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ラジオ「私の履歴書」番外編

お盆に入るし…ね。
見に来る人も少ないだろうし。
ダラダラとマニアックな話でも書きましょうかね。

昨日、TBSラジオの「アフター6ジャンクション」を聞いたら
今週は…10代のリスナーに電話を繋いで十数年の人生について聞くという企画をやってました。ラジオ好きの高1の女の子が出てました。
ラジオが好きになって、学生が番組作りするという番組にも参加、出演経験もある…そうで、将来もラジオの制作現場に入りたいとか。
いいですねー。そういう子たちが増えて欲しいものです。

自分もそういう子だった訳ですが…普通に深夜ラジオのDJが面白い!とか、こんなコーナー企画してみたいなあ…とか、そういう素直なハマり方じゃなかった面も有ります。

あれはタイガースが優勝したり日航機事故があった当時ですから…高校生時代ですねー。ナイター中継を聞いていて気付いたんですよ。
実況アナが、不自然に間を取って、何分かおきに自己紹介やその日のカードを繰り返し紹介してるんですね。いや、何度も解説者と挨拶してるんですよ。なんだこりゃ?と…。
既にラジオ好きだったので、本棚から1冊のムック本を取り出しまして…
それが、三才ブックスの「ラジオ新番組速報版”春”号」。今も出版されていますが…全国のラジオ局が出す”週間番組表”のコピーを全局分掲載しています。遠距離受信の参考書ですね。
で、これをよ~く観察して、気付いたんですね。
ナイター中継は各局、開始時間が違う
例えば、前煽り番組を持つキー局のニッポン放送だと5時半頃から始まります。現場からの中継も試合開始前、6時前から。
でも、地方局によっては6:10だったり、6:20だったり、遅いと6:30から。
つまり、途中から”飛び乗る”局の為の挨拶だったんですね。
で、より細かく観察する訳です。
例えば…5:50にニッポン放送の中継枠が始まります。オープニングがスタジオからのアナウンスと前クレ(提供読み)。前枠CMが開けて5:54位から球場出し。6:00番組開始の局も、それぞれ前枠+前クレ+前CMを経て飛び乗るので…6:03頃、2度目の挨拶アナウンス。次は6:08頃、そして6:13、6:18、6:23、6:28、6:33…という感じに5分刻みで挨拶とカード紹介や現在の試合状況、解説者の紹介などを繰り返していたんですね。


この放送進行上の技術的なテクニックというのに興味津々でハマっていった変なラジオマニアでした。

各局の週間番組表のコピーを見ていても、色々違いが有りまして…
一般リスナー向けの物には番組名やDJ名、顔写真等が大きくあるだけの物も有りますし、各企業への営業向け、説明用に製作した番組表だと…細かいコーナー名+提供者名、放送料金表、セールス用のタイムゾーン(特A、A、Bなど時間帯をランク分けした表記)なんかも出てました。
たとえば【PT】と表記された番組…。はて?(笑)これは何だ?と。
パートタイムの略で、いわゆるスポット売りしているので、番組自体の提供(タイム)ではなく、1本20秒の安いCMを流せますよ…という意味ですね。

あと局によっては「JRN」とか「NRN」というロゴが付いてたり。
コレはTBSキー局のネットワーク(JRN)番組か?ニッポン放送&文化放送キー局のネットワーク(NRN)番組か?区別する表記でした。
今だとTOKYOFMの全国ネット番組なら「全国38局を結んで…」とかアナウンスされますが、アレですね。
80年代当時のナイター中継でいうと、移動日・試合休みが多い月曜を飛ばして…火曜と土日がJRN全国ネット担当、水木金がNRN全国ネット担当でした。報道で言うと、午後5時ちょうどの「ニュースパレード」が文化放送キー局のNRNネット、午後5:45(当時 ※現在の「ネットワークトゥデイは午後5:30から)「ニュースハイライト」はTBSキー局のJRNネットの”1日のニュースまとめ番組”でした。最も人気だった深夜の「オールナイトニッポン」はニッポン放送キー局のNRNの全国ネット番組ですね。

実は地方のラジオ局に目を移すと…だいたいの県は、NHKを別にして、民放AMは1局、FMが1局…というところが多いです。なので、AM局1局の場合、JRNにもNRNにも加盟しています。そこで、キー局どうしで喧嘩せず”全国ネットの割り当て”を決めてる…というわけです。

面白いのが大阪。ABC朝日放送、MBS毎日放送、OBCラジオ大阪…と3局有ります。フジサンケイグループのOBCはNRNのみの加盟でしたが、ABCとMBSは、JRNにもNRNにも加盟しています。コレ、色々ネットでも理由など出ていましたが、自分が推測するに高校野球の為のような気がします。今はほぼ消滅しましたが、以前は、春・夏の甲子園での全国大会になると、地元代表校の試合のみをネット受けする局が結構有りました。
なので、どの県の局にも出せるように両局共に両ネットに加盟していたのでは?と思います。(違うかも知れませんが)

そんなマニアックな聞き方をしていると気付きました(笑)。
ABCとMBSでは、全国ネットを無視している場合が多い事を。
例えばJRN朝の全国ネット「日本全国8時です」は両局共受けてません。
MBSは浜村さん、ABCは道上さんの時間です。民放ラジオ黎明期からある両局は結構立場が大きいんですね。ネットを受けない代わりにスポンサーをそのまま付けた自局オリジナルのコーナーで保障しているんです。
現在だと、さっき出た「ネットワークトゥデイ」…MBSにも夕方に有りますが、全国ネットを受けず自局のニュース枠として放送していますね。

マニアックついでに…

今でも夜中の「オールナイトニッポン」を聞いてると…CM枠が終わったところでインストのBGMがフェードインしてきて数秒してから番組ジングルが入って本編が再開しますよね。あれ「フィラー」と言います。穴埋め音楽ですね。FMでも、JFNの生ワイドを聞いてると、CMであるはずの枠にずっと1分~2分BGMが流れますよね。あれもそう。ニッポン放送の場合、30分とか1時間の録音ネット番組でも聞きますよね。
「ここはCM枠なので、各局ローカルセールスのCMを上乗せして頂いてOKですよ。2分枠全部埋まらず1分20秒でも大丈夫なようにBGMで埋めておきますよ」という意味なんです。面白いのは、キー局のニッポン放送でもフィラーの残り数秒が聞こえます。余分にCM枠を取ってる安全策ですね。

JFNという言葉が出てきたので、コレについても(笑)。
AMの全国ネットワークとは少し意味合いが違っていて、JFNというとTOKYOFMをキー局とした全国ネットという意味合いと共に、FM局の協同組合的な面も有ります。JFN「ジャパンエフエムネットワーク」という番組供給会社があります。加盟38局が出資した会社です。
地域第2局として後発で生まれたラジオ局である事が多いので、小規模で制作能力が弱い局が多いため、それを補完する為に番組を東京から供給しています。「Oh!ハッピーモーニング」が代表的なJFNの生ワイドですね。
あの番組、TOKYOFMでは聞けません(笑)。元々制作能力あって、営業能力も高い訳で供給してもらう必要が無いからです。同じ半蔵門の局舎で作ってるのに!今週ニコ生の超会議とのコラボでスタジオの様子が生配信されたので見た人は気づいたでしょう。8時~8:20は休憩タイムでDJさんはスタジオの外に出たでしょう。その20分間は、TOKYOFMからの全国ネット番組があるので、番組を作っても受けてくれる局が無いからお休みなんです。また、再開した最初のお天気コーナーでは「ここで秋田県のお天気をお伝えします」と言います。つまりその時間は、FM秋田でしか放送されてないからです。
このようにJFNの番組は、時間帯によって放送されている局が細かく変わります。自局で番組を作れるところは受けず、隙間が空く枠は受ける…そんな独特のシステムです。それをしやすくするため、JFN制作の生ワイドでは、細かく「確定」が設けられています。確定とは、その時刻になったら有無を言わせず放送が途切れる時間。井門さんたちが締めてCMに入る時刻、時計で観察してみてください。毎日同じ時刻ですから。つまり、そこを区切りとして自社制作のコーナーやニュース枠を入れられて、次の確定開始時刻からJFN発の番組へ戻れるんですね。
そんな飛び乗り、飛び降り自在な構成なので、基本JFNの番組にはスポンサーが付きません。各局独自にセールスを掛ければいいようにしてあります。逆にスポンサーが付かない枠は、先に触れた「フィラー」を流せば成立します。
JFN系列では、こういう時間を埋めてくれる物をBライン、TOKYOFM制作でスポンサーが付いているネット番組をAラインと呼びます。
週末のドリカムや達郎さんの番組等は全部スポンサーが付いていますよね。アレはAライン。スタレビの要さんやアルフィーの坂崎さんの番組は、スポンサー無いですし局によって放送日時が変わりますよね?あれがBラインです。面白いですね。

さあ、FMといえば…JWAVEやFM802、CROSS-FM、ZIP-FM、ノースウェーブといった勢力が有ります。こちらはJFL(ジャパン・エフエムリーグ)という系列になりますよ。基本全国ネットの番組はほぼ無いです。元々”各局とも”地域に根差した放送をする事を第一に置いているので、自主制作が基本です。が、営業面で大きなスポンサーが付く時は、合同で企画される場合がタマに有ります。全国ネットはせず”同じテーマ・コンセプト”で各局が制作し、同じスポンサーを付ける独特のシステムです。

どんどん深くなって参りました(笑)。

そういう地方の局であっても、有名アーティストをゲストに迎えた特集コーナーだったり、有名アーティストや芸人がレギュラーで出演する番組をやってたりします。あれは、どーしてるんでしょう??
アーティストの場合、新譜リリースタイミングで地方キャンペーンの日程を組んで、全国を回る場合も有ります。でもレギュラーは?
基本、東京で収録や生放送している場合が多いですね。
老舗AM局の場合、東京に持っている支局にスタジオを併設するところがあります。MBSやABCがそう。そこから本社へ専用線を使って送り、生放送しています。それ以外では、外部のスタジオを借りるんですねー。
元・ポートリスナーならよく耳にした「赤坂レクシムスタジオ」。
アレが正にそう。都内には、自社で機材を揃え、スタジオを設けて…録音や生放送を”時間貸し”している「スタジオ会社」がいくつもあります。
録音番組の場合は、そこにタレントさんとディレクターや放送作家が、時間になったら集合して録音、データを持って帰って番組を作ります。生放送の場合は…本社へ信号を送る機械を繋いで、生で放送しています。

NACK5で松山千春さんの番組を聞いてる方なら、良くご存知でしょう。
千春さんの全国ツアースケジュールによっては…その地方の局を借りて生放送するというパターン、時々有ります。以前、新潟公演が日曜の時には、普段閑散としているポートのフロアに沢山のスタッフが集まって、生放送した事が有りました。基本、JRN,NRN,JFNといった系列を持たないNACK5やFMPORTで生放送を”送る”事が出来るのも、さっき出てきた”信号を送る特殊な機械”を繋げば、何処からでも放送が可能なんですね。

そんなこんなで、単にラジオ番組を聞いてその面白さにハマった以上に、その裏側にまで興味が出て、どんどん深みにハマっていった…というラジオマニアが、番組制作をするようになった変人です。
そんな変人が四半世紀見てきたラジオの現場…その変化も大きいものでした。

一番大きいのは「アナログからデジタルへ」。
ADとして入った90年代初頭は…スタジオには、CDプレイヤーの横にアナログレコードプレイヤー、リールに巻いた磁気テープを使うアナログテープデッキが3~5台、どどーんと置かれていたものです。
今は、CDプレイヤーさえ最小限になって、音はサーバーに取り込むので大き目のパソコンぽいボックスと、タッチパネルやボタンが並んだボックスで音を出すカラーモニター1台。狭いスタジオでも広々したものです(笑)。

トークの編集といえば、アナログテープにハサミを入れて切り貼りしたり…ダビング室にこもって2台のテープデッキを両手で操作してダビング編集したり…失敗したらイチからやり直したり。結構手間が掛かりましたが、今は、データを入れたSDカードやUSBメモリーを自分のPCにぶっ刺して、編集ソフトで波形編集。間違っても何度でもやり直せます。出来上がったデータを局の専用のPCで登録したり、マスター(技術スタッフの部屋)へ届けて、サーバーに登録してもらったり。

ポートは結構進んでたそうですが…ライブラリーに所蔵されたCDの音楽データもサーバーに取り込んでいて、リクエストが来れば、手元のモニターで検索して貼り付けて…すぐオンエア出来ました。
昔は…FAX(それも当時は感熱紙で、赤ペンで線を引くと少し黒ずんだりしましたっけ)を持ってライブラリーに走って検索して、棚からCDを出してきて、試聴用CDデッキで頭とお尻を聞いて、イントロ尺、曲全体の尺をメモして…スタジオへ戻って、ディレクターの手元に届けました。

コーナー台本を書くにしても…昔は大変でした。
まず情報を調べる為、図書館へ(!)。ネタになりそうな本を探して読んで、コピーを取ったりメモを取ったり。イベント情報などは電話で取材して…ワープロ(!)で打ったり、レポート用紙に手書き(!)で書いたり。
間違ったら書き直しなので、鉛筆やシャーペンですよ。そりゃペンダコが出来ますって(笑)。
放送作家さんが書くコーナーだと、原稿がFAXで送られてきます。
難儀な事に、基本書体は明朝体でしたから…映りが悪い!!
かすれた文字をボールペンやシャーペンなどで細かく塗りつぶし…やっとこさ、原稿として完成します。
でも…打合せでDJさんから「ココのこれって、どういう事なんだろう?」なんて質問されたら、執筆したライターさんに電話で聞く訳です。
もし、分からない場合はライターさんにリサーチし直してもらって…
戻ってきた電話をメモして、DJさんに渡します。

今はインターネット1つで何でもサクサク調べられて、ワープロ”ソフト”で楽々原稿書き。クラウド1つで、どこででも引っ張り出せる。JWAVEのツイッター写真なんか見てると、プリントアウトせずタブレットで原稿を見てますからね。

今や、AD要らず…なんて時代です。

これからラジオディレクターを目指す人は、AD修業というのがあまり意味をなさない時代になってゆきますから、おっちゃんから見れば、逆に大変な時代になったなあ…と思ったりする訳です。

土台はどっしりした方が倒れにくいですからねえ…。

しっかり土台作った上に時代の変遷も体験してるおっちゃんらベテラン世代は、いつまでも現役でいるって人が多いのも、頷けますね。

頑張れ若手!(笑)。

いや、今は今独自のラジオの在り方も有りますからね。
根幹さえしっかり持ってれば、どう変化してもラジオはラジオだと思いますけどね。

さあ、何も考えずに執筆したら訳分からん文章になったぞ。

着地点が無い!どんなタグを付けたらいいやら(苦笑)。
すっかり「履歴書」でも無くなったし。

ま、番外編らしい番外編ってことで。おしまい。

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