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毒が抜けていく感覚

誰かがどこかで言っていた、よくある台詞

「すべては時間が解決してくれる。」

あの頃、あの人とずっと一緒にいたこの街を当たり前のように一人で自転車を漕ぐ。


駅に向かうとき使った裏道の住宅街
二人でお腹を壊した安い焼肉屋さん
引っ越すからとリサイクルショップで洗濯機を眺めたり
意識高い系のカレー屋さんに行って、食べた後に二人で「そんなに美味しくなかったね。」って頷いたり
いくらでも溢れてくるこの街での出来事は絶対に消えるものではない

でも不思議と一秒一秒が積み重なって、時間が経つにつれ痛みが鈍くなっていく

いつも一人で行くラーメン屋さんで、帰り際に店主さんとおしゃべりをしていたら
私の名前を覚えていてくれた。

ただそんなささやかことで凄い嬉しくなって「また来ますね!」と言ってお店を出た。

自転車に乗って、のろりのろりと純情商店街を走っていると
見上げた夕暮れの空に細い漫画みたいな三日月が浮かんでいた。

今日はなんかいい日だな。

あの人と一緒にいた街を一人でいるのに、こんな気持ちになれる日が来るなんて
少し前までは想像することすらできなかった。

きっとこれが時間が経過していくということ。
これが毒が抜けていく感覚かな。わかんないけど。

時間以外に強い薬なんてないんだろうな。

帰りに八百屋に寄って、大葉とレタスとピーマンを買って帰る。


そんなあの人のいない私の生活。

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