見出し画像

永遠のピ”エロ”~笑福亭鶴光論

昨年6月末、FMPORTのお仕事が無くなって、積極的にやってきたのが、今まで聞けなかったラジオをradikoで聞く事です。番組を作ってる時は、そこに尽力する意味でも自分の担当番組を軸に生活を回していたし、首都圏局の番組も、なかなか”観察的”にリスニングする事も難しかった訳ですが、ヒマになれば、その時間が存分に出来ました。特にFMの番組をやっていた事から敢えてAM局を積極的にチェックするように。「アトロク(アフター6ジャンクション)」を手始めに「伊集院光とラジオと」「たまむすび」とTBSラジオを中心に聞くように。ラジオでは珍しい夏改編で「辛坊治郎ズーム」が帯レギュラー化すると夕方はニッポン放送へ。そして秋改編で復活したのが、「鶴光の噂のゴールデンリクエスト」(火水木 午後5:30~7:00)。過去、夕方の大ヒット番組だった「噂のゴールデンアワー」を元にした番組で、プロ野球オフ期の番組として復活したものです。

「ゴールデンアワー」放送当時はradikoプレミアムも無く聞く事は出来ず、”昼間からエロ炸裂で大人気”という話しか知りませんでした。なので、東京の鶴光師匠とは「オールナイトニッポン」ぶり!
子供の頃から鶴光師匠のラジオは「MBSヤングタウン(木曜)」の”ど鶴ど角”コンビ当時から聞いていた訳で、思えば40年以上のお付き合い!
「どんなもんかなあ」と聞き始めたら、当時と全く変わらない声色と喋り口で圧倒されました。アシスタントの田中”御美和子様”は…「月曜から夜ふかし」の濃いキャラで少し知っていたものの、鶴光師匠と息の合った絶妙の間(ま)が見事で、圧倒されました。

オープニングからエンディングまで”こてこて”のエロを活かしたベタベタのバラエティ番組。どんな話題でもエロに持っていこうとする師匠を美和子さんがコントロールしている…”ように”聞こえます。
そう。”ように”。

普通に聞いてれば「鶴光師匠、危ない~!そんなギリギリのエロを~」と思う絶妙のラインですが、コレ、高度にコントロールされた”芸”なんですね。
何でもない話題からエロに誘導する師匠の「ボケ」を”いなす”形で美和子さんが「突っ込む」”大いなる芝居”を演じているエンタテイメントです。
「ANN」では様々な伝説を残した鶴光師匠ですが、それは若かりし頃。
今や上方落語を代表する”御大”ですし、ラジオDJとしては50年のベテランです。「エロおやじ」を演じる事に徹しているのが彼のスタイルであるだけなんですね。勿論、リスナーには「ただのエロおやじ」に聞こえるようにやってはりますけどね。素晴らしいラジオ常識人ですよ。
どこまで”遊んで”どこで”止めて”、どこで”引く”べきか…全て理解しながら、しっかりコントロールしています。それは相方の美和子さんもマスターしているし、多分、放送作家陣やスタッフ陣も徹底的に教え込まれていると思います。

今度一度、ちょっと意識して聞いてみて下さい。
”いじって”はいけない部分は、極めて紳士的です。
交通情報やラジオショッピングでは”余計”な言葉は一切発していません。
エロおやじという自分のキャラが絡む事でスポンサーや部外者に迷惑をかける事をキッチリ排除している訳です。
いわゆる確定(秒単位で自動的にCMや時報に切り替わるポイント)へのコントロールも的確です。(最近気になってツイッターでも呟いている件ですが、他の番組だと確定時刻を失念して声が途切れるDJが結構多いですよ)…50年の経験の成せる技です。全く無理が無い。肩の力が抜けて”自然”に聞こえるようにしていますよ。
時折、スタッフやニッポン放送の”偉いさん”の名前を出して”いじる”事も有って、リスナーはハラハラするでしょうが、それもほどほどです。逆に、普通のDJでは出来ないけれど御大としての自分だから出来る”いじり”だという自覚があっての所業です。

色んなインタビューで師匠が発しているコメントですが『エロは罪がない。誰も傷つけない。自分らみたいな芸人が政治とか”人を批判”すると自分を始め色んな人を傷つける。芸人は面白ければいい。この歳になってアホをやってると思ってもらえるだけで明日への元気になる』と。(参考インタビュー:ジェイソン・ウィンターズ・ティーHPより)

いわば”ピエロ”です。エロピエロです。ピ”エロ”ですわ(笑)。
サーカスのテントでスポットを浴びたら、全力で人を笑わせる。笑われる道化役に徹する。幕から裏へ引っ込めば、日々芸に磨きをかける。汗をかく。裏側は人に見せない。そういうプロのラジオ芸人です。

弟弟子の鶴瓶師匠が”自然体”であるのと対照的です。

思えば、笑福亭松鶴一門から飛び出したスターは、独特のキャラが濃い噺家が多いです。仁鶴・鶴光・鶴瓶・福笑・鶴志…。松鶴師匠は奔放な人でしたが、逆に弟子のキャラクターを見極め、それを増幅させるのに長けた人だったのかも知れませんね。

と、ココへ来て気付いたんですが…あの御美和子様も「月曜から夜ふかし」では濃いおばちゃんキャラに徹しています。長年の鶴光師匠とのお付き合いの中で習得したピエロ芸なのかも知れません。元々TDLのアンバサダー出身ですから本来はスマートな人だと思います。でも、求められる”コテコテおばちゃん”スタイルに徹する事の大事さを師匠から学んだんだと思います。

今のラジオは”ラフ”な”自然体”…ある意味”ゆるい”のが一般的になりつつありますが、とことん”色を染めた”計算されたバラエティとして制作されている稀有な番組…それが「噂のゴールデンリクエスト」だと思います。
その丁寧さが垣間見えるのは、その”リクエスト”部分。
笑いネタについては徹底的にエロで遊んでいますが、リクエスト音楽について、師匠は”いじる”事は有りません。ちゃんと曲フリをして、ちゃんと楽曲として丁寧に回しています。多分選曲バランスについても、しっかりミーティングしてるんでしょう。時代やジャンルの散らし方も絶妙です。

な~んも考えてないアホなフリをして、とことんミーティングをして、しっかり構成されているのが”あの”番組で”おま”。

師匠、お先に勉強させて頂きましたっ!
(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?