする。

次に山口と対戦するのは第23節、日付的には6月26日。
約1か月強空けてまた、痛み分けをした相手と相まみえることとなる。

期間が大幅に空くわけではないため、戦術などがガラッと変わる可能性は低い、あってもマイナーチェンジ程度であると思われる。
今節をふまえ、長いようで短い、短いようで長い山口との第2戦までの時間で成長できるかが、次の山口戦で確実に勝点3を手にする最大のポイントだ。

もちろん、次の山口戦までの試合も吉田監督が言うように一戦一戦しっかり戦いきって上位に食らいついていきたい。

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