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1984年夏の角川映画2本~「愛情物語」と「メインテーマ」

昨夜たまたまTVを見ていたらCATV:J-COMのチャンネルで「メインテーマ」を発見しました。「メインテーマ」…タイトルを聞いてパッと思い出す人はアラフィフ確定ですね(笑)。いや、思い出す人の方が少ないかも?
「セーラー服と機関銃」とか「Wの悲劇」「探偵物語」辺りならパッと思い出すでしょう。そう、薬師丸ひろ子主演の映画です。

当時高校2年。受験勉強に入る手前の一番時間も心も余裕のある頃…それまで全くアイドルとか大ファンとか”ハマる”事が無かったのに、突然心を鷲掴みにされたのが”原田知世”です(え?…薬師丸さんじゃないのか(笑)そうです)。1982年のデビュー時、フジテレビの月曜ドラマランドで「セーラー服と機関銃」「ねらわれた学園」ダブルで薬師丸作品のリメイクで主演した際もオンタイムで見て「あー、可愛いなあ」とは思っていましたし1983年の映画「時をかける少女」の時も「すごいヒットしてるなあ」とは思っていました。でもハマる程では無かったんです。逆に当時の角川映画の大量出稿戦略でTVもラジオも雑誌もバンバン広告、映像とテーマ曲のサビが流れてウンザリして、時かけ公開時は一回も映画を見には行かなかったくらいでした。
ところが翌年、いきなり見たビジュアルが”あの”ベリーショートの髪型。時かけの時の清楚なルックスと一変、躍動感あるダンスやパンツスタイル。アレに一気に惹かれました。元々ボーイッシュで明るい感じが好きだったんですが、時かけは大林監督の色も有り、完全に古き良き昭和の少女に仕立てられてたので、ピンと来なかったんですね。最初のTV2本も、セーラー服の時は胸くらいまで下げた髪でしたが、ねらわれた…の時は首筋位までのショート。そっちの方がいいのに…と思ってたんですねー。

ってことで角川の大量PRが始まった初夏からワクワクして、1984年7月公開時は初日から何度も観に行きました。
多分、前年「時かけ」でハマったファンには腰を抜かした人も多かったでしょうね。おしとやかな少女がいきなり躍動感一杯に踊るミュージカルスタイル(といっても劇中一切唄わないですけど)でしたから。
個人的にはバッチリでした。この1984年というと、洋楽百花繚乱の頃。丁度MTV黎明期でアーティストは皆んなPV製作に力を注ぎ、デュランデュランやMJが億の金を掛けて豪華セットで撮ってた訳です。みんなリップシンクで唄い、ダンスを踊り、一世を風靡。その雰囲気をそのまま映画に持ってきたみたいなダンスシーンは、正に原田知世のPVのようでした。
ただ、角川春樹氏の知世愛が強すぎた訳で、作品評価はボロボロでしたっけ(苦笑)。まあ題名もクレジットもエンドロールも一切無いというのも特殊だし、分かりにくい描写も少なくなかったとも思います。

今もそうですが、ハマると”とことん”な性格で、この「愛情物語」をきっかけに遡り、デビュー時からの作品、写真集、レコード(まだCD時代じゃなかったんです)を集めまくりました。確か、漫画家”とり・みき”さんが手掛けた同人誌(原田知世ファンの漫画家がノーギャラで作った物)も入手した記憶が有ります。あの頃は今のように映像ソフトがすぐに出る訳じゃなかったんですが、さすが角川(笑)文庫サイズで映画の全シーンを画像に起こしたヴィジュアルストーリーを出版して、それも買いましたっけ。もちろん、雑誌「バラエティ」も毎号購入しました。

で、そんな「愛情物語」と同時上映だったのが薬師丸ひろ子主演の「メインテーマ」でした。原作:片岡義男、脚本・監督:森田芳光。相手役の野村宏伸は、相手役オーディションを勝ち抜いての初出演でした。前年「家族ゲーム」で高い評価を得た森田監督でしたが…「メインテーマ」は殆ど評価されてませんね。そりゃそう。薬師丸さんは上手いんですが相手役の野村さんがどうしようもなく大根(笑)。脚本自体は少女から大人の女性への恋愛意識の揺らぎを表現してて良いのに、森田監督の”おかず”詰め込みがエグいんですね。野村さんがマジシャンの設定だからか、映像のあちこちにそんな小細工と遊びがふんだんに入れられていて…ある意味”ひっちゃかめっちゃか”。
ミュージシャンに芝居をさせて、役者に歌わせて。興行的には大ヒット(18億5千万円)だったそうですが評価は最悪でした。

前年(1983年)「時をかける少女」「探偵物語」で、翌年(1985年)が「天国にいちばん近い島」「Wの悲劇」で評価も高い、角川アイドルプログラムムービー全盛期ドル箱の夏興行シリーズの中でも、この84年の2本立ては、特殊なほど”底”の2本なんですよね…残念。
でも個人的には、方やデビュー3年目(映画2年目)16歳(実際は11月誕生日なので撮影、公開時は15歳)の知世ちゃん、一方、怒濤のブームを駆け抜けた十代から新たな時代へ移り替わろうとするハタチの薬師丸さん、それぞれの”移行”の時代を切り取ったという意味はエポック的だと思います。まあ今になっては…という見方ですが。

映像資料としても、この2本は興味深い面もありますね。
野村さんが乗るのは、ダットサンピックアップトラック、当時出始めだったパーソナル無線を使い、ラストのロケ地は、この年オープンしたばかりの沖縄・万座ビーチホテル。数年後のホイチョイ三部作じゃないですが、バブル直前のトレンドを盛り込んだ訳です。また、この年”FM沖縄”に移行する直前のラジオ局:琉球放送がロケで使われたり、A&Wのハンバーガーがあったり、エジソンのヘリコプターロゴ時代の全日空トライスターが映ってたり…財津さんが乗ってたのが鉄仮面時代の日産スカイラインだったり、須磨浦公園の駅で山陽電車やらロープウェイが出たり…映像資料としても興味深いです。
一方の「愛情物語」も、ロードムービーなので観光用整備がされる前の金沢の町並み、国鉄時代の特急「雷鳥」、震災11年前の神戸の街並み、瀬戸内を行くフェリー、長崎の街、どれも今では貴重な映像に違い無いです。

多分今の若い人たちが見れば、1時間半苦笑いの連続でしょう。役者陣の芝居もこの35年で飛躍的に上達していますし、映像表現もセンスUPしています。今リメイクすれば、もっと素敵な作品になるんでしょうが…オンタイムで見た世代には、古き良きキュンキュン青春時代の1頁です。
気になるのは、原田・薬師丸両氏が今見たら、どう思うんだろう?と。
お二人共、素敵な女優さんになっていますが”あの頃”はどう見えてるんでしょうね。共演陣でいうと、故・渡瀬恒彦さんは40歳、倍賞美津子さんが38歳、桃井かおりさんが33歳。そう思うと、すごく皆さん当時の若さからは驚きの”大人”です。カッコ良いです。
気になった方、この忘れ去られた2作…一度ご覧ください。

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