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物語構成読み解き物語・23

前回はこちら

「走れメロス」をやっていたから

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「斜陽」が読めた。

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構成が一緒である。反復構成である(abc-abc)。「メロス」が太陽神になるように、「斜陽」はかず子の母およびかず子が太陽神であると考えなければ、意味が取れない。

「斜陽」は太宰の傑作の一つとは認識されていたが、中身の意味を取れた人は居たのだろうか。うんざりするほど複雑だった。最大のガンは経済発展入れ込んだことにあると思う。

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文学者でも一流は経済に言及できる。漱石も三島も十分取り込んで論じられている。

しかし「潮騒」が経済小説としては優れているのは経済一本でいったからで、「斜陽」のように色々詰め込んだ上で経済に言及するのは若干無理がある。悪く言えば作品がうるさくなる。それでもなんとかなっているのは、太宰の実家の津島家が地主兼金融業、ようするに金貸しだったからで、経済感覚がある。こういうのは下手な勉強よりも実家の考え方のほうが影響が強い。

戦前の文化人たちは大抵江戸時代からの名家、名主とか旗本とか武家とかなのだが、金融系というと太宰の他に宮沢賢治(質屋)くらいしか思い出さない。どうも「斜陽」の三位一体教義の採用は「銀河鉄道」の影響としか思えないのだが、太宰の読解力の高さもあるし、地方が近いので感覚的に理解しやすかった部分もあるだろうが、実家が同じように金融系という部分も大きいと思っている。感覚が近くなる。

与謝野晶子が当時の文化人では珍しく堺の菓子屋で、商売がわかる人になるが、どうもカネがわかると宇宙的になる気もしてくる。賢治も晶子も宇宙的である。太宰は半分地主だから天文色は薄いが。

黒井氏が天文と貨幣の関係について触れている。

天文と貨幣はパラレルだそうで、たしかになんか関係ありそうなのだが私には判断する力がない。幸田露伴も司馬遼太郎も、貨幣はわかるが宇宙的ではない気もする。

話戻って、「斜陽」の母から子へ太陽神が受け継がれる、という設定だが、受け継がれることが受け継がれているようで、「天気の子」も、冒頭で母が危篤で、

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娘が太陽神としての役割を受け継ぐシーンがある。

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解析もせずに読める新海監督も、楽しんで鑑賞できるファンもたいしたものだ。日本は断じで文化の危機ではなく、近代文学を十分吸収、理解している。

最近「暗夜行路」の読解して驚いた。仲が悪かった志賀直哉の「暗夜行路」が、なんと斜陽の親作品であった。同じような「アマテラス=スサノオ」話である。逆に言えば、志賀が「斜陽」の言葉遣いに文句をつけたのは、「このやろう、読解しやがって」という意味であった。「暗夜行路」の作者本人のあとがき見てみよう。

「『暗夜行路』を恋愛小説だと云った小林秀雄河上徹太郎両氏の批評がある。私には思いがけなかったが、そういう見方も出来るという事はこの小説の幅であるから、その意味では嬉しく思った」

上手い嫌味である。しかし怒っていない。小林河上を可愛く思っている。これが志賀だし、ほかの作家もだいたいそうだろう。逆にきちんと読めた太宰のことは心底憎たらしかったと思う。窃盗犯のように見えたのではないか。

「人間失格」の「優しい微笑」についても、横光利一の「微笑」(こちらは日本側の光線兵器)を下敷きにしたのではないかと思われる。

この時は、利一は死んでいるから特に問題は発生せず、仮に発生しても、すぐに作者が死ぬ。


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