仕事をしながらキッチンで金柑を煮ていると、だめだめな工学部女子だった自分を思い出した。
新型コロナウイルスの影響で、例年より卸や飲食店からの注文が減ってしまったという金柑の半額セール情報がTwitterで流れてきた。
最小ロットで3kg。買った。
熊本のハナウタカジツさんの金柑。開封してすぐにひとつぶつまむ。すぐに食べられる甘さ。おいしい。
まずは、過去に作ったことがあるレシピで金柑のピクルスを。コンポートよりさっぱりとしていて、食べやすい。手が止まらなくなる。
それでも3kgは手ごわい。同封してくださっていた小分け用のビニール袋に入れて、ご近所に住む仲良しの方にお渡ししたけど。
この時点でまだ箱に9割ぐらい入っている。
確認して、笑った。
日にちが経ってきたので、なにか加熱して ある程度保存が利くレシピを、と思い。ラム酒とカルダモンの金柑煮を見つける。
これこれ。これだわ。ラムレーズンやフルーツのラム酒漬けの類が だいすき。いきましょう。やりましょう。
カルダモンの爽やかで強い香り。
最後に香りづけに加えてひと煮立ちさせる ラム酒に酔いそう。
鍋のようすを気にしながらPCに向かっていると、ものすごくだめな大学時代を思い出した。
横浜でひとり暮らしをしていたとき。
それまで料理といえば目玉焼きとスクランブルエッグとゆで卵しか作れなかったわたしは、それなりにレシピ本を参考にしながら悪戦苦闘していた。
(ある時なんて、実家の母に「天つゆのつくり方教えて」と電話で聞いたらでたらめを教えられ、できたものは悶絶するほどのしょっぱさだった。天国のお母さんひどいよ)
白状すると、学部と修士の6年間
毎日 わたしの頭を占めていたことは
「今日、晩ごはん何食べよう…」
だった。
一度、夜中に実験レポートを書きながら気分転換も兼ねて
じゃがいもを煮ていたら。
気づいたときには、鍋からすべての水分がなくなっていた。
あぶなかった。
膨大な量のレポート課題がつらくて
あるとき、「ちょっと飲みながらやったら楽しいんじゃない?」と思い
大好きなビールを1缶(350mL)買って飲んでから取り組んだら
ごきげんなままでレポートが終了。
※酔うと機嫌がよくなるタイプです。
「これはいいぞ」と次の日も、次の日も… とビールを用意していたら
1週間ぐらいで、500mL缶を2本飲まないと満足できなくなり(つまり1L。)
経済破綻しそうになったので止めました。
ああ、なんだか
ものすごくだめだったな。
だめだめだったな。
いまの学生さんたちに伝えたい。
あんなにだめなわたしでも、なんとか生きのびているから
君たちは大丈夫だよ。
と…
でも、
誰もこんなだめな大人の話なんて聞かないか。
鍋の水分を全消失することなく
粗相らしい粗相もなく
ひと晩冷蔵庫で寝かせた金柑煮は
自画自賛できるおいしさでした。
…なにこれ、昨日のわたし天才。
スーパーの棚に並んでいないスパイスはパウダーで代用し
甘すぎるコンポートがきらいな自分のために、甜菜糖の量を半分にし
そんなアレンジもちゃんとできる大人に成長しました。
生きるために必要なのは、
いかに今日の自分を喜ばせる術に長けるか、ということなのかもしれない。
苦境のなかにも、たのしみを見つけて
あきらめないこと
みんなで、生きのびよう。
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