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パブロフのBGM〜還ってきたラジオ制作講座14

このところ、山登りの記事ばかりだったので、久しぶりにラジオの話をしましょうか。

本業の方は、なかなか見つかりませんけど。

さて。
4月改編も通過しましたが、皆さんがよくお聞きの番組は継続しましたか?終わりましたか?続いてる番組を聴いてて、違和感を覚えた人も居るかもしれませんね。
あれ?DJもコーナーも以前のまんまなのに、なんか感じが変わったなぁ」。それは、ディレクターや構成作家さんが交代したせいも有るかも知れませんが、もしかしたら、コーナーBGMが変わったせいかも知れません。

ラジオ番組を「作る」側の人間は、よく企画会議でこう盛り上がります。「そろそろ番組も○周年だし、プチリニューアルしましょうか」。
一番手っ取り早いのが、TM(テーマ音楽)やBGMのリニューアル。毎日聴いてる人たちが飽きないように。というのが作り手論理ですし、一番大きいのは、自分たちのマンネリ回避。特に帯ワイドを担当してると、日々の番組作りがルーティーンに陥り、番組に新鮮さが無くなり、リスナーにも飽きられるという事です。

しかしこの論理は、時として逆効果になる場合が有ります。
何故か?ラジオ独特のものですが、ラジオのリスナーというのは、ラジオを聴く事自体が日常の習慣だからです。
朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝食を食べて、支度をして、ゴミを出して、出勤する。。。日々のルーティーンは考えなくても身体が動きます。同様に、ラジオも日々のルーティーンに組み込まれていて「あのコーナーが始まったら出掛ける支度を始めなきゃ遅刻する」という体内時計と連動した物になっている訳です。そうすると、今まで流れていたBGMがなかなか出てこないと「わ!もうこんな時間!」となる訳です。

特定のアイドルや有名人が週一で担当する番組だと「その人」目当てのファンが狙いを定めて「聞き入る」事が多いですが、平日の生ワイドというのは「ながら」で聞きます。ひとつのラジオ局にチューニングを合わせたら、ほぼ一日中「その局」をずーっと聞く人が多いです。
なので、話の中身に意識するというより、感覚として「耳にして」心地良く聞き流していて、面白いと思う話題になると聞き耳を立てる、というのが聞き方になります。

よく「時計がわり」と言われますが、それも平日生ワイドの特徴。決まった時間に決まったテーマでのコーナーが有って、脳で考えるというよりは、感覚的に覚えてる、正に体内時計とのリンクされているんですね。
感覚的だから、BGMも大事になります。
音楽こそ、言葉以上に脳に直接訴えかける物だから。

逆を言えば、AM局(ワイドFMも定着したので、FM局、AM局の分類も分かりにくくなりましたが、本来AMからスタートした局という意味です)によく有る、トーク中心だからBGM無しで放送しましょうという番組の場合、その「目印」は、DJの声だけに依存されます。

余程声色に特徴あったり、有名タレントだったり、語り口に特徴が有る人ならそれで良いでしょうけど、地方局で局アナが曜日替わりで担当している生ワイドの場合、聞き流しリスナーに認知されにくい=習慣化されにくいと思います。以前なら、1エリアに1ラジオ局体制だと、リスナーが逃げる不安は少なかったですが、今やradikoエリアフリーで、全国何処でも、どのエリアの番組が聞ける時代。一気に98局にライバルが増えたと言えます。

そんな中、その番組の大事な目印になるのが、固定されたコーナーBGMです。
固定する事で習慣化に繋がるから、喋り手が替わったとしても、その番組で有ることをリスナーに認知してもらえます。
というわけで、リスナーを繋ぐ意味でもコーナーBGMは、無闇に替えるべきでは無いと思います。
だからこそ、BGMは適当に選曲するべきでは無く、吟味すべきです。担当Dが曜日替わりだったり、制作スタッフが多いなら、みんなで試聴しながら選びましょう。コーナーの趣旨、テイストに合ってるか?トークの邪魔にならないか?そして、何処かで良く聞いた事が無いか?考えましょう。
最後の「何処かでよく聞く」というのが意外と疎かにされがちです。他の番組で既に使われてると、大事な習慣性でリスナーを戸惑わせる元になるからです。
何処かでよく聞くと言うことは、使いやすい曲だからです。例えばゴンチチ、例えば80〜90年代流行ったGRPレーベルの楽曲群、心地良いサウンドなので、色んな局で聞くしTVでも使われがち。という事は、その番組で有るという事を出しにくい音楽となります。
TM(テーマ曲)には時間を掛けて検討するのにBGM選びは適当というのは御法度ですよ。

さて。実際BGMを使う場合も注意が必要です。音楽には気持ち良いタイミングというのが有ります。何秒とか何小節とか具体的には言いませんが、音楽の流れに乗って喋り出さないと、人間の感覚として気持ち悪く感じるのです。生放送の進行が遅れてると、若手Dは焦りから早々にキューを振りがち(笑)。そういう時こそ落ち着いて、音楽に乗りながらキューを振りましょう。押しがリスナーに気付かれない平静さが必要です。ラジオリスナーは耳だけで聞く分、作り手の動揺に敏感ですよ。

さて、いざ喋り始めるとミキサーさんはグッとBGレベルを下げがち(苦笑)。FM局でも結構多い間違いです。BGレベルは下げ過ぎない事。そもそも会議で吟味したBGMなら喋りの邪魔にならない筈ですし、BGMを聴かせる事もリスナーを心地良くさせるポイントです。
先述した通り、普段から習慣として聞くリスナーは、トークの全てを意識して聞きません。脳味噌というのは良く出来たもので、自分に興味が無い場合は、同じ音量でも無意識に脳味噌の中で感覚的な音量を上げ下げしちゃいます。トークを面白く思う人は喋りを聞き、スルーする人はBGMを音楽として心地良く聞くんです。だから、極端にBGレベルを下げると不安にさせてしまう下となります。

コレは、リクエストとか選曲で掛ける、いわゆる「楽曲」に乗る場合もそう。DJの曲紹介が聞きたい人は喋りを聞くように脳味噌でコントロールするし、楽曲を聴いていたい人は、脳味噌の中で喋りをスルーして、後ろに流れる楽曲を聞こうとコントロールします。だから、ワンコーラスで上に乗る際、ミキサーさんがグッとBGMを下げ過ぎた時は、もっと上げてと指示しましょう。
コレも具体的な数値は言えません。局ごとに音作りが違い、コンプの掛かり方で聞こえ方が変わりますから。なので、日々の放送で、スタジオモニター(スピーカー)のスイッチを、スタジオミックスと、マスターミックス、オンエアと切り替えながらバランスを覚えましょう。

たかがBGM。
されどBGM。
大切にして下さい。

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